Ⅱ
「博士の肉体は?」
「……抜け殻だ。間に合わなかったみたいです」
「ウンともスンとも言わねえぞ。死んじまっただけじゃねえのか?」
「それはありえない。彼の理論は多分……本物だ。我々に指示が出されるほどには、本土も脅威と捉えていた」
「じゃあヤバいんじゃないですか? 博士、もうパソコンの中に居るんでしょ?」
「その先はサイバー班の仕事だ。我々が間に合わないことなど、あくまで想定の範囲内。慌てるようなことじゃあない」
「それにしても妙だよな。こんな箱の中で人間が泣いたり笑ったりするなんて」
「にわかには信じられません。機械化とはまた違うんでしょう?」
「さあな。理論が公開されていない以上、どうなっているかは不明だ」
「……あれ、見ろよ。こいつ有線だぜ。ちょん切っちまおう」
「あ、こら待て。迂闊にケーブルを――」
「うわっ、あぶね!」
「あーあ、ショートしちまった。今の火花見たか? まるで人魂みたいだったぜ」
「変なこと言うなよ。ああクソ、機械も止まっちまったじゃねえか。そのまま回収しろって言われてたのに」
「仕方ない。これだけでも持って帰りましょう」
「ヘリに載るか?」
「万が一の時はお前を置いて行けと上から指示が出ている。勝手に現場を荒らす人間は軍に必要ないからな」
「それだけは勘弁してくれよ。ほら、ちゃんとケーブルも繋げ直したし」
「ガムじゃねえか。きったね」
「冗談はそれぐらいにしろ。さっさと帰るぞ」
「へいへい」
故に届かぬ理想郷 抜きあざらし @azarassi
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