3
「沙織。いる?」
そう言って沙織の親友である紬が沙織と千歳の部屋を訪れた。
「紬? どうしたの?」
千歳とトランプ遊びをしていた沙織はテーブルから顔をあげて叶を見た。
「図書室で一緒に勉強しない? 鏡もいるんだけど」と紬は言った。
沙織と紬と鏡はずっと昔から一緒に行動をしている、とても仲の良い三人組の女の子だった。でも、千歳がこの全寮制の学校にやってきて、沙織と同室になってから、沙織はずっと千歳と一緒にいて、以前のように紬や鏡と一緒に行動することは少なくなっていた。
沙織はちらりと千歳を見た。
「行って来なよ」
にっこりと、優しく笑って千歳は言った。
「うん。じゃあ、ちょっと行ってくるね」
そう言って沙織は席を立った。
そして迎えに来た紬と一緒に、鏡のいる図書室に向かった。
「私、あの人のこと、あんまり好きじゃないな」
その道中で、紬が言った。
図書室に着くと、そこには紬の言った通り、鏡がいた。
鏡はいつものように、頬杖をついて、静かに一人でなにかの本を読んでいた。
「やあ」
一人で黙々と本を読んでいた鏡は叶と一緒にやってきた沙織の姿を見ると、眼鏡の奥の顔で、そう言ってにっこりと笑って、沙織に軽く片手をあげて挨拶をした。
沙織と紬は鏡の座っているテーブルまで移動して、その手前にある椅子に二人並んで腰を下ろした。
「なんの本読んでるの?」沙織が聞いた。
「高等数学の本」
読んでいたページを開いて、鏡はそう言ってその本の中身を沙織に見せた。
その難しそうな内容のページを見て、沙織は嫌そうに顔をしかめる。
そんな沙織の顔を見て、鏡はなぜか楽しそうににっこりと笑った。
「本当に勉強しているんだね。えらいね」テーブルの上に上半身を投げ出すようにして、沙織は言う。
「まあ、テストも近いからね」鏡は言う。
「あと、沙織に秘密の話もあったからね」
そう言って沙織の隣に座っている紬が沙織を見る。
「私に秘密の話? それってなに?」沙織が言う。
「悪魔の話」
叶は言う。
悪魔という言葉を聞いて、沙織の表情が一瞬、凍りついたかのように、こわばった。
「いなくなった『あの子』の話は、千歳の前じゃできないからさ。こうして沙織に、図書室まできてもらったってわけだね」にっこりと笑って、鏡は言う。
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