第9話 告白
昼食後。
「神部くん」
「何?」
「悪いけど、夕方まで、席を外してくれる」
「外出してくれってこと」
「うん、お願い」
何やら、理由がありそうだが、木藤さん自身のこと、
訊かないほうがよさそうだ。
「わかったよ。適当に散歩してくるよ」
「ありがとう。ごめんね。せっかく来てくれたのに・・・」
「いいよ。1人で見てみたかったし」
「ありがとう。神部くん、優しいね」
そういわれると、照れる。
こうして、夕方まで僕は、この村を見て回る事にした。
明日には帰る。
そう、思うと名残惜しかった。
木藤さん、君は一体?
昨日来たばかりなのに、村の人は僕の顔を覚えてくれたようだ。
気さくに声をかけ、話をしてくれる。
ありがたいが・・・
慣れてないので、ぎこちなくなる。
そんな僕の緊張を、ほぐしてくれる。
まだ、捨てたものではないな・・・
そして、午後6時前に、静養所に戻った。
すると、入口で木藤さんが、出迎えてくれた。
そして、こう告げた。
「神部くん。君にだけ話しておくことがあるの」
「告白?」
「うん、そこまで行こうか」
こうして、ふたりで歩く事にした。
「神部くん、手握っていい?」
「うん」
こうして、手を握るが・・・
あれ?
温かい。
人の温もりだ・・・
「神部くん、気がついた?」
「うん」
手の事だろう。
「昨日、君と握ったのは左手。今は右手だよ」
あっ、そういえば・・・
「見ててね」
木藤さんは、右手で自分の左手を握る。
すると・・・
抜けた・・・
「義手?」
「うん、良く出来てるでしょ」
わからなかった。
確かに、精巧に出来ている。
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