第8話 オムライス

「神部くん、帰ろうか?」

木藤さんに声をかけられる。

まだ、昼前だ。


「えっ、もう?」

「うん。後は部屋で仕上げるから・・・」

「そう・・・」


詳しくは見ていないが、漫画でいうネームみたいな感じだろう。


木藤さんと他愛のない会話をしながら、静養所に着く。

「ごめんね。朝から付き合わせて」

「いいよ。確かにリラックス出来たし・・・」

「ありがとう」

笑顔で言われる。


くすぐったい。


ここは、3食の食事が、全て計算されている。

それそぞれの、入居者にあったメニューになっている。

健康第一なので、味は二の次で、贅沢は言えない。


昨日も、思った通りだ。


しかし・・・


「神部くんは、私に気にせず好きな物頼んでいいよ」

「レストランじゃないんだから・・・」

「大丈夫だよ。すいませーん」

木藤さんが、調理師・・・いや、栄養士と何か話している。


あっ、終わったようだ。


「すぐに来るからね」

いや、すぐに来るようでは、不安なんだが・・・


程なくして、料理が運ばれて来た。


「オムライス?」

「好きだったよね?神部くん」

「覚えていてくれたんだ」

「もちろんだよ。あっ、ケチャップで絵を描いてあげる」

木藤さんは、そういうと、ケチャップで僕の似顔絵を描いた。


「美味しく、美味しく、美味しくなあれ(はーと)」

あのね・・・


「はい、召し上がれ」

「メイド喫茶ですか?」

「行ったことあるの?」

「ねーよ」

完全に、主導権を握られている。


でも、美味しかったな・・・

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