第3話  ここにいる理由

「木藤さん、こっちの暮らしには慣れた?」

「うん。私は適応能力が人一倍強いから」


元気に見える木藤さんだが、実は体を壊してしまった。

その結果、自然に囲まれたところで、静養したほうがいいと診断され、

単身ここにきた。


今は、静養所に住みながら、近くの高校へと通っている。


「友達は出来た?」

「うん、すぐに出来たよ」

木藤さんなら、誰とでも打ち解ける事が出来る。


でも、少しばかり心配していたが、危惧だったようだ。


ふたりして肩を並べて歩く。

ふいに木藤さんんが、手を握ってきた。

いわゆる恋人つなぎ・・・


冗談で、誰とでもする子だったが、ドキドキより先に驚いた・・・


≪とても・・・冷たい・・・≫


でも、言葉には出さなかった。

以前のように、楽しく会話をした。


「でも、手紙をもらった時はおどろいたよ」

「まあね。君にだけ特別だよ」

「どうして?」

「他の子と、顔を合わせたくないでしょ?」

さすがに、お見通しだ。


「ほら、神部くん。あそこが私の住んでいる静養所だよ」

「立派だね」


小高い山の上にある静養所。

高校は隣接しているようだ。

同じような境遇の子が多いらしい。


「ねえ、近くにコンビニがあるから。何か買ってこうよ」

「コンビニ?」

「うん。一軒しかないから、重宝されているんだよ」


確かに近くには、スーパーとかはないようだ。

でも、これがいいかもしれない。

下手にたむろされたら、困るしな・・・


コンビニで、お菓子とかジュースとかを買う。

僕の、おごりで・・・


「これだけあればいいかな」

「ああ。多すぎるけどね」

「男の子なんだから、頼んだよ」

へいへい


若干上り坂が苦しいが、木藤さんといると、疲れもふっとぶ。

ていうか、木藤さんに手を握られて、ひっぱってもらっている気がする。


いい大人になるよ、木藤さん・・・

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