第14話カオル君の水泳補習②

いつまでも喧嘩されてしまっていては俺の有意義な時間が削られてしまうので、取り敢えず準備体操を終え着水した。


肌に水が吸い付く不快感と安定しない体幹に不安を覚えてしまう


「お前らも物好きだよな、えら呼吸が出来る訳でも無いのにわざわざ酸素の無い場所に自分から入りに行くなんてな」


「確かに大変だったり疲れる時もあるけど、その分楽しい事や達成感も味わえると思うよ!何なら、泳げるまで私が付き合ってあげるよ?どう、水泳部」


「カオル、やめといた方がいいぞ!そいつ偶然と言い張ってカオルの下着とか漁りまくるに違いない!」


「そ、そそんな事無いよ!そんなこと言うあんたこそ指導とか何とか言ってカオルにエッチなことする気だよきっと!」


「あの〜そろそろ始めてもらっていいですか?」


水の中に入っても喧嘩をしだす二人にしびれを切らしたのか先輩と思われる女子が声を掛けてきた。


「すみません、教えてもらう人ってチェンジ出来たりします?」


『えっ』


_________________________________________


えらい具合に彼女達の声がシンクロした



「もう、カオル!この幼馴染で、ある私を置いて誰が教えれるって言うのよ!」


「はいはい、幼馴染って言う、失恋フラグはほっといて僕と練習しよ?」


まぁ確かに幼馴染って大体主人公とは結ばれないよな、渚がどう思っているかはさて置いて


「そんな事無いでしょ!私とカオルは運命の赤い糸で結ばれてるの!ね、そうでしょ!」


必死な顔でフラグを折ろうと奮闘する幼馴染を置いて早速練習に取り掛かる。


「えっと、まず顔を水につけて、右左に手を動かす時に6回足をけれるように動くと、ゴポポポポポポ…」


あかん、死んでまう!


生命線である酸素を吸収しようと、地面を蹴って浮かび上がる


「アーカオル、アブナーイ」


フニュンと顔に柔らかい何かがくっついてくる、スベスベとした感触にほんのり温かい刺激に思考が停止する。


「おい、渚…じゃ無いな、レオ!苦しいから離してくれ」


「ねぇ、カオル。何で顔も見ずに私じゃ無いって判断できたのかお姉さんに教えてごらん?」


やばい!渚(まな板)のヘイトが俺に集中している。


「その、なんだ。別に胸がお粗末だからって言うので判断したんじゃないから!」


「カオル、今日はノーパンで帰ってね?」


悲報、橘カオルのパンツ幼馴染のオカズにされました。


「あー、僕も一回間違われたからお仕置きするね?」


ちゅっ♡


「ちょっと!?何カオルにキスしてるのよ!離れなさいこの雌豚!」


「えー、高校生にもなってキスでそんなに顔赤くしてるって、恋人って言うのー?」


ブチッ!


あ、これはいけない




昔、夏祭りの帰りに二人で歩いていると、二人の男女に捕まってしまった時があった。


俺は女性に、渚は男性に襲われそうになりながらも、必死に抵抗していた


その日は近道をして帰ろうと路地を歩いてきてしまったせいで、ここには誰も来やしなかった。


俺が女性に唇を奪われそうになったその時


ブチッ!


最初はそれが何の音かがよく分かっていなかった


気が付けば、先程の二人は泡を吹いて倒れていたのだ


「大丈夫だよ!カオルは私が守るから」


左手に血が滴っていたのを知ったのはその後のことだった。


つまり何が言いたいかって?


「逃げろ!今の渚はだ!」


瞬間音の壁を破るような音が聞こえて、レオの後ろに人影がよぎる


「!?、カオル!…にげ…て…」


ポチャンッと、レオは水に沈んでいった


「お、おい!?レオ大丈夫か!」


レオを助けようとして、体を動かそうとするも恐怖で足がすくんでしまう


「ごめんね?今あの雌ので汚れた唇を私の唾液で消毒するから」


いや、すくんでる場合じゃない!


俺は少しでも渚から離れようと全ての筋肉を総動員して体を前に進める


「カオル?待ってよ!待って?」


さすが水泳部というか何というか渚はおそらく本気の本気で俺を捕まえようとする


クソ!水の抵抗を失くせ、恐怖心を捨てろ!もっとだ、もっと早く!!!


「おっ、カオルの奴、もうあんなに上手くなったのだな」


他の人から見て、渚から逃げていた俺の泳ぎはとても洗練されていたと言う


そのあと1週間分の下着を取られ続けたのは言わないでおこう…

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