第13話カオル君の水泳補習

季節もすっかり夏に変わり、光り輝く太陽が陰キャの肌をこれでもかと焼き上げる。


学生の夏はクーラーと水泳が暑さをしのぐ主な方法なのだが…


学校はクーラーの使用を物凄く渋る。


気温がどうたらだの、湿度がどうたらだの、うるさいったら無い。

そのくせ生徒の中で熱中症が出れば責任者の年配どもがペコペコと頭をたれるのだ。


…この話をしたところで暑さが和らぐわけも無いのでこの辺で切ろう。


問題はもう片方なのだよ諸君。


水泳、小中高の夏の体育は基本的には水泳になっているはずだ。


小麦色に焼けたスイマーが泳いでいるところをやれかっこいいだの素敵だのと黄色い声という不協和音を耳に入れなければならない非童貞には拷問のようなものだろう。


ついでに補足しておくが俺は泳げない


無駄に大きいお風呂で溺れ死にかけたのが約2年前の夏だ。


たかが2年で人が変わるわけも無く、俺は条件を満たさなかったため水泳の補習をしにプールサイドに足を運んでいた。


「はぁ、海に行かなければ水辺に行くことも無いんだから水泳なんてやらなくてもいいのに…」


どうやら学校はどうしても水死体を出したいらしい。


ちょっと待ってろ、今すぐ作ってきてやるよ


「もう、カオルったら死んだ魚の目みたいになってるよ?」


「ほっといてくれ、なんなら死んだ魚になれたら溺れずに済むのにな」


茶色のショートヘアーを揺らし、揺らして欲しい胸は全くない活発女子(蒼井渚)が近づいてくる。


「ちょっと今失礼な事を考えて無かった?」


「いえ、滅相も無い。ちょっとお胸に栄養が行き届いていないと思っただけだよ」


「いや、あんたね…もっとこう、デリカシーてものがあったりしないの?普通そんなストレートには言わないでしょ?」


知らん、生憎嘘はつけない性格だからな


「もう、見てなさい!あともう少ししたらバインバインのナイスバディになってやるんだから!」


「まぁ、頑張れよ。ていうか何で渚がここに…って、そうか渚って水泳部だったな。すまんな俺らみたいな金槌の為にプール貸してもらって」


俺たちが補習をしている間は彼女たちは筋トレとかになってしまう


こんな暑い中で筋トレ何て、想像するだけで汗が出てしまいそうだ。


「んー?別にいいけど?というか今日カオルに泳ぎ教えるのは私だよ?」


「へぇ、そうなのか………………へ?」


「うわ、まるで都合のいい時に難聴になるハーレム系主人公のセリフだよ?」


「まぁ、お約束だよな」


渚とはとても良く趣味が合う

ゲームのジャンルだの、味の好みだの様々だ。

昔は良くアニメの話で盛り上がったものだ。


まぁ昔の話だけどな…


「とりあえず今日は私が手取り足取り教えるから、覚悟してね!」


「ちなみに拒否権なんかは…」


「ありません」


「デスヨネー」


なんやかんやで泳ぐ為に準備体操を終え、シャワーを浴びてくると誰かが喧嘩している声が聞こえてくる。


「………ルは私が教えるの!」

「……オルは僕が教える!」


絶句したよ…マジで


栗色のショートボブにパチリとした瞳、何故か水泳部では無いはずの乱入者(綿園レオ)が渚と言い争いをしていたのだ。


渚は競泳用の水着、レオはスク水と甲乙つけがたいものとなっている。


「あのすみません、あの二人は何で言い争立てるんすか?」


ちょうど近くにいた先輩と思わしき人に聞いてみる


「あ?あぁ、なんかな?渚の奴が誰かのキャップを匂ってたらしく、そこで彼女が来て、そんな変態にカオルは任せれない!僕がカオルに泳ぎを教える。なんて言い出したらしくてこの有様よ」


「………(驚きすぎて声が出ない)」


もう突っ込む事だらけでどう反応したらいいのやら


渚は活発で頭の良い反面、重度の匂いフェチを患っている、週一で俺の匂いを嗅がないと禁断症状が出るらしい。


まぁ、渚に抱きつかれて匂いを嗅がれるのはもう慣れたし特に何も無いのだがな…


放っておくわけにもいかないので仲裁に入ることにする


「まぁまぁ、二人とも落ち着いて、もっと仲良くしようよ」


女子の喧嘩ほど恐ろしいものはない。


………覚えておくといい。


「というかレオは何でこんな所にいるんだ?

レオは、クラスで渚の次に早いだろ?」


「えへへ、ちょっと暇だから遊びに来ちゃった!」


屈託のない笑みを浮かべているがレオは運動神経の良さでは学校の1、2を争う。


彼女をいかに大会に出すかのために代表会議が開かれたほどだ。


まさに補習を受けに来ている俺とは雲泥の差であった。泣いてなんかないよ?別に。


「嘘だよ、どうせ貴方もカオル君とイチャコラしようとしてるんでしょ?残念だけど彼の指導は私が請け負っているの、邪魔な雌はどっかに行って?」


「へぇ、そうなんだね、ごめんだけどこれだけは絶対に譲れないよ、渚さん?」


彼女らの目と目の間にバチバチと火花が散っているのが見える…

あれ?目の錯覚かな?

あと、ちょっと何言ってるかわかんない


「ねぇ!カオル(君)!どっちにするの!」


ズイッと、顔元まで近づいてくる。


え、これ選ばないとダメすか?


「そりゃ教えて貰うからには上手い人に教えてもらいたいけど…」

ポロっと本音が漏れてしまう


瞬間彼女達の目の色が変わった…様な気がして少し寒気が立った。


ほんの少し夏の日差しが暖かかった


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ちょっと気分転換にヤンデレ要素少なめで作ってます。

できれば甘々にしたいなーなんてね!




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