第18話 到着!フォルス伯爵領!
…おはようございます。
あれ?
昨日の夜は何か、もふもふした毛玉を握りしめて寝落ちしたような気がするんだけど??
でも、目覚めたらキチンとハンモックで寝てました。
…オズヌさんが移動させてくれたみたいで…
ありがとうございます。
さて、今朝のメニューは昨日の残りの
『コッカトリス(親)の串焼き』
『鳥雑炊汁(塩味)』
それに、また、あの『そのへんの草』…。
この草、流石にリーリスさん以外は皆さん、ちょっと食べにくかったらしく…
今朝は『おひたし』にしても良いか確認したら、もろ手をあげて歓迎されたので、作ってみました。
そのへんの草のおひたし。
うん。まぁ、茹でこぼせば…だいぶえぐみが減って食べやすい。
皆さまの顔面のしわ、三割減ですよ。
味付けは塩だけ、と言う実にシンプルなもの。
…あー、鰹節と出汁醤油が欲しいなー!
しかし、昨日一晩あの白いネットリとしたソースに漬け込んだコッカトリス(親)は、ビックリするほどもっちり柔らかくなっていて、程良いうま味と塩味が効いていて、滅茶苦茶おいしくなっていた。
「…美味ッ…!」
おひたしにもこの白いソースかけても良かったかも…
朝食を済ませると、日も登り男の子モードでしゃっきり!
ああ、やっぱり、覚醒するって良いね!
サクッとキャンプを撤収すると、昨日に引き続き、オズヌさんとエルはもふもふチェンジで僕らを背に乗せ森を疾走する。
どのくらい乗っていたのか…唐突にリーリスさんが呟いた。
「ああ、ヨーニャの森を抜けるっスね。」
「へ?」
確かに。
そう言われると、森の植生がわりとガラッと変わった気がする。
森の深さ…と言うか、木々の高さと種類と空気が違う。
全体的に苔むした感じの背の高い陰性植物の森から、明るい雰囲気の陽性植物の森林に来た、みたいな雰囲気だ。
特に、木の葉そのものから白い…わずかに発光する花がぽんぽん、と垂れている木が増えた。
おお、かなり、奇麗。
そして、どうやら目的地のフォルス伯爵領に足を踏み入れた模様。
しかし、しばらく進むと、今度はどんどん木の数が減って行く。
地面は岩肌が目立ち…元の世界で言うサボテンみたいな、明らかに生態系が違う感じの多肉系植物が増え始める。
地面の色も、森の木の葉が落ちて腐った腐葉土のような黒から、わずかに茶を帯びた黒、茶、赤茶…と、進めば進むほど、どんどん明るい色へと変わって行く。
「炎の迷宮の影響だ。」
「へー。」
オズヌさんが言うには、フォルス伯爵領は、そのほとんどが炎の地下迷宮の上に広がっており、熱に強い植物が栽培されているらしい。
この辺りまで来るとダリスとはかなり雰囲気も様子も違う。
…一応、畑地帯なのかな…?
何だか、パイナップル畑みたいな植物が規則正しく並んでいる。
この辺りからは、なだらかな丘になっており、斜面は街道に沿って、緩やかな段々畑になっているのだが、所々、明らかに放棄されたような土地が点在している。
そして、ダリスともう一点異なる点は、畑らしき土地まで近づいているのに、殆ど人影がない事だ。
一応、丘の上に町らしき城壁と建物群まで見えて来ているんだけど…
「何か…妙に活気が無い町っスね…」
近隣都市の情報には結構詳しいリーリスさんだが、フォルスについてはあまり詳しくないのだとか。
フォルス伯爵領は、アルティスに在りながら、アルストーアの直轄地であり、ちょっと亜人差別の強い土地柄であるらしい。
そのため、ダリスから、わざわざフォルス伯爵領へ足を運ぶ亜人の冒険者は少ないそうだ。
僕たちは、その町の少し手前で高速移動モードから、通常モードへ姿を変える。
実は、「亜人」と一口に言っても、大きく3種類の種族に分かれる。
僕とリーリスさんは亜人のなかでも『異人種』と呼ばれる種族で、主に外見が普通の人間種と異なり、完全な人間種に変身したりする事は出来ない。
他にも、代表的な異人種と言うと「ドワーフ」とか「巨人」と呼ばれる種族がいる。
つまり、僕の場合は「亜人」と言う分類の「異人種」と言う区分けの中の「マリクル族」と言う一族、となる訳だ。
ややこしいね。
まぁ、元の世界だって「動物界→脊椎動物門→哺乳類→肉食目→ネコ科→ライオン」…とかって分類が有るもんな。
そして、オズヌさんとレイニーさんは「亜人」の中の『変幻種』と呼ばれる種族で、特定の生き物に『変身』できる種族だ。
人間形態になっている時は、本人から申告があるか【鑑定】を持っている人以外からは、見た目上、完全な人間種と全く何も変わったところが無いのが特徴。
まぁ、本当の所は、人間形態になっても、変身後の特徴を僅かに持っている人が多い。
例えば、オズヌさんは人間形態になっても、普通の人間よりかなり嗅覚が良いし、
レイニーさんは、夜…と言うか、暗闇が苦手で、暗いと視力がかなり落ちるんだそうだ。
で、ここには居ないけど、人間よりも獣などが二足歩行している姿に近い種族を『獣人種』と言うらしい。
代表的なのが「リザードマン」とか「人狼」と言った所か。
仮に「ケモミミ美少女」に出会える可能性があるとしたら、この枠だ。
ダリスの町で見かけたカモノハシの兵士さんとか、カエルの船頭さんとかはココ。
なお、隊長さんとエルは普通に人間種の模様。
…レイニーさんの【鑑定】でも見て貰っているから間違いはない。
隊長さん…見た目はヴァンパイアにでも変身できそうな外見なんですけどね…
それに、エルは【簒奪】と言う特殊な
…エルは『変幻種』と何が違うんだ?と思う方も多いと思うけど、そこは子供を作った時に
閑話休題。
一応「亜人差別が強い土地柄」と言うからには、せめて変幻種のオズヌさんとレイニーさんだけでも人間形態の方が良いだろう、と言う判断なのです。
「でも、何で亜人差別なんて有るんですか?」
「何故…か。
哲学的な問いだな、ナカジマ・ナガノ。
人間とは共同幻想を有さない者を排除する生き物なのだよ。」
「えっ?えーと…?」
「つまり『己と価値観を共有する人々』は団結し『それが違う者』を排斥する、と言う事だ。
『外見の違い』『変身』等と言う分かりやすい形態の変異は『異質である』との判断を容易に下す一因となりえるのだよ。」
「ナザール隊長、分かりにくいっスよ。
要は、昔色々あったって事っスよね?」
つまり、リーリスさんや隊長さんの会話を纏めると…
…ま、ありきたりな話なんだけど…
昔、この西側諸国で人間種と亜人種とでちょっと大がかりな戦があって、その際に人間種が勝利を収めた為、敵対していた亜人は差別の対象となったらしい。
しかし、時は流れ、今度は東の大国と西側諸国で戦争に。
その時に西側の人間種の軍隊はボロ負け。
西側諸国はあっさり滅亡の危機に瀕したんだけど、起死回生の活躍で東の大国を撃退したのは亜人族の皆さんだった!
その活躍があり、結局、東の大国とはほぼ引き分けに近い形で何とか和議が成立。
それに伴い西側諸国では、亜人さんの地位が大いに向上!
ヨカッタネ。
…とは言うものの…やっぱり差別意識ってそう簡単には消滅しない訳で…
特に、その東西大戦時、実際に攻め込まれた訳では無い地域の貴族さんなんかは、その傾向が顕著なんだそうだ。
つまり、亜人に対して差別意識が薄い…と言われるアルティスと言う国は西側諸国では最も東側に位置している国。
逆に、最も西に位置しているのがソギア公国。
このフォルス伯爵領は、西側諸国の中央部の覇者アルストーア皇国の直轄地だが、そこを治めるように指名されている貴族はソギア公国とかなりつながりの深い貴族。
はい、もうお分かりですね。
「そういう訳なんですね。」
ざっくりとこの地域…と言うか、人種に関する基礎知識を聞きかじりつつ、僕たちはその町の城壁の門をくぐった。
「どーもーっス!」
社交性の塊であるリーリスさんが門を守っている兵士さんに声をかけるが、兵士さんはチラリ、と僕達一行を見ただけで無反応。
「…えーと、ダリスから来た冒険者っスけど、通って良いっスか?」
「……通れ。」
「ありゃ?」
それだけ?
特に止められる訳でも、怪しまれる訳でもなく…
兵士さんは僕たち一行に「もう行って良い」と言わんばかりに左手でシッシッ、と犬を追い払う仕草をする。
…興味が無いのか、今度は視線を投げかけすらしない。
「貴様ァ!その態度ムグッ…!」
そのあまりな態度に条件反射的に噛みつこうとしたエルをオズヌさんと隊長さんがナイスなチームワークで阻止する。
方法としては、さっとオズヌさんがエルの口を塞ぎ、くるっとエルを隊長さんの方を向かせるだけだ。
あとは、隊長さんの顔面による圧がエルの声を自動的に消し潰す。
「それでは、行くっスよ。…ほら、レイニーの坊やも!」
エルだけではなく、レイニーさんまで唖然とした様子で、門番さんから目を離さない。
どうやら、門番さんのこういう態度はかなり、おかしいらしい。
リーリスさんが先を促し、ようやく、一行の足は中心部へと向かい始める。
ただ、町の中も人影は少なく…特に、ダリスと比べると子供が全然居ない。
町はレンガ造りで木よりもレンガや石を多用して作られた家々は重厚感がある。
…亜人が少ないだけあって、元の世界の町とサイズ感が大きく変わった印象は受けない。
ヒト種の町って感じだ。
しかし、その割に町の中心部と思われる所に来ても活気が無い。
ここが敵の本丸?
「ここに…その、お相手さんが居るのか?」
「いや、ここはフォルス伯爵領の外区…中心部はもう少し先だ。」
隊長さん曰く、この町は回復効果のある泉を中心に、3重の城壁に囲まれた楕円形の地形をしているらしい。
今、その城壁の一番外側、外区。
次の城壁の向こう側が内区。
そして、内区の中でさらに城壁に囲まれた中央部が貴族や有力者の暮らす中央区。
どうやら、敵さんはその中央区に居るらしい。
僕達は、外区の中では割と人通りのある場所の宿屋『クジケ荘』さんに宿を取り、まず、相手の情報収集を行う事にした。
情報収集は、隊長さんとエルで一組、
リーリスさんとレイニーさんで一組、
僕とオズヌさんで一組…合計3組に分かれて行う事になった。
「じゃ、行くか、ナガノ。」
「はーい!」
ちょうど十字路があったので、そこで他の皆と別れて、右側の道を進む。
しばらく行くと、内区へと向かう門が見えてきたが、今日の所はまだ内区へは入らない予定だ。
僕とオズヌさんはその門の手前に店を構えている酒場のような所へ入って行く。
おぉ…そうだよなー、RPGとかでも情報の基本は酒場だよね。
酒場の扉を潜ると、まばらとはいえ人影はある。
皆さん…こんな昼間から飲んだくれて…生活と肝臓は大丈夫なんだろうか?
しかも、年のころは30代とか40代とか…働き盛りの男性ばかりだ。
なんか、哀愁の籠り方が半端ないな…
ホント、大丈夫なのか?この町…
オズヌさんは、カウンターで一人飲んだくれていた…割と若いお兄さんの隣に腰かける。
「マスター、エールを一つ…と、コイツにはミルク蜂蜜酒有るか?」
「…旦那、子連れですかい?」
「いや、コイツは亜人でな…そう言う種族なのさ。」
オズヌさんの台詞に、露骨に顔をしかめる客がちらほらと。
「亜人が何だって人間様の使う酒場に用があるってんだ」「ケッ…あんなチビ、迷宮の良い餌にしかならねぇよ。」「あーあ、亜人臭ぇな、臭ぇ、臭ぇ!」等、こちらにも聞こえるように文句をたれる客がいる。
しかし、仲間内で「おい、止せよ」「相手のランクも分からない内に喧嘩を売るなよ」とか窘められていた。
うん、確かに差別的って感じだな。
「…ふんっ!」
僕はオズヌさんとの取り決めどおり、ちょっと不機嫌そうに口元を歪め、エルの真似をして鼻を鳴らしてみる。
僕の場合、髪や瞳が見えるとどうしても目立ってしまって情報収集には不利なので、フードを目深にかぶり「体は子供サイズだが実は大人な亜人」のフリをしている。
どうだろう?それっぽいかな?
ま、本物の子供と違って、元社会人だから『中身は大人』の真似はそれなりにこなせる。
…ただし、口を開くと、まだこっちの世界の常識が足りない事がバレかねない。
そのため、今の僕は無口キャラなのだ!
「ああ、ハーフリンクって奴ですかい。」
オズヌさんは嘘をついた訳では無いが、明らかに勘違いさせるような言い方をしている。
マスターはあっさりと誘導された方向で勘違いをしてくれたのだろう。
何のためらいもなく、自然にアルコールが僕たちの目の前に並べられた。
僕は目の前に出されたミルク蜂蜜酒を舐めながらオズヌさんとマスターの会話に聞き耳を…
…って、これ、美味ッ!!!
ミルク蜂蜜酒!!
うわー…これ、子供に飲ませちゃダメなヤツだー!
味は、マンゴーラッシーをもう一段階熟成させたような味わいでアルコールの苦みは全く無く
…めっちゃ飲みやすい!
しかも、何!?この、フルーティないい香り!!
あまく、あまやかな…春の宵闇に咲く梅の花?
疲れもストレスも吹っ飛びますわ。
こりゃ…10歳児のレイニーさんでも3杯飲めちゃうし、リーリスさんが樽で開けたって言うの分かるわ!
こっちの世界に来てから、甘味についてはあまり味わえていない。
それもあって、これが異世界の甘味の中では現在最高峰!!
つーか、これ、元の世界でも絶対、売れる味!!!!
タピオカミルクティーなんか目じゃないよ!?
ンマ~イ!!
おっと、いけない、いけない。
意識が聴覚じゃなくて、味覚に持って行かれてしまった…!
やばいぜ…ミルク蜂蜜酒…!
美味いぜ…ミルク蜂蜜酒…!!
僕の葛藤をよそに、エールを半分近く開けたオズヌさんがマスターと会話を交わしている。
心の声を漏らしていなくてよかった…!
「マスター、景気はどうだい?」
「…旦那方、遠くから来たんですかい?」
マスターは木製の器を奇麗に拭きながらオズヌさんの問いに不機嫌そうに答える。
「ああ、俺たちは冒険者で…『炎の地下迷宮』とやらのうわさを聞いて来てみたんだが…」
そう言いながら、オズヌさんは、カウンターに銀色の硬貨を置きマスターの方に滑らせる。
銀貨を受け取ったマスターの表情が穏やかなものに変わり、すぐに困ったようにため息をついた。
「…旦那みたいな冒険者は減っちまってねぇ…こっちは、商売あがったりでさぁ…」
「ほぅ?『迷宮都市』で冒険者が減る?」
「旦那…悪い事は言わねぇ…内区に行く前に戻った方が良いですぜ。」
「おいおい…いきなり物騒だな…何だ?迷宮が枯れたのか?」
迷宮が枯れる、の詳細は分からないけど、僕のイメージに、廃坑になった鉱山が思い浮かんだ。
多分、迷宮も枯れてしまうとそんな感じで寂れてしまうんだろう。
「…いんや、『炎の地下迷宮』はそんなヤワじゃねぇですぜ。
…でも、最近、内区へ入った連中は半分以上が『おかしくなる』んでさぁ。」
「おかしく…?バーサークか?」
「いいえ…」
話を詳しく聞いてみると、バーサーク…突如、敵味方関係なく攻撃をしてしまう状態異常…とは、ちょっと何かが違うらしい。
例えば、外区では、普通の善良そうな冒険者パーティーだったのに、突如チンピラみたいな言動を取りはじめて女の子に襲いかかったり、
紳士だったおじさまが、突然ゲスなエロ爺になったり…と、そう言う感じの方向性だそうで…
え?
ナニソレ?呪い?病気??
どういう理性のハジけ方すればそんな風になっちゃうの?
マスターさんも奇妙な病気の可能性を心配しているそうだ。
「なるほど…それで、この町はこんなに寂れちまったって訳か。」
「旦那、それだけじゃ無いんでさぁ…」
1年ほど前からフォルス伯爵領の代官になった男の評判があまり良くないらしい。
なんでも、冒険者に対する保養施設等の援助がかなりおざなりなのだそうだ。
結果として、この町を訪れる冒険者が減っており、町の活気を削ぐ一因にもなっているようなのだ。
「その、代官ってのは…?」
「さぁ…詳しくは知りませんがねぇ、フォルス伯爵の遠縁って話でさぁ。
フォルス伯爵さまが、ご病気で体調を崩されて…
それから、あの代官が町を仕切ってるんでさぁ、しっかし、ありゃ頭の中身はイマイチですぜ…
おっと、こんな事…女どもに聞かれたら殺されちまいやすよ。」
「女ども…?」
「そうでさ。今の代官を見た女は皆、そいつに惚れちまうんですぜ。」
あ、これ…隊長さんが言ってた敵さんの【魅了】ってヤツだろう。
と言う事はその「今の代官」とやらが敵の本丸で間違いない。
「こっちのお客さんの奥さんだって…」
オズヌさんの隣に座り、涙ながらに酒浸りになっている若い男を指差し、酒場のマスターは話始めた。
実は彼、この町で生まれ育ちマスターとも知り合いらしいのだが、しばらく別の町に料理の修行に出ていたそうだ。
そこで出会った女性と結婚し、新婚ホヤホヤ幸せ絶調だった。
そして、生まれ故郷に錦を飾るべく、この町で小料理屋を開こうと思い、ある程度信頼の出来る冒険者をボディーガードに雇い、奥さん連れて内区にある実家に戻ろうとしたところ…
ボディーガードのはずの冒険者が、突如おかしくなってしまい、奥さんに襲いかかったのだ。
何とか奥さんを助けようと奮闘するも力及ばず…
目の前で自分の新妻が、犯されるのを見守るしか無いのか、と絶望した時…
そのボディーガードだった冒険者達を蹴散らし奥さんを助けてくれた人達がいたのだ!
助かった!と思ったのもつかの間。
…本当の絶望は別の方向からやって来た。
なんと、彼の奥さん…その助けてくれた男に一目惚れした!とかで…
彼に、即効三行半を突き付け、助けてくれた男の元へ走ってしまったのだ!!
で、その男、と言うのが今の代官なんだとか。
うわぁ…き…気の毒ッ!
この人だって結構イケメンさんだと思うんだけどなー。
「…うぅ…リリィ…ぐすっ」
「まぁ…何だ?その…もう一杯飲むか?」
オズヌさんが思わず気の毒そうに、そのお兄さんへと酒を勧める。
「旦那ァ、俺もコイツにそんな女の事、忘れちまいな、つってんですけどねぇ…」
「違うっ!!…ボクの…ボクのリリィは……!!
あれは…きっとあの男に…操られてるんだああぁッ!!
うぁぁぁぁぁッ!!!」
お兄さん号泣。
あー…どうしたもんかな…恋の病は回復魔法でも治癒できない…よね?
僕達がお兄さんを慰めていると、何やら外が騒がしくなってくる。
「何だ…?」
オズヌさんが不思議そうに窓の外…内区との境となっている門の方を見つめている。
「え?何…あれ…」
それを見た僕は、思わず、無口キャラを忘れて口走ってしまった。
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