第14話 昼と夜との間に

夕方から夜にかけて、空の風景が変わっていくときに、ほんの短い間、とてもファンタジックな色合いになるのが好きです。

普段は日中に仕事をしていて、朝と夜にしか外を出歩かないので、あまり出会えないのですが、休日などにたまに見かけるとラッキー!と思って、しばらく見惚れてしまいます。


一番よく見かけるのは、うっすらと明るい空が、薄い青から紫色へのグラデーションになっている様子です。

逆光になっている雲の色が灰色に沈んで、空の方が明るく見えるのが不思議な感じです。

手前にある建物も暗くなっていて、影絵のようです。


ほかにも、空の風景でとても印象的だったもののひとつに、「金の砂漠」と呼んでいるものがあります。

それは、まだ明るく青い空に、金色にまぶしく輝く雲がいくつも浮かんでいるというものです。

雲が金色になっているのは、地平に落ちかけて色づいた太陽の光が、下から照らしているのだと思われます。


ふつう、雲は白いか黒いか、夕暮れなら空と同じ色になっているものですが、空は青く、雲だけが金色という色のコントラストがとても印象的でした。

金色の雲が砂の山のように見えて、その金の砂漠の間に見える青空が海のようです。

海の水面から砂漠の砂山が浮かび出て、それが天空に逆さまに広がっているという、何重にもありえない不思議な光景で、とても幻想的です。


もうひとつ、強く記憶に残っている光景に、それまで、空の色としては想像したこともなかったものがあります。

中学生の頃、校舎の窓から見た光景です。


通っていた学校は高台の上にあって、3階からだと視線をさえぎるものがなく、校舎特有の大きな窓から空がよく見えました。

ある日の夕方、雲ひとつない空の下に遠く富士山が見え、一切の混じりけなく、外界のすべてがピンク色に染まっていました。

まるで、イチゴシロップの中に沈んだように、鮮やかで怪しげな光が教室の中にまで満ちています。

青、オレンジ、あるいは黄と、空の色として想像できるそうした色とはあまりにもかけ離れていて、どうするとこんな色になるのか……と、本当に不思議でした。


朝の青空も、夜の月明かりも、それぞれいいものですが、夕景の色彩は多様で面白いです。

金の砂漠やイチゴシロップの空は、2回ずつしか見たことがないのですが、また出会えるといいなあーと思います。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る