第12話 はじめての簡易宿泊所体験

先日、初めて簡易宿泊所を利用してきました。


簡易宿泊所って、火災事故などのニュースでよく聞く名前なのですが、

(「宿泊所」はわかるけど、「簡易」ってどういうことだろう……?)

と思っていました。

これまでは、素泊まり専門のお宿のことかな……と思っていましたが、今回利用した宿泊所の説明によると、『簡易宿泊所では個室に施錠できません』とのことでした。

Googleで調べてみると、素泊まり……つまり、食事がついているかどうかは関係なく、共有スペースで寝泊まりするような施設のことを指すようです。

本来、個室自体もないのが普通かと思いますが、カプセルホテルのようにプライベート空間を確保している場合でも、施錠できなければ簡易宿泊所扱いなのですね。


ところで、なぜホテルでも旅館でもないところに宿泊したかというと、観光ではなく、翌日の人間ドックに前乗りするためでした。

人間ドックは8:30開始で、自宅から電車で1時間程度の場所なので、朝が早すぎるというほどではないのですが、ちょうど電車が激混みする時間帯なのです。

背が低いので、男性がぎっしり詰まった車内だと埋もれてしまい、顔がふさがって息ができなくなります。

体力も消耗するので、検査する前に具合が悪くなる可能性大です。

人間ドックの場所と時間は会社が決めているので、しかたなく会場の近くに泊まることにしたわけです。

周辺は、ビジネスホテルですら一泊10000円超えする都心で、検査のために朝食も食べられないのにもったいないわー、ということで探した結果、5480円のプランを発見したのでした。


今回利用したところは、カプセル状ではなく、ベッドと少しの空間がセットで個室状になっていて、個室の出入り口がマグネットで閉まる程度のカーテン的なもので仕切られていました。キャビンタイプと言うみたいです。

予約の段階では、ベッドの様子がよくわからなかったので、寝台列車みたいなものを想像していて、他のお客さんと同じ空間で寝るのかしら……とドキドキしていましたが、行ってみたら個室になっていたので少しホッとしました。

個室に施錠はできませんが、女性には専用のフロアがあって、フロアに入るにはカードキーが必要です。

フロア専用のカードキーがないとエレベーターも使えないので、勝手に他の人のところに行ったり来たりはできないようになっています。


ベッドは上下段のどちらかになるのですが、指定しないプランにしていたら、上の段になっていました。

下段のベッドは別の個室とセットになっているので、上段側の個室から見ると壁になっています。


上段のベッドの高さはおよそ140cmと、なかなかの高さがある上に、登るための足がかりがベッドの開口部ではなく、その脇にありました。

足場を上がった目の前は壁なので、脇の開口部に頭から入りこむことは難しく、上がったところで手すりにつかまったまま、体をひねってベッドに腰掛けて、体を安定させてから背中から入らないといけません。

ふだんからロフトベッドを利用しているので、はしごでベッドに上がるのは慣れているのですが、上がった目の前が壁という構造は、想像以上の難易度でした。


予約時は「上下のどちらでも同じじゃない?」なんて思っていましたが、選べるようになっている理由の一端がわかった気がします。

ベッドへの上がり方の説明図が貼り付けてありましたが、そこに描かれた人物は忍者でした。これも、上段は身軽な人向けであるとの示唆でありましょう……

土地柄的に、単に外国人ウケ狙いな気もしますが。


バタバタしながらひとしきり設備を確認して、一息ついたあとは、シャワーを浴びに行きました。


大浴場は男性用のみということで、湯船につかりたかったなー、と思っていましたが、少し熱めの温度に設定してシャワーを浴びると、想像よりもリラックスできました。

ただ、めちゃくちゃ狭い!

足を洗おうにも、壁にぶつかるので腰をかがめることができません。

しばらく試行錯誤して、結局、かがむのではなく足のほうを上げて解決しました。

狭いブースと格闘しながら、

(体の自由がきかないひとには厳しいなぁ……)

と、しみじみ感じました。


さあ、あとは寝るだけ……とベッドで横になりましたが、なんだか眠れません。

共有空間で眠るのだという緊張感のせいなのか、ベッドが固いからなのか、22度という妙に寒い室温のせいなのか……


何度も寝返りをうって、ウトウトしながら数時間たった頃……突然、音楽が聞こえてきました。

外国語で歌手が歌っている聞いたことのない曲です。

着信音?と思いましたが、ずーっと聞こえているので違うようです。


(これは……なんなの……深夜にイヤホンなしで音楽を聞くのが外国人には普通の習慣なの……?)


フロア内に到着してから聞こえていた話し声は、韓国語と中国語だけだったので、音楽の出元は外国の人だろうなーと想像がつきました。


(国が違えば習慣が違う……とはいえまさかそんな……でもありえなくはない……のか??)


何しろ半分寝ている状態なので、ぼんやり考えつつ、起き上がって注意しに行くのも面倒で、とりあえず時計を見ると朝の6:30です。


(もう少し寝たい……音楽なんとかして……)

と思いながら、横になったまま20分ほど過ぎたころ、突然、音楽がやみました。

一応音楽がやんだ、ということは、聞くのが目的ではなかった、と思われます。

文化の違いのせいではなく、目覚ましとしてセットしていたのでしょう。

すぐには目が覚めなかったんですね、たぶん。


私も、7:00に目覚ましをセットしていたのですが、もういいか……と解除して、早めに起きることにしました。

目覚ましを使うと、周りの人に音が聞こえちゃって迷惑になるのでは……と心配していたのですが、案の定しっかり聞こえちゃうということです。

そして、私のその心配は、ある意味なくなったのでした。


さて、これで5480円。

お値段はともかく、諸々の施設の設計が弱者に厳しいので、次も利用するかは悩むところです。

若くて元気な人なら、旅行で使うのもいいかもしれません。

シャンプー、リンス、化粧水から歯ブラシまで、アメニティ完備でWi-Fi無料ですし、浮いたお金で観光できそうです。

それでも、ベッドは下段がオススメですよ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る