第5話 未知との遭遇

朝の出勤途中、最寄駅に向かって歩いているときに、4〜5才くらいの子供たちの列に出会ったことがあります。

保育園などのお散歩のようで、20人前後が2列に並んで、数人の大人のひとに付きそわれて、道路の端を歩いていました。


私の方は、幅3mくらいの道の反対側の端を、子供たちと同じ方向へ歩く形になっていたのですが、ふと、列の中にいた男の子が私に向かって片手をあげて

「オッス!」

と声をかけてきました。


まったく知らない子でしたが、私も即座に片手を上げて

「オッス!」

と応えました。


すると、男の子の顔が、ぱあーっと笑顔になりました。興奮した様子で

「ねえっ、オッスだって!」

と、ほかの子供たちに声をかけると、とたんに、周りの子供たちから歓声が上がって、列から外れた子供たちが

「オッス!」

「オッス!」

と次々に挨拶してきました。

まさに、わらわらという感じで子供たちが寄ってきて、思った以上の反応の大きさにとまどいつつも、私もオッスオッスとあいさつを返しました。


ふと見ると、あわてて付きそいの人たちが子供たちを列に戻しています。

(うわーすいません……)

心の中で思いつつ、列に戻りながら手を振っている子供たちに、笑顔で手を振り返しながら丁字路で別れました。


最初に声をかけてきた男の子は、あいさつが返ってくるとは思っていなかったのでしょう。

知らない大人のひとなんて、風景と同じ。コミュニケーションがとれるとは思えない。

ところが、反応があったわけです。

そういう大人もいるのだ、と。それは、彼にとって新たな発見だったでしょうか。

幼いひとにとって私の存在が、まだ知らない世界の一端をのぞくできごとのひとつになったのだとしたら、面白いなーと思うのです。

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