蒼の騎士

つかさ

第1話 危機

瞼がひどく重い。目頭が熱くなるのを感じながら、4限目の数学を受けている。

―あと10分―

と、思っていた矢先である。

ガタガタガタ…

揺れの激しい地震だ。と思ったがあまりにも急なのと、かなり体が重いのとで思うように体が動かない。昼食後に保健室に行こうとしていた私、広瀬優稀にとってこれは最悪の事態である。

警報がなった。

〈先ほど、震度5強以上の大きな揺れの地震を観測したとの情報が入ってきました。直ちにグラウンドに避難して下さい。繰り返します。先ほど…〉

―逃げないと、グラウンドに避難しないと―

しかし私の体は限界を超えている。体からは力が抜け、息も荒く、机から出られない。容赦なく、ガラスが不定期に降ってくる。これでは机から床に這いつくばりながら避難しようにも背中をやられてそれこそ本当の終わりだ。流石にそれは避けたい。

だが、誰かを呼ぼうにも混乱状態で、なにしろ声も出ない。警報が頭に響く。頭がズキズキする。もう鳴らさないで、なんて聞こえるはずもない。

〈先ほど2階理科室から火災が発生しました。直ちにグラウンドに避難して下さい。繰り返します。先ほど…〉

こんな時に限って…、私たちは2年だから2階だ。そして理科室は隣の隣……助からない。

あぁ、小説であったが本当にこんな事もあるんだな。なんて、思っている場合ではないのは分かっている。けれどもう今更どうしようもない。覚悟は決めておいた方がいいなとは本能的に感じた。それにしても短い人生だった。ポケットからリップとコンパクトを取り出し、唇を潤すとコンパクトを開き、髪を整えた。最期にしては淋しいが、これでいい。私はゆっくり目を閉じた。少し眠るとしよう。きっと目覚めることはないが、別に悔いはない。

…そして、私は気を失った。

           (第二話に続く)

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蒼の騎士 つかさ @Tukasa_056

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