右手

さりげない手の置き方

テーブルの下にしまうのでなく

紅茶の皿の隣

食卓を囲んだ膝の列

左手を残しておくことを心得ている


目線が動く

小鳥が私の頭上を飛んだかのように

小鳥はいないのに


お茶を注ぐ係は顔を覆わなければならない

足はすり足

誰も見ていないのに


外から小雨の音がしますね

そうだと頷く仕来りがある

そもそもここはバルコニなのに


いっそ口だけでも仮面を被せておいたらどうだ?

口元に紅を入れると華やぐだろう?

無音の化粧部屋が待っているじゃないか……

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