第14話~終戦と終恋~

火山の洞窟を離れ首都グレバルトへ向かうレアン達はある小さな川で樹神兵の最後の給水をしていた。


「クロ、どれくらいでグレバルトに着きそうだ?」


レアンがパンをかじりながら言うとクローディアは水でパンをお腹に押し流すと


「ここからだと後1時間ってところ・・ここからは隠れられる場所も少ないからグレバルトには発見されるのも時間の問題かも」


そう言われたレアンは少し考えると


「南側の状況も分からない、クロ、グレバルトの防衛はどうなっていると思う?」


「最後の情報だとブラックロータス以外の樹神兵は南側に集結していて、いてもブラックロータス以外は首都にはもう残っていないと思う」


「そうかあの黒い樹神兵の名前はブラックロータスって言うのか・・」


レアンは腕を組み眉を寄せ薄笑いを浮かべながら考え始めるとリーナがいつもの態度に気が付いた。


「れ、レアン・・まさか黒い樹神兵の名前とか気にしていないよね?」


「ブラックロータス・・か、カッコイイ名前じゃないか・・でも俺のアジュガには負けるがな」


眉を寄せながら引きつった顔でレアンが答えると。


「樹操者ならレアンの方が良いと思うよ、ブライアンは自分の事しか考えない奴だから」


クローディアにそう言われたレアンは笑顔に戻ると


「だろう、俺はいつも皆の事を考えてるし、それに黒い樹神兵って何となく敵っぽいしな」


それを聞いたリーナはカルラがいれば一緒に「いや・・レアンも負けない位自分勝手だよ」と突っ込みを入れて言っただろうと思った。


「ブラックロータスがいようといまいと、南側の戦闘が始まる前にグレバルトを降伏させればいいんだ」


レアンはそう言うと同意を得ようと拳を前に出すとリーナは反射的に拳を出し、そしてそれを見たクローディアは頭を傾げながら「私の勝ち」と言いながらパーを出し、そのまま2人の拳を小さな手で包みながら笑顔で呪文を唱えた。


「レアン王子に最大の祝福を・・」


繋がれた3人の手が数秒光りその光が消えると3人は樹神兵に乗り込み首都グレバルトに向け移動を始めた。



途中アジュガの樹操房で「後出しだから負けじゃないよな・・」とレアンは呟いたとか呟かなかったとか・・。



レアン達がグレバルトへ移動を始めた同時刻、ファーシェの南側の軍が侵攻を始め1時間もしないうちにグレバルトの軍と交戦状態になった。


戦場に黒い樹神兵の姿は無くアーベル・ヘルフルトとファーシェの軍は次々と敵を倒しグレバルトの軍に食い込む形で進軍をしていた。


後方支援となったベルンハルトは縦に伸びた軍を分断させまいと両サイドから来るグレバルトの軍を樹神兵の遠距離攻撃でけん制をしながら。


「黒い樹神兵はいないのか?ここにいないのであれば首都グレバルトの・・」


ベルンハルトは樹操房のモニターで敵の樹神兵を確認していると火山の方角に高エネルギー反応を捉え数秒後そこから黒いプラズマが一直線に伸び先頭のファーシェの軍とグレバルトの兵士を巻き込みながら過ぎ去った。


「あの距離で樹砲が撃てるのか」


警告からその方向に盾を構え黒い樹砲を受けて中破の警告音を聞きながらアーベル・ヘルフルトは苦虫を噛んでいるとまた同じ場所に高エネルギー反応を捉え数秒後に黒いプラズマ同じ場所に発射された。


「れ、連射だと!」


そう言い残しアーベル・ヘルフルトの樹神兵は黒い樹砲の中に消えていった。


「生きている者は逃げろ!撤退しろ!」


黒い樹砲の連射で旗機を含め突出した軍が消滅し、ベルンハルトは外部スピーカー全開で叫んだ。


それを聞いたファーシェ軍は蜘蛛の子を散らす様に戦場から逃げ出した。


「2発目は威力が少し落ちるのか・・それでもこの威力・・さすが星7は違うな」


ブライアンは薄笑いを浮かべながら言うと樹神兵の無線で追撃戦の指示を出し樹砲の充電を開始した。


「再充電まで30分・・まぁいい」


黒い樹神兵は樹砲を背中に戻すと逃げるファーシェ軍に向かって走り出した。



ベルンハルトは兵を一人でも生かす為に最後尾で追撃して来るグレバルトの樹神兵を迎え撃つ為に両手持ちの先が分かれた大きな斧(エランギス)を構えていた。



樹神兵の星1差は樹操者にもよるが下位の5機分とされていた。



ベルンハルトの樹神兵は星5、追撃で来た最初の樹神兵をエランギスで薙倒すと、その場に仁王立ちをして外部スピーカーで叫んだ。


「我はファーシェの樹神兵騎士団副隊長ベルンハルト・カーマンである、この先に行きたければ私を倒してからにしてもらおうか」


そしてエランギスを再度構えると、後から来たグレバルトの樹神兵の足が止まった。


ベルンハルトは敵の樹神兵の索敵できる範囲の位置を確認すると珍しく薄笑いを浮かべながら。


「目の前の樹神兵を先頭に15機縦に並んでやがる」


ベルンハルトが先頭の樹神兵を通せんぼしていると追いついた残りの樹神兵が武器を構えベルンハルトの樹神兵を囲む様に移動すると一斉に攻撃を始めた。


いつものベルンハルトはエランギスを攻守に使っていたが、この戦闘では100%エランギスを攻撃に回し1機1機確実に行動不能にしていき、敵の攻撃は装甲の堅い部分で受けていた。


ベルンハルトはモニターに徐々に点灯していく警告を見ながら大きく息をすると。


「ふぅ・・さすがにきついな・・リーナ・カートライン・・レアン王子を頼んだぞ」


ベルンハルトはそう言うと残っている樹神兵に向かって雄叫びを上げながら走り出した。


「うぉおおおお」


そして残り3機まできたところでベルンハルトの樹神兵の関節から蒸気が噴き出し動かなくなってしまい、樹神兵の操作が出来なくなったベルンハルトがモニターを見ると水分ゲージが赤く点滅していた。


「ここまでか・・」


蒸気を上げ動かなくなった樹神兵を見た3機のグレバルトの樹神兵はゆっくりと近づきエランギスを奪うとその樹神兵の樹操房目掛け突き刺そうと振り上げた。


モニターに迫るエランギスに無念とばかりに目をつむったベルンハルトは一向に来ない衝撃に目を開けるとモニターにエランギスを部下から取り上げている黒い樹神兵の姿が映っていた。


「グレバルトの総指揮官ブライアンだ、樹神兵を放棄して・・と言ってももう動かないと思うが」


ブライアンはそう言うと樹神兵の腰から柄の先に咲いた黒水蓮から伸びた黒い刀身の剣を抜くと動かなくなった樹神兵の樹操房の扉を一閃し鞘に戻すとゆっくり扉が樹操房から剥がれて行き樹操者の姿

が見える様になった。


ベルンハルトは意識でのVCの解除出来なかったので自力で剥がすとゆっくりと樹操房を出たところで立つと初めて見る黒い樹神兵を見上げた。


「ベルンハルトと言ったな、格下とはいえ樹神兵12機を1機で破壊するとは・・どうだ私の配下にならないか?」


「・・・」


ベルンハルトが返事をしないでいると


「ファーシェが陥落した後に嫌でも優秀な人材は配下になってもらうがな」


ブライアンがそう言うとベルンハルトは嬉しそうに


「私の家は代々農家を営んでいる、もしこの戦争でファーシェが負け私に生きる権利が残るのであれば引退して農家の跡を継ごうと考えているので申し訳ないが・・」


「農家?それは残念だな、ファーシェの領地は全て没収されるのでその夢は叶わないと思うぞ」


「全部・・没収だと」


ベルンハルトは黒い樹神兵を睨みながら言うと。


「もともと1つの国が収めていたんだ、首都の場所は変わるが問題あるまい、そうだろう・・そうだ丁度いいお前にファーシェに降伏の仲介をしてもらおうか」


「降伏の仲介だと・・私がそれをやるとでも思うのか」


ベルンハルトは震える体で拳に力を入れながら言うと。


「敗者に拒絶権はない」


「まだファーシェは負けてはいない」


いつも冷静なベルンハルトは「敗者」と言われ思わず声を出してしまった。


「この状況で負けてないと言うか、どうみても時間の問題だろう?それともこの状況をひっくり返す


何か策でもファーシェにあるのか?・・そうかレアン王子に期待しているのか?」


ベルンハルトは自らの失態に下を向くと


「レアン王子が北の国境を出てグレバルトに向かった様だが、残念ながら我々の方が半日以上早くファーシェに着く、レアン王子が急いだとしてもで樹神兵3機で何が出来る?」


ベルンハルトは後1日時間を稼げていればと悔やんでいると。


「さぁどうするこのまま無駄に死人を増やすのと、お前がファーシェ城に構えているお偉いさん達を説得するのと、私はどちらでも構わないが」


ベルンハルトは選択が1つしかない質問に目を閉じ歯を噛みしめていると。


「いいだろう、説得出来たならお前の領地は没収の対象から外してやる」


「俺はそんな恥晒しな事はやらん、これ以上の会話は不要・・ここで殺して貰って結構だ」ベルンハルトは吐き捨てる様に言うと周りにいた兵士から罵声が上がった。


「そうか・・協力出来ないならお前の望み通りにしてやろう」


ブライアンは残った樹神兵と兵士達にファーシェに向かう様に言うと、ベルンハルトから少し離れ黒水蓮の樹砲を取り出しベルンハルトの鼻先に構えた。


ブライアンは樹操房で「つまらない意地を張りやがりやって」と呟きながら樹砲の引き金を引こうとしていた。



グレバルト城は山を切り崩して作られていて後方に山、左右には森があり少し離れた正面に川を挟んで街が作られていた。


町を右手に城を正面に見える森の中から3機の樹神兵が潜んでいた。


「城の防衛の樹神兵の姿も見えないし、このまま森から直接城に向かおう・・そうだ城に着いたらどうするの?」


クローディアは樹神兵を他の樹体に触れながら言うとレアンが


「もし樹神兵が残っていて出てきたら撃破して、それから降伏勧告と行きたいが・・どう説得しようか全く考えてないし、南側の状況が分からない以上面倒だからアジュガで直接城に乗り込む」


「やっぱりそうなるんだ」


予想通りの答えにリーナとクローディアが同時にため息をしながら言うと。


「何だそのため息とか、他にいい考えが・・そうだいっそうの事アルシュールの樹砲で脅してみるか?」


「樹砲で脅すなんて私は絶対にやらないからね」


リーナが不満そうに言うとクローディアが


「樹砲で・・あ!思い出した、クロがここに来て樹神兵を創った時に聞いた話なんだけど


「どうしたクロ」


「樹砲じゃなくてもいいんだけど、もし樹神の樹を破壊したらどうなると思う?」


「樹神の樹を破壊する?そんな事考えた事もないな」


レアンが答えるとリーナが続けて


「もし樹神の樹が無くなったら、樹神兵はどうなっちゃうのかな?」


「あくまでも聞いた話なんだけど、樹神の樹がなくなるとそこから創られた樹神兵は加護がなくなり枯れてしまうんじゃないかと言われてた」


「もしそれが本当ならファーシェに進軍しているグレバルトの樹神兵を瞬時に無力化ができるが・・樹神の樹を破壊したとしてもどうやって確認するんだ?」


レアンが考えているとクローディアが


「クロの樹神兵が枯れれば、それが答えだよレアン」


「そうか、クロの樹神兵はグレバルトの樹神の樹で創られたんだったな」


レアンは少し考えて


「俺とクロでグレバルト城に向かい降伏勧告を行う、リーナは後方で樹砲を用意して待機、降伏勧告を受け入れなければ樹神の樹を破壊する、これなら少ないな流血で済むだろう」



作戦が決まりレアンとクローディアは森から出てグレバルト城を目指し、リーナは樹神の間の位置をクローディアから教わりそこを狙える位置に移動を開始した。



「グレバルトの樹神の間って何で城の後ろの崖の中にあるのよ」


リーナはアルシュールをうつ伏せにして樹砲を両手で固定しながら照準モニターで出来るだけ城に当てないように照準を合わせながら言うとレアンから連絡が入った。


「グレバルトに発見された、移動を早める」


「了解、こっちも準備OKです」


レアンとクローディアが樹神兵の足を速め城から少しすると城門から全身鎧を纏い馬に乗った騎士らしき3騎が現れ2機の樹神兵の方へ向かって走り出した。


「クロ、知ってるやつか?」


別々の樹から創られた樹神兵では無線が使えなかった為レアンは外部スピーカーに声を出した。


「ちょっと待ってて確認する・・ん?あ、あの鎧は」


「知り合いか」


「あの鎧はグレバルトのケヴィン国王の鎧だよ」


「なに、国王だと?クロ止まれ」


レアンはこのまま城壁を破壊して乗り込むつもりだったが国王と言われて城壁手前で慌てて樹神兵を止めた。


少しして3騎が樹神兵の前に着くと全員が馬から降り装飾の綺麗な鎧騎士が兜を脱いで。


「そこの青い樹神兵の樹操者はレアン王子か、私はグレバルト国王ケヴィン・ルースである」


「本物だよレアン」


クローディアは樹神兵の手をレアンの樹神兵に接触させながら言うと。


「国王がわざわざ何でこんなところまで?」


「多分、自分のところの樹神兵が出払っていて私達の樹神兵から城を守る手段がもう無いのかも・・」


クローディアが呆れながら言うとレアンは外部スピーカーで


「いかにもファーシェのレアン・リックウッドだ」


「ファーシェのレアン王子、ケヴィン国王がわざわざお越しになっているのに失礼であるぞ」


後ろに控えていた騎士らしき男が大声で叫ぶとレアンは樹操房で叫んだ騎士を見ながら。


「先に領土を侵し、今の状況を作り出して今更何を言っているんだ・・今、戦争中だぞ」


レアンが樹操房で呟いでいると叫んだ騎士を制しながらケヴィン国王が


「状況は理解しがたいと思うがこの戦争を始めてこの様な状態にしたのは総指揮官のブラインでありその行動の半分も報告が無くブライアンが今何処で何をしているのかも我々にも分かりかねない・・国王として部下の行動を把握出来ないのは失格だし後悔している」


レアンはそう言われると


「ブライアンって奴の近くに所属していたんだろうクロ、国王の言っている事は本当か?」


「確かに自分のいい様に報告していたし、国王の許可を取ったと嘘も平気でつくし、自分勝手で気に入らなければ切り捨てる。クロは真面目にしてたから大丈夫」


「最後のは嘘だな・・」とレアンは呟き


「何か言ったかレアン?」とクローディアが聞き返した。


「クロ、樹神兵から降りるぞ」


レアンとクローディアが樹神兵を降りるとレアンだけが近づき簡単な挨拶をすると。


「ケヴィン国王お初目にかかります、こんな状況でなければ食事でもしながらお話ができればよかったのですが時間がありません」


「そうだな、部下の暴走がなければ敵だとしても今頃はお互いそれなりの平和な時間が過ごせていただろう・・それでファーシェはグレバルトに何を要求するつもりかな?」


「ファーシェは・・いや俺はグレバルトに降伏をしてもらい軍を引き上げてさせてもらえれば今はそれでいい、その後の事はファーシェのランドル国王とケヴィン国王で話し合いをしてもらえればいいと思っている・・」


ケヴィン国王はレアンの予想外の返事を聞くと顎を掻きながら


「レアン王子は無欲なのか?無条件降伏しろと言われると思っていたが・・それとも他に何か考えでもあるのかな?」


「もし私が国王なら国王になった時点で停戦協定なり和平交渉を行っていると思います、樹神兵も戦争の道具では無く他の使い道を探ります、過去に色々とありますが元々1つの国であったなら元の国に戻る事は可能だと信じています。丁度北側の国境にファーシェとグレバルトの兵士の共同で造られた物があるので事が終わった後にでも良かったらご案内します」


レアンは特に考えなど無かったので素直に答えるとケヴィン国王は頷くと手を出し握手を求める仕草をしレアンがそれに答えようと手を出したところで城壁の方から。


「レアン王子逃げて下さい、こいつら何か企んでる」


レアンが手を出そうとしながら城壁の方を見ると小さな窓からフードを被ったカルラが顔を出していた。


レアンが「何でカルラが?」と思っていると出した手に何かが刺さった痛みが走り痛みの方を見るとケヴィン国王がレアンの出した手に無理やり握手をしていた。


ケヴィン国王は舌打ちをし握った手を離すと手に握っていた小さな刃物を捨て腰の剣を抜くと控えの騎士達も剣を抜いて構えた。


「レアン王子は聞いた通りの間抜けな王子らしい、侵入したネズミと裏切り者を捕らえよ」


ケヴィン国王はそう言うと控えていた騎士を前に出し後ろに下がりながら合図をすると城門から兵士が現れた。


レアンは何が起きたのか理解する前に体が痺れ始めその場に倒れてしまった。


クローディアは急に倒れたレアンに近づこうとしたが武器を持った騎士に迫られ、裏切り者の立場でケヴィン国王の近くに寄らずレアンから離れていた事を悔やんだ。


「ケヴィン国王、どう言うつもり」


「どう言うつもり?今は戦争中だって事はクローディアも分かっていたと思うが、ブライアンがお前の信者として北側に送り込んだスパイから今朝方報告を受けて今に至るんだが・・レアン王子にはここで死んでもらってお前は裏切り者として公開処刑にでもしてやるから覚悟しておけ」


ケヴィン国王がそう言うと兵士の一人に指示を出すと腰の剣を抜き剣を振り上げレアンの首に向け剣を振り下ろそうとしていた。


「レアン!」クローディアは今出せる一番大きな声で叫んだ。


レアンの首を狙っていた兵士は狙いを定めて剣を振り落としたが途中で切られる様を見たくなく目を瞑ってしまった。


兵士が目を開けると剣がレアンの首ではなく茶色いマントの様な物に刺さっていた。


クローディアは兵士が剣を振り下ろすのと同時に神聖魔法を唱えレアンを助けようとした時に倒れているレアンの横に何かが落ちてきてそのままレアンに覆いかぶさり剣がそれを捕らえると仰け反りフードがズレ苦痛に堪えるカルラの顔が現れた。


「レアンは殺させない」


「カルラ・・さん」



レアン達が樹神兵を降りるまでの通信は聞いていたが降りてからの通信が切れ何を話しているのか分からずリーナは最大望遠でモニターに噛り付いていた。


「何を話しているんだろう・・樹神兵を降りたって事は平和交渉?今ここで?」


リーナがそんな事を思っているとレアンが相手と握手をした後にその場に倒れてしまい近くにいた兵士達が剣を抜いた。


「ちょ、ちょっと何がどうなってるの?」


リーナがモニターを見ながら慌てていると、1人の兵士が剣を抜きレアン目掛けて振り下ろされレアンに刺さった様に見えたが茶色い何かがレアンを覆い剣はその茶色い物を捕らえその茶色い物の下からカルラの苦痛に歪む顔がモニターに映し出された。


「か、カルラさん」


リーナが樹操房で叫んでいるとモニターにグレバルト城横の崖が開き樹神兵が数体現れレアン達のいる方へと移動し始め、リーナは樹砲を背負うとカボチャハンマーを取り出しアルシュールを森から出すとレアン達がいる方向に走らせた。


「白い樹神兵はあんな所に隠れていたのか」


ケヴィン国王はそう言うと味方の樹神兵触れ。


「そこの白い樹神兵、それ以上近づくとレアン王子達の命はないぞ」


外部スピーカーから出された声にリーナはアルシュールを停止させると2体の樹神兵が近づいて来た。


「人質だなんて卑怯よ」


リーナが外部スピーカーで叫ぶと


「卑怯?何を言ってるんだ今は戦争の最中だぞ、敵を殺すなんて当たり前だろう」


リーナはぐうの音も出ないでいると


「リーナ、樹砲を使え」


アルシュールの内部スピーカーからレアンの声が発せられ、リーナはモニターからレアンの方を見るとレアンが倒れたままアジュガの足に手を触れていた。


「今動けるのはリーナだけだ、俺達の事は構うな」


そう言ったところで兵士に足蹴にされ通信が途絶えた。


リーナは近づいて来た樹神兵をカボチャハンマーで倒すとその場に投げ捨て樹砲を取り出しグレバルト城後ろの樹神の間に照準を合わせて引き金を引いた。


赤から黄色のグラデーションのバラ樹砲の先に光が集まり集束すると蕾だった花が鮮やかな花を咲かせそこから黄色い光が発射され城を半壊させながら崖の中に消えていった。


「どこを狙っている」


ケヴィン国王が樹神兵のスピーカーから言い放った直後にグレバルトの樹神兵に異変が起き始め樹体が早送りの様に茶色くなり枯れ始め、樹操者は樹神兵を捨て逃げ最初にいたケヴィン国王を含む3名以外の兵士も武器を捨て逃げ出してしまった。


リーナは次々と枯れていく樹神兵を見ながらレアンのいる方に近づきながらケヴィン国王とは知らずに樹砲を向けると。


「ちょっと待て、わ、わしはグレバルトのケヴィン国王だぞ」


ケヴィン国王は大きく手を広げアピールするとリーナは国王と聞いて一瞬アルシュールの動きを止め樹操房で大きくため息をつくと外部スピーカーの音量を最大にすると


「敵を殺すなんて当たり前なんでしょ?だって戦争なんだから・・しかもケヴィン国王を倒したらファーシェの勝ちでいいんですよね」


リーナはグレバルト城の兵士全員に聞こえる様に言うと樹砲を更にケヴィン国王に近づけ。


「まだやる?それとも・・」


「そんな充填されていない樹砲で脅しても私は屈しないし、お前もクローディアと同じ神官なんだろう人殺しはご法度のはず」


それを聞いたリーナは「この人は嫌な人で面倒臭い」と思いながら


「では急速充電開始・・」


リーナはそう言いながらアルシュールの左腕を上げると備え付けのひまわりの盾が開花し太陽の光を集め始め樹砲に充填を始めた。


「ケヴィン国王、これが最後です・・まだやりますか?充電が終わるまでに答えて下さい」


目の前の樹砲の花が開き始めケヴィン国王は膝を落とし残りの兵士も武器を捨て手を上げた。


「わ、分かったグレバルトの負けだ、だから樹砲を・・」


ケヴィン国王の言葉を聞いたクローディアはカルラの元に行くと回復魔法を唱えレアンはカルラを抱えながら小さなガッツポーズをした。


そしてアルシュールの樹操房で1人悩むリーナがいた「急速充填の解除ができない・・」と。


「通常充填だと解除できたんだけど急速充電って充填終了と同時に発射しちゃうみたい・・どうしよう」


リーナがスピーカーで叫ぶとその場にいた全員が「どうしようって言われても・・」と思っていると。


「やばいやばいやばいやばい充填終わっちゃう」


リーナは悲鳴を上げながら樹砲を空に撃とうと上げた時に樹砲の充填が終わり鮮やかな花を咲かせ黄色い光が発射されその光が半壊のグレバルト城を直撃し全壊へと導いた。



戦場では追撃戦をしていたグレバルトの樹神兵が次々に枯れて動かなくなっていた。


黒水蓮の樹砲を目の前に覚悟を決めていたベルンハルトも目の前の黒い樹神兵が枯れていくのを見ていた。


「操作できん!な、何が起きているんだ?そんなまさか・・」


枯れていく黒い樹神兵の中でブライアンは焦っていた。


「黒い樹神兵のブライアン、グレバルトの敗戦だ」


ベルンハルトは枯れた樹神兵から脱出してきたブライアンに叫ぶと


「そのようだな、しかし私はまだ負けていない」


ブライアンがそう言うと近くの森からファーシェ所属の樹神兵が現れブライアンを拾い上げ走り去ってしまった。

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