第12話~最後の試練~

レアンのジャンケンの勝利で幕を閉じた戦場を見届けていた1機の黒い樹神兵がいた。


樹操者のブライアンはクローディアの敗北宣言を樹神房のスピーカーで聞き終わると無言で背中にある黒水蓮の咲いた樹砲を手に取りレアン達のいる方に構えると黒水蓮の花に光が集束を始めた。


「グレバルトの勝利の為に」


ブライアンがそう呟き引き金を引くと黒水蓮に集まった黒光の束が一気に放出され光の通り道の地面を抉りそこにあった木々を消滅させて行きレアン達を突き抜けて行った。



クローディアと兵士の抱擁に感動していたリーナのアルシュールが近くに現れた高エネルギーの反応に最初に気が付いた。


アルシュールからの危険信号を受けたリーナがその方角を確認するとエネルギーを充填している樹砲をこちらに向けた黒い樹神兵の姿を捉えた。


「皆逃げて!樹砲が来る!」


リーナが外部スピーカーで叫ぶと樹神兵から降りていた者は急いで樹神兵に乗り込み樹砲に備えが終わった時にプラズマ化した黒光の束がその周辺の地面を抉り木々を消滅させて行った。


リーナはひまわり盾をその方向に向け態勢を低くして片足を下げて樹砲に備えていると地響きと共に衝撃がリーナを襲い、数秒の間樹体がガタガタ揺れモニターにノイズが走り一部のモニターが消え映らなくなってしまった。


衝撃が通り過ぎるとリーナはひまわり盾を下しモニターで他の樹神兵を探して信じられない光景を目にした、先ほどまであった地面は抉れ茶色の地中が現れ生えていた木々は黒く焦げ煙を上げ地面に転がっていた、そして地面に倒れ樹体の1部を黒く焦がたレアンの樹神兵とそれを守って朽ち果てただろう肢体を失ったカルラの樹神兵が近くに転がっていた。


その光景を見たリーナは一気に頭に血が上りひまわりの樹砲を取り出し黒い樹神兵へ向けエネルギー充填を始めた。



樹砲直撃直前にトカゲ達に樹神兵を押し倒されたクローディアは樹操房のモニターを覆う息絶えたトカゲ達を見ながら放心状態になっていた。


「お前達・・もう自由なんだぞ・・私の事なんて放っておいても・・」


クローディアはそう言うと腕で涙を拭うとトカゲ達を丁寧に動かし樹神兵を起こすと樹砲を構え充填中の下半身が破損したアルシュールがモニターに映し出された。


「このーやったなー!」


リーナは母親カリンの様な口調で叫ぶと


「リーナ!樹体が持たない!」


クローディアが叫んだと同時にアルシュールの樹砲から黄色い光が黒い樹神兵目掛け発射され、発射と同時にアルシュールは腰から折れ樹砲の反動に耐えられず下半身を残し上半身が後ろに落ちてしまった。


アルシュールの破損で樹砲が反れ、黒い樹神兵は樹砲の直撃は避けられたが無傷ではいなかった。


「まさか撃ち返して来るとは」


樹体の中破を現す赤い表示を見て黒い樹神兵は後退をせざるえなかった。



リーナはアルシュールの落下衝撃で我を戻し急いでハッチを開きレアンとカルラの所に走って行くと先にレアンの樹操房のハッチ開け気を失ったレアンを見つけ生存を確認すると回復の魔法を数度唱え、続けてカルラの樹神兵へ移動して信じられない現実を目の前にした。


レアンを守るために樹砲の直撃を受けたカルラの装甲が薄い樹体は肢体を失い樹操房の全壊は免れた物の表から樹操者が丸見えの状態だった。


「か、カルラさん」


リーナは樹操房に入るとカルラを覆っている瓦礫をどけながらる呼掛けるが返事は無くリーナは繋がっているVCを剥がしカルラを樹神房の外へ出したが既に息をしていなかった。


「主よ、私の友・・カルラさんに・・うぅ」


リーナは回復の魔法を唱えようとしたが涙で言葉にならず、何度も涙を拭っては魔法を唱えようとした。


「ダメー絶対に死なせない、カルラさんがいないと・・」


リーナが泣き叫んでいると


「リーナ、その人は天命を終わらせている」


クローディアがリーナの後ろから肩に手を乗せながら言うと。


「嫌!こんなこと絶対に嫌!・・クローディアさんなら私より階級の高い回復魔法が・・」


「馬鹿を言うな、私でも復活の魔法の類は無理の領域だ・・神の領域でもないと・・」


リーナはクローディアの言葉を聞いて神の言葉を思い出しアルシュール神から貰った白い宝石の付いたネックレスを首から無理矢理外すと両手で包みお祈りを始めた。


「主よ、お答えください、そして私の願いをお聞き下さい・・」



「私はアルシュール、貴方の信仰する自然・慈愛の神・・」


リーナが言葉に目を開けると以前も訪れた何も無い空間に1人立っていた。


「リーナ・カートライン」と後ろから声がし振り向くとそこに樹神兵のアルシュールが立っていた。


「アルシュール様、お願いがあります」


リーナはお辞儀もせずアルシュール神に声を掛けると思い出したかのように頭を下げた。


「お願い?それは貴方にとって大事な事ですか?」


「はい、とても大事な事です」


リーナは頭を下げたまま言うと。


「それは、私よりも大事な事ですか?」


「アルシュール様と?・・・はい、カルラさんは私にとってとても大事な人で私より生きていないといけない人です」


リーナは一瞬返答に困ったが自分の意思を貫くと少ししてからアルシュール神が


「では・・約束通り貴方の天命と引き換えにその者の天命を戻すでいいのですね?」


「はい、お願いします」


リーナは迷わず答えると今度は別の方向からアルシュール神とは違った声がした。


「アルシュールよ、私も混ぜてくれないか?」


リーナが声の方を見るとファーシェの噴水で見た樹神兵のローズが立っていた。


「女神ローズさんの樹神兵?」


リーナが突然現れた赤い樹神兵に驚いていると。


「我は戦の神ヴァラーガ、ローズ・ノヴァの神、ここでは女神ローズと呼ばれている」


リーナが2神を交互に見ていると。


「リーナ・カートライン、2神のご加護が貴方にはあるようです」


アルシュールはそう言うと続けて


「いいでしょう、貴方の望みを叶えます、そして戻り最初で最後の奇跡を使いなさい」


「我も、樹神兵ローズ・ノヴァをお前に与えよう」


2神はそう言うと姿を白と赤い光に変わりリーナを包み込むと同じ色のネックレスに付いた宝石に吸い込まれて行き消えた。



光が消えると同時に現実世界に戻ったリーナは包んだ手から光が漏れるのを見て包んだ手を開けると宝石が白く輝いていた。


「り、リーナ?大丈夫か?」


急に動かなくなったリーナを心配していたクローディアが声を掛けると。


「クローディアさん?」


「急に動かなくなったから心配したよ」


「大丈夫、今、アルシュール様と戦の神ヴァラーガ様と会って来た」


「2神と同時に会って来たって?私なんてマカモウ様しか現れなかったけど」


「クローディアさんも会って来たの?」


「リーナより先に現実に戻って来たけどね」


リーナとクローディアは同時に信仰する神に会っていた。


「リーナ、アルシュール神と何を?」


そう言われたリーナはニコッと笑顔を見せると。


「我儘を聞いてもらってきた」


「我儘?こっちなんか『結果良ければ全て良し』って言われただけだけど・・」


クローディアが苦笑いをするとリーナは思い出し


「クローディアさん」


「クロでいい」


「クロ・・さん見ていてください、これが私の我儘です」


リーナは怪しげな敬語で言うと輝く宝石を両手で包みカルラの方へ膝を下すと。


「主よ、私の願いをお聞きください、そして私の天命と引き換えにカルラさんの天命を・・」


リーナの祈りが終わると手の中の光が手を飛び出しカルラを包み込みそして体に吸い込まれると先ほどまであった火傷の痕もなくなり元の体に戻りそしてゆっくりと息を始めていた。


「よかった、アルシュール様、有難うございました、私の無茶なお願いをお聞きくださって・・」


リーナはそう言うとカルラの体にゆっくり倒れこんだ。



南側のグレバルトは進行をせず沈黙を守り、北側で負傷したレアン達はファーシェに引き上げクローディア率いる新トカゲ軍団が北側の守備をしていて、今までと違うのはリーナが息をしていないと言う事だった。


事の経緯を聞いたレアンは食事も取らずリーナの眠る部屋に引き籠り、カルラは体は全快ていたが復活の後遺症か全身がまともに動けずベットの上で涙していた。


「自分の命と引き換えに私の命を救うなんて・・なんて馬鹿な事をするんだ・・あの娘は・・」



数日後、遅れてファーシェに帰還した3体の破壊された樹神兵を樹神泉へ格納している所に樹神エントが現れた。


「管理者イジュ、青い樹神兵は修復可能ですが紫の樹神兵は限度を超えた為修復不可能です、そして白い樹神兵は・・樹操者次第です」


そう言い残し樹神エントは樹神の樹に消えてしまった。


報告を受けたレアンは樹神エントの言った『樹操者次第』の言葉に望みを見出し引き籠りを止め希望を求め始めた。



リーナが奇跡を行った後に再び何も無い空間に1人立っていた、今までと違ったのはリーナの問い掛けにアルシュールもヴァラーガも現われる事もなくただそこにいるだけだった。


「やっぱり、私は死んじゃったのかな?カルラさんは無事に生き返ったのかな・・レアンはどうしているだろうか・・」


リーナは神官が死ぬと魂は天に召され神様の所に行くと教わっていたので、ここがその場所なのかと思いながらも何もない空間を彷徨い歩いていた。



レアンは樹神の樹の前に立ち何度か樹神エントを呼んでみたが返事は無くどうしていいのか考えているとイジュが声を掛けてきた。


「私は王子のお蔭で樹神の色々な事に関わってきました・・そこで思ったのですがリーナ殿の魂は未だに生きていると私は思っています、リーナ殿があの状態でしかもアルシュールがほぼ全壊状態、正直樹神兵が枯れないと言うのが信じられません」


レアンもイジュと同じ事を考えていたがどうしていいのか分からなかった。



翌日、奇妙な出来事が起きた、噴水で蔦に絡まれたはずのローズの樹神兵が姿を消し樹神の間のアルシュールの樹神泉の横に立っていたのであった。


そして、イジュがいつも様に樹神の間に朝1番に訪れると樹神エントがいてレアン王子を呼ぶように言った。


「何!樹神エントが現れただと?」


イジュからの報告を最後まで聞かず慌てて着替え樹神の間に走って行くと樹神の間にはローズの樹神兵が立っていてレアンは赤い樹神兵を見上げながら。


「ローズの樹神兵が何でここにあるんだ?」


「それは私も聞きたいところです」


レアンとイジュが樹神の樹に近づき樹神エントを見つけるとレアンは会釈をしてから話始めた。


「樹神エント、いったいこれはどういう事ですか?」


「時を超え、愛娘、約束、使命、再会・・そして信じる心、愛、貴方が彼女に与えた新しい試練です」


レアンが欲しい解答では無かった事にヤキモキしていると樹神エントが


「レアン王子、貴方は彼女の事を愛していますか?」


突然の質問に唖然としていると


「今、彼女の魂は扉の無い樹神兵の中に閉じ込められています、貴方はその扉を作る事が出来る唯一の人間です・・彼女の事が必要なら答えなさい」


レアンは樹神エントの言葉に今まではぐらかしてきた気持ちを整理し自分の胸に手を当てて答えた。


「樹神エントよ、レアン・リックウッドはリーナ・カートラインを愛しています」


レアンが答えると樹神エントが姿を揺らぎながら笑顔で


「今の白い樹神兵の力では扉を作る事が出来ません・・これから赤い樹神兵を使い『接ぎ木の儀式』を行います」


レアンもイジュも聞いた事の無い儀式と思っていると樹神エントがアルシュールの樹神泉の前に移動し上半身だけの白い樹神兵を泉から浮上させ宙に留めると、レアンに青い樹神兵の乗る様に言いレアンは急いで自分の樹神兵を出すとVCを行い樹神エントの前に移動した。


「レアン、赤い樹神兵の樹操房から上下2つにしなさい」


レアンはササノハブレードを抜き両手で持つとゆっくり赤い樹神兵の方に構え大きく深呼吸をすると横1線にササノハブレードを振り抜き赤い樹操兵を両断し、それと同時に樹神エントが何かの力で上半身を移動させ地面にゆっくりと下すと、見る見るうちに枯れて果ててしまった。


樹神エントは残された下半身を移動させアルシュールの樹神泉に沈め浮かせていたアルシュールの上半身をその上から沈めてた。


「これで白と赤の樹神兵は繋がれ1体の樹神兵へと生まれ変わるでしょう・・・後は時を待つのです」


樹神エントはそう言い残すと樹神の樹へと消えてしまった。



何も無かった空間が徐々に暗くなり映画館のスクリーンの様な物が現れリーナはスクリーンの光だけに照らされ記憶にはない生まれた時から記憶に残る懐かしい映像がゆっくりと映し出され始めた。


そして元の世界の映像が終わると何度かノイズが走り今の世界に辿り着いた森の映像に変わり流れ始め、そして懐かしい映像の中に『レアン』の映像だけが何故か無い事に気が付いた。


「あれ、レアンが出てこない」


そう思った時に映像が途中で止まり少ししてスクリーンの中から声が聞こえて来た。


「リーナ・カートライン 自分の気持ちに答えを出しなさい」


声が終わると映像が切り替わりレオンに初めて出会った森から始まり『レアン』だけの映像が続き後の映像になればなるほどリーナの心臓の鼓動が早くなり止まらなくなってしまった。


「ドキドキが止まらない・・」


そして、鼓動が最高潮に達した時にリーナの記憶に無い樹神の間での『接ぎ木の儀式』の映像が流れだした。


そこには無残な姿の白い樹神兵アルシュール、何故かいる赤い樹神兵、そして樹神エントと話をするレアン。


映像だけで何を話しているか分からなかったが樹神エントから何かを言われレアンが考え始めたところから急に音声が入りレアンが真顔で胸に手を当てながら


「樹神エントよ、レアン・リックウッドはリーナ・カートラインを愛しています」


リーナの心臓は爆発寸前まで高鳴り出し、顔を真っ赤にして画面から目を背けてしまい。


「レアンったら冗談も程々にしないと・・」


そしてリーナは今までに無い胸の痛みを感じ胸に手を当てていると、スクリーンが一瞬ブラックアウトし画面が切り替わり樹神の間で赤い神官着を着た少女の映像が流れ始め最後にリーナの知らない若い男性から告白を受ける映像が流れた。


「ローズ・ノヴァ、私の妻になって欲しい・・」


男は膝をつき少女の片手を取りながら言うと。


「セイグリット何を馬鹿な事を言っている、私はここの人ではないし元の世界に戻らなければならない・・」


「どうしても戻らなければならないのか?」


赤い神官着の少女は赤面しながらも


「お前の事は嫌いじゃないが、夫としてはまだまだの男だ・・だからファーシェの国王になってもっと大きな国に育てるんだ、戦争が集束してまだまだファーシェは不安定だからその為に私を最大限に利用しろ、妻になってやれないが戦いの女神ローズはファーシェの繁栄を願っている」


セイグリットはそう言われると立ち上がりローズの両手を取り笑顔で。


「分かった、俺にはここでまだまだやらなければならない事があるな」


「そうだ・・お前は・・国王になって・・」


ローズは我慢していただろう涙が溢れ始め言葉に詰まると両手を引きセイグリットに短い口付けをすると両手で涙を拭い満面の笑顔で。


「女神ローズの祝福だ、頑張れよ!」


そう言いセイグリットに背を向けてしまった。


映像はここで切り替わりリーナの出会った森からの映像に戻り今度は音声が混じり再生し始め、そしてレアンのセリフが終わったところで回答を待っているかの様に止まった。


「わたし・・私もレアンを・・レアンの事を愛しています」


決して大きな声ではなかったがリーナは詰まらせていた気持ちを出すとスクリーンがゆっくりと消えそしてスクリーンの光が消え暗闇に包まれリーナの意識もそこに吸い込まれて行った。



『接ぎ木の儀式』後に別の部屋にあったリーナの体が消えてから樹神の間のアルシュールの樹神泉の前に陣取り必要な時以外は1日をここで過ごしていた。


必要な机やベットを運び仕事も食事も寝るのも全てここで行っていた。


『接ぎ木の儀式』を行ってから2日後の昼食をしている時に目の前の樹神泉から接ぎ木がが終わった新しいアルシュールがゆっくりと姿を現した。


「こ、これはアルシュールなのか?」


以前は全身白色の神官着でどちらかと言うとどっしりした樹体をしていたアルシュールがスリムな神官着(夏服バージョンの様な)白を基本に関節部分に赤いバラの装飾がありひまわりの盾はそのままだったが背中に咲いていたひまわりの樹砲が赤から黄色のグラデーションのバラ樹砲に変わり、そして胸に輝く七つ星が輝いていた。


「ほ、星7つだと!」


レアンが新しいアルシュールに驚いていると樹神房のハッチが開き『寝起きです』とばかりに目を擦りながらリーナが顔を出した。


「リーナ」


レアンがリーナを見つけ手を振りながら叫ぶと、リーナはレアンの顔を見つけると顔を赤らめ何も言わずに樹操房に戻ってしまった。


「こらー戻るなー」


樹操房で頭を抱え『何でレアンがここにいるの?恥ずかし過ぎて顔見れないよ・・』などと何も無い空間の事を思い出しているとレアンがアルシュールの樹神房を覗き込み声を掛けるとリーナは顔を上げると目が合い今度は2人して赤面して顔を逸らしてしまった。


「リーナ、大丈夫か?」


「だ、大丈夫、レアンこそ元気そうでなにより」


「うん、お蔭様で元気だ・・」


「よかった・・」


・・・・・・・


ここから数分『お前ら中学生か』と突っ込みたくなる会話が続いたところで、それを傍観し少し『イラッと』していた樹神エントが2人の横の宙に現れ2人を何かの力で無理矢理宙に浮かしレアンが食事をしていた机に向い合せに座らせると。


「よかったですね戻れて」


そう言って後は若い者同士でとばかりに樹神の樹へ消えてしまい少しの沈黙の後にリーナが先に口を開いた。


「えーと・・その・・わたし・・」


下を向きながらリーナがモジモジしていると


「お帰りリーナ、ちゃんと顔を見せてくれ」


そう言われリーナがゆっくりと顔を上げるといつもの笑顔のレアンがフォークに刺したウインナーを差し出していた。


「お腹空いただろう?」


リーナはレアンの言葉に笑顔で「うん」と答えると差し出されたウインナーを口にした。



【ここからは神のネタ話】


何もない空間で2人の人間を見ていた白いドレスを着た女性の姿のアルシュール神と赤い甲冑を着たかっぷくのいい男性の姿のヴァラガ神の2神も樹神エントと同じ様に『イラッと』していた。


「何だあの茶番は、アルシュールあの神官には度胸が足りないな」


ヴァラガ神が頭を掻きながら言うと。


「アルシュールの神官は『清く、正しく、美しく』ではならないからあれでいいの、ヴァラガの神官みたいに勢いでとかは無いから」


「何?勢いがあってこそ戦いに勝利するのではないか」


「恋はお互いの心と心の結び付きで戦いじゃないから」


「恋も戦の1つ、戦略を練り駆け引きをして勝ち取るものだ」


「そうね・・」


アルシュール神はヴァラガ神の言葉を流すと続けて


「ヴァラガも途中で割り込むなんてお節介にも程があるわよ」


「いいじゃないか、あの神官にはヴァラガの加護もある事だし・・」


「おやおや神様が覗きですかな?」


ヴァラガ神が言い終わると同時に金ぴかの神官着を纏い太った格好の男が現れた。


「マカモウか、こんなところでどうした?」


「どうした?って同時に神官の昇格試験が行われるなんて、こんな楽しい事はないじゃないか、アルシュールはいいとしてヴァラガが何でここにいるんだ」


怪しげな笑みを浮かべながらマカモウが言うとヴァラガ神が。


「アルシュールの神官にはヴァラガの加護もあるし、マカモウの神官と試練の同時進行だぞ・・こんな珍事を見逃すなんて勿体ない事だ」


「そうだね、珍事の結果がどうなるかが楽しみだね」


こうして神々の娯楽ひまつぶしと言う名の試練が行われていた。

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