第9話~ブロンドの少女クローディア~

樹神の間で朝のお祈りを終わらせたリーナが部屋で朝食をしていると、既に日常と化したレアンがノックも無しに笑顔で部屋に入って来た。


「リーナ、おはよー」


「おはようございます・・」


リーナはレアンの日常と化した行動を諦め、レアンに見向きもしないで普通に答えるとレアンがリーナに近づき


「リーナ笑顔笑顔」


そうしてリーナのほっぺを指でグリグリ始めた。


「レアン・・用事が無いなら・・」


リーナは額に#の文字を浮かばせながら言うとレアンは指を離し今度は自分の頭を掻きながら


「用事か・・何かあったような・・」


「用事が無いなら・・」


「そうだ思い出した、リーナに会いたいって人がいてさぁー」


「会いたい人?」


「今朝早くに城門にクローディアってブロンドの髪の子供が来て、リーナに会わせろって」


リーナはその名前に心当たりを探しているとレアンが思い出したかの様に


「そうそう、何でも『私の信仰はマカモウだからそれを伝えてくれれば分かる』だそうだ」


リーナは『マカモウ』と聞いてそれが元いた世界の『商い・幸運』の神と同じである事を思い出し慌てた。


「れ、レアン、その人・・もしかしたら元いた世界の人かもしれない」


「元いた世界の人?」


リーナは元いた世界の6つの信仰されている神様の話をレアンにした。


リーナのいた世界にはフェアレイ(法・秩序)、アルシュール(自然・慈愛)、ヴァラーガ(戦)、アザヤ(知識)、クロックス(混沌)そしてマカモウ(商い・幸運)がいた。


リーナは説明が終わるとその娘と会ってみたいとレアンに頼んだ。


「身元不明者を城に入れるのは難しいから、城外の秘密基地で会うか・・」


「城外の秘密基地?」


「そうそう、城外に俺の秘密基地があるからさぁー」



そうしてリーナはレアンに連れられその秘密基地に着くとそこは広い庭のある豪邸だった。


レアンが入り口に着くと執事とメイド数人が出向かえてくれた。


応接室通されるとリーナはレアンに


「レアン、ここは?」


「ここは俺の母親の実家で、今は俺の秘密基地で親父にばれたくない事はここでやってる」


「ばれたくない事?」


「そうそう、こないだの救出作戦とか、親父に言ってもどうせ許可出無いからここの秘密基地でやってる」


レアンが言い終わると部屋の扉が開きブロンドの少女を連れたカルラが入って来た。


ブロンドの少女はリーナより背が低くブロンドの髪は背中くらいまで長く首の後ろで結んでいた。


簡単な挨拶が終わりクローディアと名乗った少女は首を傾げたり戻したりしながらリーナにしか分からない言葉や名前を話し出した。


「私はモンテラ大陸にあるルエルミンからこの世界に来ました」


「ルエルミンって言ったらアーバスの隣の街じゃない」


リーナは少し興奮気味に言うと。


「街の位置関係が分かるならやっぱりリーナは神官で向こうの人?」


「私はアルシュール信仰で昇格試験で手違いがあってここに・・」


「手違い?」


そう言われたリーナは下を向き母親の陰謀を思い出しながら


「そう・・て、ち、が、い、で・・」


「そうなんだ、私は選んで来て1年経つんだけど・・」


「選んで?1年経つ?」


リーナは顔を上げて言うとクローディアが


「本当は最上級だったんだけど、なんか『笑っちゃう級』ってのが気になって・・」


リーナはそこで自分よりクローディアの方が階級が上だと言う事が分かり、その後も情報交換をしていると、更に見た目は妹の様に見えたクローディアがリーナより2歳も年上だと言う事が分かった。


「リーナの方が年下なんだ、落ち着き無いし子供みたいで分かる気がするよ」


レアンが笑いながら言うとリーナは口を尖らせ横を見ながら『どうせ子供みたいですよ』と呟くと思い出したかの様にレアンの方を見ながら


「子供ってレアンに言われたくないし」


『同意』とカルラが頷くとレアンが満面の笑顔で


「俺は子供じゃない、童心を忘れないだけさ」


リーナとカルラが呆れた様に『はいはい分かりました』とジェスチャーをするとレアンが


「リーナはともかくカルラお前だって昔はやんちゃしてただろう?」


「な、何を言う」


急に話を振られたカルラが慌てて答えるとレアンが薄笑いをしながら


「俺は知っているぞ、今まで何人の男をしばいた?」


「あ、あれは・・やつらがしつこかったから・・」


「ふぅーん、しつこいねぇーじゃー俺は何でしばかないんだ?」


そう言われたカルラは少し顔を赤らめながら


「お、お前は王子だったし、他のやつらと違って変な策略とか無かったから・・」


「策略?他の男は女を落とすのに策略をしていたのか?俺は当たって砕け!だけど」


女心がまったく分かっていないレアンにカルラとリーナはため息をついた。


3人が漫才をしているとクローディアが首を傾げながら


「リーナは神官魔法とかは使える様になったの?」


「え?魔法?」


急に話を振られたリーナは忘れていた魔法の事を思い出した。


「その調子じゃ、まだ使えそうに無いわね」


「クローディア・・さんは使えるのですか?」


怪しげな敬語のリーナに


「ここに来て1年経って少しだけど使える様になった」


「使えるの?」

「ま、魔法だと」


リーナとレアンが同時に言うとクローディアが首を戻しながら不適な笑いを浮かべ


「試してみる?」


こうしてクローディア VS 3人のじゃんけんが始まった。


「じゃー魔法の効果時間5分の間に3人の誰かが私に勝てたら魔法じゃない・・でいいから」


クローディアはそう言うと目に見えない魔法を唱えた。


「主よ、私に幸運を・・」


リーナ、レアン、カルラは交替でクローディアとのじゃんけんに挑んだ。


「じゃーんけーん ぽい・・」


そして5分が経ちじゃんけんが終わった。


「何で勝てないの・・」とリーナ


「何で勝てないんだ・・」とカルラ


「俺はこんなに弱かったのかー」と超凹むレアン


「全部私の勝ち」と首を傾げながらVサインでドヤ顔のクローディア



「これで分かってもらえた?」


クローディアがそう言うとリーナが


「どうやって魔法が使える様に?」


クローディアは胸元から金色の宝石が付いたネックレスをリーナに見せると


「マカモウ様がくれた宝石のお陰」


リーナは色違いではあるが赤と白のネックレスをクローディアに見せた。


「私もアルシュール様から・・」


「あー、もう貰ってるんだ、じゃー後は信者を増やせばいいんだよ」


「信者?」


「そう、魔法を使える様にするにはここの世界で信仰を広げる必要があるらしい、分かりやすく言えば布教活動」


「布教活動?」


「ここには階級を上げる為に来ているから当然神様からの試練と考えるべき・・まずは神様を信じ続け、それから布教活動・・神官として当然の行為」


リーナはクエストを終わらせる事だけを考えていて、神官の昇格試験だと言う事をすっかり忘れ恥ずかしくなっていた。


「布教活動って言われても・・どうしていいか・・」


「自分と同じ志を持ってくれる人を増やせばいいんだよ、私の場合は・・」


クローディアはそこまで言うと少し困った様な顔をしながら


「これ以上は内緒・・神官なんだから後は自分で考えて」


そう言うとクローディアは席を立ち背伸びをしながら


「レアン王子、今日は話を聞き入れてくれてありがとう、楽しかったから最後に教えてあげる・・ここのクエストは2つの国を1つにする事で間違いない・・1つになればいいから勝者はファーシェでもグレバルトのどちらでもいい、だから私は勝つ方に付いて元の世界に帰る・・それとここで私をどうにかしようとしても無駄だからね・・幸運の魔法を使ってるから絶対に帰れる」


クローディアはそう言い部屋から出ようとするとレアンが真顔で


「ちょっと待てクローディア・・今までの事は全て水に流そう・・」


「ん?」


クローディアは振り向き首を傾げるとレアンは拳を握りながら


「次は勝つ・・絶対に勝つ・・次に会った時にはじゃんけんに勝ってクローディアを・・」


「いいよ、もしレアン王子が勝てたらファーシェに付いてもいいから」


「約束だぞクローディア」


レアンが握った拳を突き出すとクローディアは首を戻し笑顔で


「レアン王子は面白いね・・それとクロでいいよ慕ってくれる人は皆そう呼んでるから」


「分かった俺もレアンでいい」


「じゃーねレアン」


クローディアはそう言うとお辞儀をして部屋を出て行った。


「いいのかレアン放っておいて?」


カルラがそう言うと


「いいんだ、俺はクロに勝ってファーシェを勝利に導く」


「確かにファーシェに来て樹神兵を創れれば凄い事だけど・・あ!なるほどそう言う事か・・」


カルラが含みながら言い終わるとレアンは笑みを浮かべ理解していないリーナが


「そう言う事ってどういう事?」


「クロは既にグレバルトに付いていて樹神兵も持っている」


「え?じゃー今日は何で?」


「多分、アルシュールと言う名前を聞いたのと、その樹神兵の樹操者を確認しに来たんだろう」


「樹操者・・私を?」


「そうだ、アルシュールの樹操者が同じ世界にいた人間かって確認しに来たんだよ」


リーナがなるほどと考えているとレアンが


「クロがさっき言ってたよな、『勝つ方に付いて元の世界に帰る』と・・だからリーナを見極めに来たんだ」


「そ、そんなーじゃー私、ダメダメな娘って思われてないかな・・」


「間違いないな」


レアンが真面目に答えるとリーナは顔を真赤ににして下を向いてしまった。



グレバルトに戻ったクロはブライアンに呼び出され説教をされていた。


「何処に行っていたクローディア!お前は・・」


「ファーシェに行って白い樹神兵の樹操者に会って来た」


ブライアンが言い終わる前にクローディアが言うと


「な、何だとまた勝手な事をしやがって、お前は何時もそうだ・・」


ブライアンは説教をしながらもクロの手に入れた情報を聞き出し始め少しすると。


「必要な情報は話したし・・疲れたからもう寝る」


クローディアはそう言いブライアンを無視して部屋を出て行こうとするとブライアンが後ろから大きな声で。


「ま、まてクローディアまだ話が終わってない」


「・・・白い樹神兵はまだ完全ではない・・攻めるなら早い方がいい」


「お前に言われなくともそうするさ」


クローディアは振り向かずに首を傾げ小さな声で


「この世界に来て最初に助けてもらった恩はあるけど・・もう1年経ったし・・それとお前はつまらない・・」


「何か言ったか?」


ブライアンが叫ぶとクローディアは首を戻し「寝る」と言い部屋を出て行った。

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