第7話~黒と緑の樹神兵~

リーナ達はトカゲのいる目的地の近くまで来ていた。


そして、それを最大望遠で見ている緑の樹体があった。


「ブライアン様、来ました」


トーンを変えずそう言ったのは緑の樹神兵の樹操者で長いブロンドの背の小さな少女。


「クローディア、何機いる?」


そばにいた黒い樹神兵の赤髪の男の樹操者がそう言うと


「先頭の紺はレアン王子、紫はカルラ、茶色が3機と・・白い樹神兵?」


「白い樹神兵だと?」


「今まで見た事がない色の樹体で・・背中に樹砲じゅほうも確認出来ます」


「樹砲だと・・ファーシェに星6の樹神兵を創る人材がいたのか?そんな情報は入っていないぞ・・」


ブライアンがどうするか考えているとクローディアが


「予定通りにやるの?」


「ここでレアン王子をやるつもりだったが、樹砲が本物ならこちらも無事では済むまい・・クローディア作戦変更だトカゲを全て放て、あの白い樹神兵を見極めたい」


言われた緑の樹神兵はその場から移動し少し拓けた場所に来るとそこに眠っている十数匹のトカゲに近づきながら


「お前達ご飯の時間だよ」


そう言いながらトカゲ達に向かって樹神兵の腕から白い液体を噴霧した。


噴霧されたトカゲ達が目を覚ますと緑の樹神兵に飼い主に懐く猫の様に集まり始めるとクローディアの指示に従いリーナ達のいる方向へ歩き出した。



リーナ達が島を両断している火山が見えるトカゲの狩場に着くと、リーナは想像より大きな火山に驚いていた、そしてその火山に不自然に開いた穴を見つけた。


「レアン、火山を貫通している大きな穴があるんだけど」


火山の穴と聞いたレアンは


「あれはローズが開けた穴だ・・」


「ローズが開けた穴?樹神兵で?」


「200年前にローズ砲で開けたらしい」


「ローズ砲ってそんなに凄いの・・」


リーナがもしかしてひまわり砲もこんな事が出来るの?と思っているとレアンが震えた声で


「しかも終戦後の終戦協定の時に負けた敵の国王が悪あがきとばかりに協定式に自分の樹神兵に乗り、残った樹神兵を率いて乗り込んできたんだが・・ローズがその国王ごとその集団をローズ砲で葬り・・その時に開いた穴だそうだ」


「え?国王ごと?」


「そう・・歴史の教科書にもちゃんと書いてある・・セリフ付きで」


「きょ、教科書?セリフ?」


「お前がいるから話が進まない・・だそうだ」


リーナはローズって人は怒ると怖い人なのかな?と思っているとカルラが


「王子、火山の方から何か来る」


言われた全員が火山の方を見ると姿は見えないが何かが木を揺らしながら向かって来るのが見えた。


レアンが戦闘準備の声を掛けたと同時に兵士の悲鳴が聞こえリーナがその方を見ると1人の兵士の樹神兵が巨大なトカゲに押し倒されていた。


「正面以外にもいるぞ」


レアンがそう言うとササノハブレードを抜いた、そして正面のトカゲが姿を現しレアンの突進するとレアンは回避するとブレードで切り付けた。


リーナは助けないとと倒れた兵士の樹神兵の方を見た時に見てはいけない物を見てしまった。


トカゲがハッチをこじ開け長い舌で中の兵士をVCごと引っ張り出すと何度か地面に叩き付け動かなくなった兵士の下半身を足で押さえ頭からくわえて引き千切りそのまま丸呑みをし下半身も片足をくわえ半分にして食べてしまった。


リーナは目の前で人が捕食されたのを見て恐怖で動けなくなってしまった。



レアン、カルラ、兵士は襲ってきたトカゲに応戦していたが恐怖と実戦経験ゼロのリーナだけは棒立ちのままだった。


「リーナ後ろだ」


レアンは動かなくなったアルシュールに言ったが、後ろから来た1番大きなトカゲに押し倒されてしまい、リーナが後ろのモニターを見るとそこには裂けた口から唾液を流しているトカゲが映っていてリーナは必死に逃げようとアルシュールを操作したが思う様に動けなかった。


そしてトカゲは器用にアルシュールを仰向けにすると間接部分に爪を立て動けないように押え付けると今度はトカゲの顔が正面に来てリーナはパニック状態に陥った。


トカゲはアルシュールのハッチに噛み付きこじ開け様としたが兵士の樹体とは違い硬い装甲を持つアルシュールのハッチは簡単には開かなかった。


トカゲはハッチを開けるのを諦めると今度は口から黄色い液体をハッチに向かって吐き出し、液体が装甲に付着すると白い煙を出しながら溶け始めた。


リーナは目の前で白い煙を上げながら溶けだしていく装甲を見て手足を動かし暴れるがトカゲに完全に押えられたアルシュールはそれに答えてくれなかった。


そして、モニターにノイズが走り1部が消えたり点いたり始め、その後全てのモニターが消え元の樹神房の壁に戻り明かりの無い真っ暗な空間の中でリーナは『死』を覚悟し、その恐怖に勝てず気を失ってしまった。



トカゲに良い様に遊ばれている白い樹神兵を見ていた黒と緑の樹神兵は


「クローディア・・あの白いのは見せ掛けだけか?」


「分かりません・・ブライアン様」


「ファーシェの奴らめ樹神兵の数が足りないからと言って星の少ない樹神兵を星の多い樹神兵に見せ掛けるなどと小細工しおって・・帰還して総攻撃の準備だ」


ブライアンがそう言いその場から移動をするとクローディアは首を傾げ


「トカゲは?」


「トカゲの実験は終わりだ、もう必要ないから解放しろ」


クローディアはかしげた首を戻すと


「了解、解放する」


そう言うとトカゲ達にしか聞こえない通信で「ご飯止め、もう家に帰っていいよ・・また遊ぼうね」と指示して黒い樹神兵の後を追った。



2人目の兵士が捕食された所でトカゲ達の動きが止まり、少しすると火山の方に向かって走り始めた。


「何が起きた?」


レアンはそう言うとリーナの事を思い出しアルシュールに向かうとハッチに穴が開き中のリーナの気絶している顔が見えていた。


未だ溶け続ける装甲の液体をアジュガで取れるだけ取ると


「リーナ!おい起きろ」


レアンはそう叫ぶがリーナは反応しなかった。


レアンはアルシュールのハッチを無理矢理剥がすとアジュガを降りリーナのいる樹操房に入りVCをナイフで切り落としリーナを抱え外に出た。


レアンはリーナの息を確認するとギュッと抱きしめ、何度も『俺のせいだ』と叫んだ。

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