狂える類人猿 Ⅱ
親父に手を引かれる形で帰宅しても、頭の中はあの鉄骨の中を走るヒゲと巨大なゴリラのことで頭を埋め尽くされていた。
単純かつ記号的な物体ではではなく、目や口にとどまらず表情のはっきりと判る”キャラクター”がそこに存在していたのが革新的で、隣で同じく稼働開始したばかりの”王様をさらおうと降下してくる風船を撃ち落とすやつ”はそれほど目に入らなかった。
パッと見で少し古めかしいことが判る代物だったのもあり、進んで遊んでみようという気にはあまりなれなかった。さらわれかける王様が
頭の中がヒゲとゴリラで一杯であることを隠そうとしなくとも親父は特に
翌日、入院中にテレビを観るために貰っていた小銭を握りしめてヒゲとゴリラのあるパン屋兼洗濯屋へ向かった。
画面を覗き込む。
そうか。
ゴリラの挑戦的な表情の絵、25
読める筈もなくかといって気にする程でもなく、そうしているうちにヒゲとゴリラの一面が始まる。すぐに頭上から
最初の梯子は途中で切れて登れない。画面端まで走るとようやく切れていない梯子があり、そこでようやく一段上に登る。登った場所のすぐ近く、頭上に何かある。トンカチだった。
あれは取れるのだろうか、触れてはいけないのだろうかと
ヒゲがトンカチを振り下ろすその
さらなる樽を壊さんと樽に突っ込んでいくこと数回。トンカチを振り上げた隙に転がってきた樽がヒゲの腹に当たって二人目のヒゲが死ぬ。トンカチを持っていても決して油断はできない事をヒゲの死をもって知った。
ヒゲの最後の一人は慎重にやろうと丁寧に樽を飛び越え、上の段を転がる樽は梯子を通過するのを確認してから梯子を登るなど徹底し、あともう一段というところまで到達。画面左にはとても取れそうに思えない位置にトンカチがあったが、これを取るのは無理なんじゃないかと執着せず無視して残り一段を登るために右へ走る。程なくして梯子に到達して最終段。ここからゴリラ近くの梯子まで走り、それを登れば女性を救助できる。しかし、それを意識するあまり緊張で樽を飛び越え
それから四回程遊んだだろうか。出かける前に必ずこの時間に帰ってこいと約束させられた
帰り道にある、もう一軒のパン屋
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