喫茶店と宇宙
幼少のみぎりにあれだけのものを見せられたし、それをやりもした。
以来、
あれからしばらくして、親父と一緒に髪を切りに行くいつもの床屋の順番を待つ席にまでイカタコが置かれるようになった。そこではそれが行儀の良いことだと思ったのだろう、
イカタコをぼんやり眺めていたら程なくして散髪の順番が回ってきて髪を切り、店を出たその数日後にさらなる衝撃が待っていた。
両親の
入ったのは商店街の中ほどにあった大きなオレンジ色のネズミの看板が目立つ喫茶店だった。当時の流行りなのか、天井から植物の入った鉢を吊るしているような店。通された席のテーブルがイカタコなどが入っているそれなのはすぐに見て取れた。
席に座るその段になって目の端で見ても判る程、モノクロの画面にセロハンを貼っていたイカタコよりもずっと色彩に富んだ美しい映像が網膜に訴えかけてくる。パッと見でイカタコと同じようなルールのものであることはすぐ理解できる
もうその時点でテーブルの対岸に居る母の話なんて話半分にしか聴こえてなんかいなかった。注文が来るまでの間、それのデモンストレーション画面を食い入るように見入っていた。イカタコとは決定的に違うものに心を奪われていたのだ。敵が能動的に降下してきたり一番偉いやつが護衛を引き連れて襲いかかってくる来ることも充分に衝撃的だったが、何より目を奪われたのが背景の存在だった。
色とりどりの
ただそれだけ。ただそれだけなのにも関わらず、画面の奥への無限の広がりを感じずには居られなかったのだ。
その流れ行く星を飽きずに眺めていたその時、不意に無限の宇宙が映し出されている画面が遮られた。オレンジジュースとナポリタンだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます