第六編
「君は彗星を見たことがあるかい。」
先輩が唐突に質問を投げかけてきたので、僕はそれに頷く。
「そうか、私はまだ観たことはないんだがね、こんな話は知っているかい。」
先輩はそう言うと、つらつらと話し始める。
「彗星を実際に観た君なら知っているだろうが、彗星は青緑色をしているだろう。」
先輩は次の言葉を紡ぎながら、空に指を走らせる。
「だから彗星は、『翠』星とも言われているんだよ。」
僕は小さな溜息と共に頷く。
「そしてこれは、そのカケラなんだ。」
ぶら下げたペンダントをヒラヒラと振りながら話を続ける。
「こいつは、私の両親からプレゼントされたものなんだ、先月の誕生日にね。」
首から外されたペンダントは、光を集めて透き通った青緑色に輝く。
僕はその美しさに魅了されて、その向こうに見える先輩の顔を見つめる。
先輩は、堪えられないといった表情を浮かべ、笑い始める。
「君は本当に面白い後輩だよ、こんな話を真面目に聞いて。」
ふぅ、と一息ついた先輩は小悪魔じみた微笑みを浮かべて一言。
「私は彗星を観たことが無いと言っただろう。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます