5-7-2 三者会談 第二王子、侯爵令嬢、帝国皇子
「マリー、それで、こんなところまで連れてきて、会わせたい人物とは誰だ」
「はい、今入って来るように伝えますね」
私は店の従業員に、別室に控えている人物を連れて来るように指示を出した。
ここは貴族たちが秘密の会合でもよく利用しているカフェの一室である。私はここで第二王子と、とある人物の会合をセッティングしていた。
程なくして、従業員に連れられ、そのとある人物が部屋に入ってきた。
「第二王子殿下、初めてご挨拶させていただきます。私は大北極帝国の第四皇子カミーユと申します。以後、お見知り置きを」
「なに、帝国の皇子だというのか。何故こんな所にいる。というか、学院で見たことがある顔だな」
「殿下のご推察の通り、私はこの国の学院に通っております」
「なんだと。帝国は敵国だ。捕らえて晒し首にしてやる」
「お待ちください、ツヴァイト様。カミーユ様は、我が国と友好を結ぶためにやってきたのです。まずは、お話だけでも聞いてからにしてください」
「マリーの頼みでは仕方がないか。話だけは聞いてやる。話せ」
ツヴァイト様の許可が出て、帝国の皇子が話を始めた。
「ありがとうございます殿下。マリーさんが言われた通り、私はこの国と帝国との友好関係を築くために来ました。そして、その話を進めるために誰が適任であるか、学院で身分を隠し観察させていただきました。その結果、帝国との架け橋となれるのは、聡明な、次期国王候補の第二王子殿下以外ありえないという結論に達しました」
「ふん、口ではなんとでも言える。俺はお伊達には乗らんぞ」
「いえ、そんなつもりはありません。事実を言っただけです。我々は、次期国王は第二王子殿下以外ありえないと考えています。ですが、国内の様子を見るに、まだ決定事項ではない様子」
「カミーユ様、ツヴァイト様に失礼ですよ」
次期国王はツヴァイト様に決まっているじゃない。なんて失礼なのかしら。役に立つと思ってツヴァイト様に引き合わせたけれど、間違いだったかしら。
「マリー、まあよい。まだ決定していないのは事実だ」
まあ、ツヴァイト様はなんと心がお広い。
「寛大なお言葉痛み入ります。そこで我々は、殿下の王位継承を確実にするための妙案を用意いたしました」
「妙案だと。申してみよ」
「現在、王位継承を複雑にしている要因の一つに、北の公爵令嬢の存在があります。彼女を王妃に推す声が大きく、そのために婚約者である第一王子に王位継承の期待が高まっています」
「だが兄上、いや、第一王子は王位を継承する気がないぞ」
「そのようですね。ですが、北の公爵令嬢を押す周り声は大きくなる一方です。このままでは、第一王子もその声に負け、王位継承を目指すようになるか。それでなければ、公爵令嬢との婚約を解消することになるでしょう」
「第一王子は、学院で女性に付き纏われないようにするために婚約したと言っていたし、婚約解消はありえるかもしれんな」
「婚約解消となれば、第三王子は黙っていないでしょう。王位継承を目指すため、公爵令嬢を我がものにしようとするはずです。しかし、殿下はそんなわけにはいかないでしょう」
帝国の皇子がちらりとこちらの様子を窺う。
「当たり前よ。殿下には私がいるのですから。公爵令嬢など目じゃないわ」
「マリー様には失礼ですが、侯爵では公爵には敵いません」
「なっ・・・」
こいつ、本当に失礼ね。確かに爵位では勝てないけれど、それ以外では負けてないわ。
「そこで妙案があるのです。公爵令嬢の脅威を取り除く方法が」
「そんな方法があるの。ああ見えて彼女は強いわよ。その辺の騎士より強いくらいだから、暗殺しようとしても返り討ちに合うわよ」
「力尽くで、どうこうしようというのではありません。平和的な解決法です。公爵令嬢を私が娶り、帝国に連れていくのです」
「なんだと」
「両国の友好のためです。帝国からは皇女を第一王子に嫁がせます。いかがでしょう」
「それはいいわ。ついでに大公令嬢とその腰巾着もどうにかしてほしいくらいよ」
「そうですね。そちらについてもなにか考えましょう」
「期待しているわよ」
最高だわ。これで目の上のたん瘤を処理できる。やはり連れて来た甲斐があったわ。
「マリー、少し待て。公爵令嬢の価値は国中に広まっていると言っても過言ではない。そう簡単には国外に出せんぞ」
「であればこそ、帝国との友好の証になるのです。我々も殿下を国王にするべく力を尽くしますので、どうかご検討の程を」
「うむ、まあ、検討はしよう」
検討するまでもないわ。この話、強引にでも推し進めるわよ。
「それでは本日はこのへんで失礼します。また、マリー様を通して連絡させていただきます」
「わかった。マリー、頼むぞ」
「はい。ツヴァイト様」
帝国の皇子が部屋を出た後、少し時間を置いてツヴァイト様も部屋を出ていった。私は二人を見送った後、一人、ほくそ笑みながら部屋を出たのであった。
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