5-5-3 逃走計画
護送用馬車の中、私、シリー、ケニーの三人は顔を寄せ合い小声で今後の対策を話し合った。
「リココは転移魔法が使えたのか」
「いいえ、ケニー。リココは使えないわ」
「リココは、ということは誰か使える奴がいるのか」
私は少し考え、ここまできて秘密にしても仕方がないかと思い、本当のことを答えることにした。
「シリーが使えるわ」
「そうなのか。じゃあ、何であいつらはリココだと思っている」
「リココが使える魔法は、収納魔法、空間系だわ。転移魔法も一般的には空間系なのよ」
「シリーも空間系なのか」
「私は、お嬢様支援系です」
「シリーの場合はちょっと特殊なのよ。私を支援する魔法として、移動支援で私と私の所有物を転移できるの」
ケニーは少し考えている。
「そうか、それでエリーザ迷宮で俺に「お前のものになる」と宣言させたのか」
「エリーザ迷宮って言うな」
「何でだよ。カッコいいじゃないか」
「カッコよくない。恥ずかしいだけよ」
「そんなことよりこれからの対策を考えましょう」
「そうね。そうだったわ」
「全員まとめて転移できないのか。迷宮でも結構人数いたと思うけど」
「人数は問題ありません。問題なのは王女たちがお嬢様の所有物ではない事です。お嬢様の所有物でなければ転移できません」
「レオンはどうなの」
「レオン様は微妙ですね」
「微妙って何よ」
「レオン様は昔からお嬢様に所有物扱いされていましたからね。本人もそれを受け入れていたようですし」
「所有物扱いなんてしてないわよ。少し便利に使ってただけじゃない」
「ならいけるんじゃないか」
「ただ、今は王女の話し相手兼護衛役としてきています。そうなると王女の所有物となる可能性があります」
「いっそ、王女を所有物にしてしまえば全員いけるんじゃないか。所有物の子分もいけるんだろう」
「それは確かにそうなのですが、王女を所有物にできますか」
「常識的に考えてそれは無理よ。王女の所有物になるなら何とかなっても、王女を所有物にはできないわ」
「なら、転移で脱出するのは無理か。そうなると強行手段だな。俺はそれでも構わないぜ」
「王女が人質でなければそれもありだったのだけれど、何とか王女とレオンだけでも先に逃がす方法はないかしら」
最悪、王女が死んだらグラールを使うという手もある。
いや、やめておこう。グラールを使うのは危険すぎる。下手をして、王国が帝国に支配されている世界にでもなっていたら取り返しがつかない。
ヒロインに死んでもらうのも手ではあるが、そんな手は使いたくない。
「そうだ、レオンに王女を口説かせて、レオンの所有物にしてしまってはどうだ。王女も満更でもなさそうだし」
「それは確かに、今回レオンが同行しているのも王女の希望によるものだし、可能性はあるわね」
「そうなると、どうにかしてレオン様たちと連絡を取る必要がありますね」
私たちとレオンたちは別の馬車で運ばれている。
「一緒になる機会があればいいんだが」
「それなら、丁度いい魔法があるわ。まだ実験段階なのだけれど、レオンなら何とかなると思うわ」
「それはどんな魔法なんだ」
「『念話』といって、離れていても意思疎通ができる魔法よ」
ヒロインの緊急時に連絡を取るために、グラールの魔法を基に開発中の魔法だ。
「それは凄いな」
「ただ、まだ開発途中なの。魔法を使用したとき、相手もこちらのことを考えていないと意思疎通ができないの」
「それって、レオンがエリーのことを考えていないと成功しないということか」
「そうよ。だけれども、レオンならきっと、こっちのことを心配しているはず。ちょっとやってみるから、見張りがこちらに気づかないように注意していて」
「わかった」
私は指輪から念話の魔法カードを取り出すと、後ろ手に縛られた手にカードを隠し持ち魔力を込めた。
[レオン聞こえる。聞こえたら返事して]
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