5-5-1 創世の迷宮行き
13回目の繰り返しで初めて二年目の夏休みを迎えた。これでやっと創世の迷宮に行くことができる。一体何度、第一王子のアインツ殿下を説得したことか。折角説得に成功しても、ヒロインが亡くなってしまえば、最初からやり直しである。しかも何が微妙に違うのか、同じ説得をしても同じ結果にならないのである。そんなこともあり、結局一年目の夏休みには間に合わなかった。
今回創世の迷宮に行くメンバーは、私の他に、新任講師のニコラス、ナターシャ第一王女、弟のレオン、騎士団長の息子のケニー。この他に王女には使用人や護衛がつく。私はシリーとリココを連れて行くことにした。イーサク第一王子は先に帰国済みである。
しかし何故こんなカオスなメンバーとなったかというと、偏にアインツ殿下を説得するためだった。
先ず私が隣国にある創世に迷宮に行く正当な理由が必要になる。アインツ殿下の婚約者の私が「行ってみたいから」で簡単に行ける場所ではないらしい。隣国だしね。
そこでイーサク王子にお願いして、以前に創世の迷宮最下層の扉を開いた功績を称え、表彰を行ったもらう事にした。勿論表彰式は創世の迷宮で行う。イーサク第一王子は先に帰国したのも表彰式の準備のためだ。
これで私が創世の迷宮に行く正当な理由ができた。だが、その時いたのは私だけではない。ニコラスとアインツ殿下もいたのである。
そうなると、二人も呼ばない訳にいかなくなり、ニコラスの同行が決定した。
エルファンド神聖国は元々彼の故郷であり、夏休みに帰郷するのに何の問題もない。もっとも、本人は余り帰りたくはなかったようだ。当初同行を渋っていた。
下手に帰郷するとこちらに帰ってこられなくなる可能性があるからだ。エルファンド神聖国はエルフ系住民の出国を厳しく規制している。
それが、本当の目的が表彰ではなく迷宮攻略だと知ると、喜んで同行すると言い出した。考古学が趣味のニコラスにとっては、興味を引かれて仕方なかったのだろう。
一方、アインツ殿下の方は、本人は同行する気であったようであるが、時期が学院二年目の夏休み、アインツ殿下にとって三年目の夏休みとなってしまった。そのため、試練の迷宮に挑戦せねばならず、とても時間が取れないため同行は断念された。
招待されたアインツ殿下が出席できないため、代わりに誰かということとなり、そこで、浮かんできたのが、ナターシャ第一王女である。アインツ殿下の名代として同行することとなった。
アインツ殿下は男性ばかりなのを気にしていたようなので、一石二鳥だったようだ。
第一王女の同行が決まると、何故かその護衛兼話し相手として、弟のレオンが指名された。
私としては、レオンとはしばらく会っていなかったので、嬉しい限りだった。
そしてケニーであるが、こちらはアインツ殿下とは関係ない。むしろアインツ殿下は反対だったようだが、ケニーは、自分は私の騎士だから一緒に行くと言い張って、無理矢理ついてくることになった。きっと本当は迷宮攻略をしたかっただけだろう。
王都から創世の迷宮まで、馬車で概ね一週間程かかる。転移魔法なら一瞬であるが、秘密にしているのでそういうわけにはいかない。
そんなわけで、私たちは馬車で移動中である。
私の馬車に乗っているのは五人、私、シリー、リココの他に、ニコラスとケニーも乗っている。弟のレオンは王女と一緒の馬車である。当初、こちらの馬車に乗る予定であったが、王女に懇願されそうなった。
王女の他には侍女と護衛の女剣士が乗っている。「女性に囲まれて、まるでハーレムね」と茶化してやったら、「姉さんにもこの苦行を味わわせて差し上げたいですよ」と死んだ魚のような目で言われてしまった。一体何がそんなに大変なのだろう。
王都を出て5日目、既にエルファンド神聖国に入っている。
「暇だな、魔物か賊でも出ないかな」
「魔物は兎も角、隣国の王族の馬車を襲う盗賊はいないでしょう」
「それもそうだな。護衛隊が馬車を取り囲んでいるものな。この陣容じゃあ魔物だって気後れするだろう」
ケニーとニコラスがフラグとも取れる会話をしている。
「襲撃だ」
外から護衛隊の叫び声が聞こえた。
それみたことか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます