5-4-2 聖女

 私はシリーと二人、教会の応接室で寛いでいる。


「はー。ヒロインを助けるために後を付けていたら、とんでもないことに巻き込まれてしまったわ」


 前回ヒロインが死亡したのは、学院外での出来事で、私の目の届く範囲外であった。

 そこで仕方なく、死亡予定の今日、シリーと二人で、ヒロインの後を付けていたのである。


「ぷぷぷ」

「シリー、何が可笑しいのよ」


「そりゃ可笑しいですよ。魔王を目指していた悪役令嬢が聖女ですよ。これを笑わず、何を笑うのですか」

「笑い事じゃないわよ。あの聖杯の力どうするの、私の魔力があれば国一つくらい簡単に消し去ることができそうじゃない」


「お嬢様が悪の国と認定すれば、できるでしょうね。国を一つ滅ぼすなんて、正に、聖女という名の魔王ですね」

「簡単に言ってくれるわね。こんなこと世間に知れたら大問題よ」


「それにしても、期せずして、聖杯が手に入りましたね。もう聖剣は要りませんから、第一王子との婚約は解消しますか」

「それは・・・。何時聖杯に見限られるか分からないから、現状を維持しましょう。というか、こちらからは何ともできないわ」


「では、そういうことにしておきましょうか」

 シリーがこちらを見ながらニヤニヤしている。


「何か引っかかるけど、まあいいわ。ところで、何とか聖女をやめる方法はないかしら」


「先ほどお嬢様がおっしゃったとおり、聖杯に見限られればいいのではないでしょうか。その場合当然聖杯は失いますが」

「そうなるわよね。聖剣が手に入る見込みが立たないうちに、聖杯を失うのは得策ではないわよね」


「それもそうですが、聖剣も聖杯と同等のものと考えるべきだと思うのです。そうなると、聖剣を手にしたお嬢様はきっと勇者になるのではないでしょうか」

「そういえば、以前、第一王子に聖剣の話をしたら、君は勇者になりたいのか、って言われたわ。あれは皮肉ではなかったのね」


「そうなるとほぼ確定ですね」

「聖女の聖杯と勇者の聖剣、どちらがましかしら」


「いっそ、両方手に入れてみたらどうです」

「魔王化に必要なければ、どちらもいらないと言いたいところよ。それにしても、魔王になるのに、聖杯か聖剣が必要っておかしくない。普通に考えれば必要なのは魔剣でしょ」


「どうでしょうね。出会った魔族を倒して配下にするのに聖剣が必要なのかもしれませんし、正義と悪は、立場が違えば正反対になることもありますからね」

「なるほどね。そう言われればそうかもね」


「ところで、聖女って周りから言われるだけなのですか、それともステータスの称号から変わってますか」

「どうだろう。ちょっと待ってね今鑑定する」


『鑑定』


「ステータスの称号が、聖女、になっているわね。あれ、悪役令嬢、は消えているのね。上書きされたのかしら」

「普通、併記されるのものではないのですか」


「最近、ステータスの称号なんか、確認してなかったから、上書きされたのか、その前に既に無かったのか、判断がつかないわ」


「ステータスの称号がエンディングに影響するでしょうか」

「影響するなら、もう、魔王を目指す必要がなくなるわね」


「ですが、その場合、悪役令嬢の称号が何故無くなったかは重要となってきますね」

「そうね、消えた原因が分からないと、いつまた復活するかも知れないものね」


「そうなりますと、引き続き魔王を目指すということでいいのでしょうか」

「リスク回避を考えると、そうならざるを得ないわね」


 元転生悪役令嬢は聖女になっても魔王を目指す。


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投稿を始めて一月になります。

ここまでお読みいただきありがとうございました。


区切りの意味で最終話ぽく書いてみましたが、話はまだ続きます。

ただ、今後の更新は週一程度と考えています。

もしよろしければ、引き続きお願いいたします。


なお、他にも二本連載をしていく予定です。

 今日の転移予報 ー スライム のち ロボット 所により 一時 勇者 ー

 かぐや姫の息子に転生したら、そこは女だけの月世界だった。これってハーレム?

気に入っていただけたら、そちらもよろしくお願いします。

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