2-11-1 入学試験
第6月、秋が終わり冬が始まる季節、ファルベス王立高等学院の入学試験が行われた。
書類選考から始まり、筆記、実技、面接と何日にも分けて試験が行われる。国中の少年少女が学院入学という狭き門を目指してしのぎを削るのだ。一般受験生は。
そう、上級貴族である私たちは、別枠で、面接があるのみである。それも入学の意思があるかの確認のみだ。
面接は集団面接の形式で行われる。私たちのグループは、私の他に、大公令嬢のトレス様、侯爵令嬢のマリー様の三人。それと、それぞれの侍女である。
私はリココを連れて面接に臨んだ。シリーでは年齢が高すぎる。
控え室で他の受験生と雑談をしていると、私たち三人の名前が呼ばれた。
トレス様、私、マリー様の順に面接会場に入る。
面接会場は、前世のような窓際に面接官がずらりと並び、入り口側に受験生の座る椅子があるというものではなく。大きなテーブルが中央にあり、右手側に三人の面接官が座っていた。男性二人に女性一人だ。私たちは左側に三人並んで座る形だ。侍女たちは、私たちの右斜め後ろに立ったままだ。
面接官は奥から順番に自己紹介を始める。
「この面接の責任者を務める学院長のワーレン=イース=ブラウじゃ」
「学院で講師をしているセリーネ=ビヤンコよ」
「王宮第二王子担当秘書官のバハト=オラケウスです」
学園の関係者だけでなく、王宮の関係者もいるのか。第二王子も入学予定だし、もっともな話か。
「トレス=セントラル=ゲルプです」
「エリーザ=ノース=シュバルツです」
「マリー=フラウムです」
こちらも順番に名乗っていく。
「お三方とも当学院に入学希望で間違いないかな」
学院長が確認をとる。
「はい、その通りです」
「はい、入学を希望します」
「はい、よろしくお願いします」
「そうですか、それでは来年からよろしく頼みますよ」
これで面接終わりだろうか?
「侍女の三人もよろしいですね」
女性の面接官が侍女たちに質問した。
「はい」
「はい」
「はい」
侍女たちが異口同音に答えた。
「分かりました。主人の名を汚さぬよう頑張ってください」
「皆さんの将来の夢、というか、なりたいものをお聞かせください」
王宮関係者が質問する。これで終わりかと思ったら、まだ続くようだ。何か面接ぽくなってきた。
なりたいものか、まさか魔王と答えるわけにはいかないし、あまり考えたことがなかったな。
「エリーザ様は答えなくて結構です」
え、どういうこと、私だけ除け者なの。
「そうですね。王国のため、国民のために働ける人になりたいですね」
トレス様が答える。
「私は、第二王子に尽くすのが夢です。将来は必ず妃に」
マリー様の言葉に熱がこもります。
「トレス様は、第二王子のことはどのようにお考えですか」
「ご立派なお方だとは思いますが、それ以上はございません」
「そうですか。ありがとうございました」
そういうことか、既に第一王子の婚約者の私に聞く必要はないわけだ。
「それでは、面接は以上じゃ、お三方はもう帰られて結構じゃ」
こうして私の学院入学試験は無事終了したのだった。
結果?勿論合格以外ありえません。
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