5-3-1 図書館

 昼休みになった。私は昨日と同様に昼食をとった後、第一王子を探すべく図書館に向かった。帝国の皇子について報告しなければならない。


 図書館に入ると第一王子はすぐに見つかった。


「殿下少しお時間よろしいでしょうか」

「おや、君の方から来るなんて珍しいね。今度はどんな厄介ごとだい」


「私が厄病神みたいなこと言わないでください。でも、今回は厄介ごとかも知れません」

 第一王子は渋い顔をする。


「人に聞かれてはまずい話かい」

「はい」


「なら奥に行こう。上級貴族だけが使える個室がある」

「そんな場所があるのですか」

「貴族というものは、場合によって、いろいろ必要になるのさ」

「そうですか」


 私たちは奥の個室に移動する。


「防音魔法がかけられているからね。中で何をしても外には聞こえない」

「何をしてもですか」

「そういう使い方もあるということさ。それで、話はなんだい」


「実は、今年入った入学生に帝国の皇子がいます」

「帝国の皇子。それは本当かい」


「ええ、私が鑑定しましたから間違いありません」

「そうか」


 第一王子は考え込んでいる。


「その皇子、何か怪しいところがあったのか」

「いえ、今のところ特に怪しい様子はありません」


 第一王子は小首を傾げる。


「特に怪しいところもないのに鑑定したのか。もしかすると、君は誰彼構わず鑑定しているのか」

「そんなこと、あるはずがございませんことよ。オホホホホ」


 第一王子に疑いの眼差しを向けられてしまった。


「君は嘘を誤魔化す時その笑い方をするね」

「何のことでございましょう。オホホホホ」


「まあいい。それより帝国の皇子についてだ」


 第一王子は真剣な表情で言葉を続ける。


「取り敢えず、怪しいところが無いのならそのまま様子を見よう。一応、私の方でも監視を付けておくが、もし何か有ったらすぐ知らせてくれ」

「わかりました」


「言っておくが、無理に探ろうなどとしないでくれよ。それから、人を鑑定するのはほどほどにな」

「そんなことはいたしませんわ。オホホホホ」


「はあー」


 第一王子が大きな溜め息をついた。


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