2-5-1 魔道具

 エリクサーの開発と並行して行っていたのが攻撃力の強化である。最終決戦でヒロインに勝たなければならないのだから重要である。

 身体的強化は勿論だが、武器の強化も行ないたいところだ。


 この世界には魔道具がある。魔道具は、魔力を込めれば、予め付与されている魔法が発動するものだ。日常生活の道具から、仕事用の道具、武具にいたるまでさまざまな魔道具が存在する。

 魔法の付与は魔道具工房が行っている。工房ごとに作成している魔道具は様々で、当然、魔法の付与方法はトップシークレットである。


 しかし、そんなことは私には関係ない。どんなに厳重に付与方法を隠しても、魔道具の現物さえあれば何の問題もなく付与方法を知ることができる。

 付与方法を知ってしまえば、模造品を作り放題である。特許権?何それ美味しいの。

 勿論、作った模造品は自分で使うだけで、他人に販売したりしない。そんなことをすれば、工房ともめるだけだ。


 だいたい、公爵家なのだからお金出してちゃんと買えと言われそうだが、公爵令嬢とはいえ、まだ未成年者の娘に、魔法が付与された武具を買うためのお金を自由に出来る筈もない。


 ということで、シリーと一緒に魔道具の作成に取り掛かる。

「とりあえず上手くできるか、身近なランプの魔道具でやってみましょう」

 まずランプを分解する。といっても構造は簡単で、発光する金属製の部品と魔石が触れ合うように台座に固定されているだけだ。この魔石に魔力を込めると、しばらくの間、金属部分が光を発する。

 魔石は、魔力を込めることにより魔力を蓄え、必要な時にその蓄えた魔力を放出することができる。魔力版蓄電池のようなものだ。


 問題となるのはこの金属部品だろう。分解した金属部品に魔力を込める。金属部品が光を発し、魔力を込めるのを止めると直ぐに光は消えた。

 まあ予想どおりの挙動である。つまり、この金属部品に『発光』の魔法が付与されているのは間違いない。

 私は金属部品に『鑑定』を掛けた。


「成る程、金属部品には、魔法陣というか魔術回路のようなものが、魔石とミスリルを原料とした顔料で描かれているわね。シリー、必要な物を書き出すから用意してちょうだい」


 シリーが早速必要な器具と材料を調達してきた。

 先ずは、魔石とミスリルを粉砕、そして膠などその他の材料と混合し魔法顔料を作成する。

 次にその魔法顔料を使用し、魔術回路を描く。とりあえず今回は紙に描いてみた。


 出来上がった魔術回路に魔力を込めてみる。

 魔術回路を描いた紙の表面が光を発している。


「成功ね」

「やりましたね。お嬢様」


 気を良くした私は、更に魔力を込める。光はどんどん強くなり、目を開けていられない程となった。

 次の瞬間、ボンという音とともに魔術回路が焼き切れた。


「お嬢様、限度を考えてください。限度を」

「いやー。限界を知っておくのも必要かと思って」

 最近MPを溜めておく必要がなくなったので、少しやりすぎてしまった。


「他の魔術回路でもやってみたいわね。出来れば攻撃魔法がいいわ」

「そう都合よく、攻撃魔法が付与された武器なんてないでしょう」

「そうよね。そう簡単にないわよね。いや、そういえば家宝の短剣があったはず。魔剣のはずだからなんらかの魔法が付与はされているはずよ」


 私は、急いで父の執務室へ向かった。


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