第6話 変態という名の紳士なのか…?

コース自動設定。そうしておけば、目的地につくまでチャットで話したり、AFKしたり短い時間とはいえ好きに使える。

城まではけっこう遠いらしい。

言いたかった事を伝える事ができていない、そんな気がしたから、私は『蒸し返すみたいだけど…』と前置きをして、文章を打つ。

『私にとって親の仕打ちを話したのは、不幸自慢をしたかったからじゃなくて…、本当は私、カリンさんと一緒に遠い所に行きたい。本当にそう思う。…でもできない…それを説明したかったんだ。そうしたらなんか…あんな風に…』

駄目だなほんとに…私。

『大丈夫。分かってるから』

カリンさんはそう答えてくれたけど、私は<話さなければよかったかも…>と後悔し始めていた。

だいたいの友人が、私の環境を知ると縁を切りたがるから。私はカリンさんともっと一緒に居たかったから…


その時、携帯にメール着信の音が鳴る。

開くと、


タイトル:カリンです

中身:アンタークチサイトへ。今撮ったけど、僕は…こんな感じ。(画像添付)


カリンさん、口数少ないと思ったら写メ撮ってくれてたのね。

スクロールして画像を見る。そこには…

「か…かわ……」

思わず絶句した。美少女の友達や美少女アイドルはいるけれど、ここまで掛け値なしの、というのは見たことがない。

『可愛すぎる!!カリンちゃん!可愛すぎる!もこもこパジャマも似合い過ぎ!モデルになれるよ!かわ、か、可愛い!ねえねえモデルやろう!応募しようよ!!』

思わずわぁわぁ騒いでしまった。

『(笑)ありがとう。でもさすがにモデルなんて無理だって』

『無理じゃないよ!AKBセンターはカリンさんのものだよ!アイドル詳しくないけど!はぁぁぁ可愛い…』

白いもこもこパジャマと、もこもこフード(うさみみ付き)をかぶった2枚。罪だ。この美しさを埋もれさせるのは人類の財産をドブに捨てるようなものだ。

焦げ茶色の髪の毛は背中の真ん中くらいまである。真っすぐで、艶のある綺麗な髪。

『ふあぁぁぁ…じゃ、じゃあコスプレ!しよ!ねえ!興味あるって前言ってなかった!?』

『えっと…うん…作りかけの衣装ならあるんだけど…』

『ジャンルは!?どのキャラ!?』

私の食いつきに若干相手が引いてる事なんてもうどうでもいい。可愛すぎる。男だなんてもったいない、チョッキンするべきだ。…とはさすがに言わなかったけど。

『薔薇乙女の…偽の第七人形…』

『キター!!私真の第七持ってる!真と偽で一緒に写真撮れるじゃない!第五も持ってるけど!』

『一緒に…コスプレ…。…ああ…会いたいな…』

『あ、待って、私の顔送る』

フォルダを漁ると、薔薇乙女の第七人形コスをした時のが出てきたから、それを送った。

『綺麗…』

『いやお世辞は結構でございます姫、メインはカリン姫だからぁぁ!』

『アンタークのイメージって白いんだよね、僕の中で…だから凄く似合ってる…』

またズレた返信。でも確かに私にとって白は特別な色だった。

一番好きなアーティストを彷彿とさせる色。舞う白い羽毛、白いガーゼの服、鳥かご。


『あっ…エイカさんからチャットきました』

『ああ…じゃあちょっと待って、設定変えるから…』

『変えるとどうなるんですか?』

『PTリーダーの所に一瞬で飛べるようになるよ。キャラの名前聞いてくれる?』

うぐ、と一瞬私は言葉に詰まる。これを言ったら乙女失格な気がする…

『??どうかした?』

『あの…エイカさんの名前…“正義のパンツマン”だそうです…』

ああ、終わった。私の人間性的ななにかが…終わった…

『個性的だね…』

『個性的、で済ますカリンさんも十分個性的だからね!?』

『僕はごく平均的な日本人のつもりなんだけどなぁ』

『変態はみんなそう言う…』

やがてエイカさんが目の前に転送されてきて一通り挨拶をしたあとで、とりあえず私達は城下町へと向かった。

エイカさん、パンツマンなのに妙に美形キャラなのが腹立つな。

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あなたはまるで、ファンタジーの登場人物のようだった。 寄葉 @2B-yorha

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