チーム紹介


「なるほどねー。そういうことかー。きみもたいへんだったんだねー」


はいいろのいきさつを聞いたフェネックは感心の声を上げた。


「でも私、本当にアイドルになりたかったんです……」


はいいろが涙を拭いながら言ったところ、アライさんに怒鳴られた。


「ばか!あきらめてどうするのだ!あきらめずに探してればチャンスはまた来るのだ!」


その表情は真剣そのものだったが、声はわずかに震えていた。

励まされて少し元気になったはいいろを見て、フェネックは口を開く。


「じゃあそろそろこっちの目的も話すねー。」

「それはアライさんにおまかせなのだ!」


アライさんは意気揚々と話はじめた。


「アライさんはな!パークから出る方法を探しているのだ!!そのカギになるのがこのちずなのだ!研究所でフェネックが見つけたやつなのだ!!これはな…えっと…なんだっけフェネック?」

「10年前にパークから脱出したフレンズが残した曰くつきのちずなんだよねー。」

「それなのだ!そいつに追随して、アライさん達もパークを出ようと考えてるのだ!!なあ、いい考えだろ?はいいろ?」


目を輝かせて同意を求めるアライさんに、はいいろは目を輝かし返して答えた。


「そうですね!すごいです…!さすがアライさんです!」


アライさんは満足気な顔をして続ける。


「でな、このちずの場所に行ったけど何もなかったのだ。それであらためてちずを見返してみると、なんと隣に文字があったのだ!これが脱出の手がかりに違いないのだ!」


アライさんは地図をはいいろに見せた。これを読んでくれ、と言った表情だ。


「ごめんなさいアライさん…私も文字は読めないんです…」


はいいろはそう言いつつもアライさんが差し出した地図に書かれた文字を見てみた。

地図には二文字の簡単な形状がそこには書かれていた。どうせ読めないと思って見ていたが、はいいろはこの文字の形を見たことがあるような気がしてならなかった。

文字をまじまじと見つめ、必死に記憶を手繰るはいいろ。いままで文字を見た機会など限られている。しばらく考え込んだ末、はいいろはついに思い出した。


「あ……これ……『こはんちかみち』の真ん中と同じ形なんだ……」

「ん?なんなのだ?」

「『ちか』です!アライさん!これ『ちか』って書いてあります!」


驚くアライさんとフェネック。


「おまえすごいな!どうして分かるのだ!?よし、早速地下に行くのだ!フェネック!!」


アライさんはろくに確認もせずに先ほどの扉を抜けて走り去って行った。


「わかったよー」


しかしフェネックは返事だけをしてそこを動かなかった。

部屋にいるのは、はいいろとフェネックだけになった。

しばらく経って気まずくなったはいいろはフェネックに尋ねる。


「あの…フェネックさん。追いかけなくていいんですか?」

「大丈夫だよー。すぐに追いつくからねー」


あまりしゃべらない相手と二人でいるのは、人見知り気味のはいいろにはやや辛いものがあった。そんな雰囲気を感じとったフェネックは、はいいろになるべく優しいトーンで質問した。


「きみこれからどうするのー?」


はいいろは少し緊張しながらも会話をはじめた。


「えっと…言いつけ通り会場の入り口でレトリバーさんたちを待ちます。」

「そっかー。でもちょっと私達について来て見る気はないかなー?面白いものが見られると思うよー?」


思わせぶりな態度のフェネックにはいいろは困惑する。


「でも…プリンセスさんと約束したから守らないと…」

「じゃぱりまんあげるよー」

「行きます。」


はいいろは即答した。



〜〜〜〜



一方、四匹組をつくった7組のチームはじょうに連れられてドーム内を並んで歩いていた。


期待に満ちた顔、自信にあふれた顔、不安そうな顔、色々な表情のフレンズがゆるい規律で行進している。

先頭のじょうは隣りにいたキタキツネと何やら真剣なトーンで話していたが、とつぜん思い出したように後ろに振り返り叫んだ。


「そうだ!おまえらチーム名決めとけよ!!」


言い終えたじょうは何事もなかったように再び歩き出したが、後ろのフレンズ達はざわざわと騒ぎはじめた。当然、『あ』たちも例外ではない。


「カラカルさん。イエイヌの『あ』です。この子はコロネです。よろしくお願いしますね。」


『あ』がカラカルにお辞儀をするのをみて、コロネも同じよう振る舞う。カラカルは軽く会釈し返して言った。


「よろしく、『あ』、コロネ。カラカルよ。それでどうするの?チーム名。」

「これは悩みますよね……」


『あ』達が目をつむって考えていると、プリンセスが口を出してきた。


「ちょっといいかしら?実はもう考えてあるのよね。」


カラカルが眉をひそめるが、プリンセスは気づかず続ける。


「ズバリPrincess&Purismよ!略してプリプリ!どう?カッコいいでしょ?!」


だが、メンバー達の反応は今ひとつであった。


「どこの言葉なの?」

とコロネ。


「うーん……私達のイメージとは違う……かな……?」

と『あ』。


「はあ?プリプリって何よ?うんこの音?」

とカラカル。


拳を握りしめるプリンセス。

彼女は理解を得ない発言の数々に憤慨して、地団駄を踏みながらこう叫んだ。


「所詮あなた達フレンズにはヒトの好みは分からないわ!黙って私の意見に従ってなさい!!私は絶対にアイドルになるから!!」


この発言を聞いたカラカルはひそめていた眉を下げ、哀れむような口調で問いかけた。


「ねぇあんたさ…友達いるの…?」

「え?」


思いもしなかった反応に驚くプリンセス。

束の間の静寂。『あ』とコロネも黙ってプリンセスを見つめる。


「な…なによ…」


ここでじょうから声がかかる。


「もうすぐスタート地点だ!!観客が大勢いるから笑顔で対応しろ!!」


じょうが目の前にある大きな扉を開けると薄暗い廊下に光が差し込んだ。

フレンズたちの目の前には陸上競技のトラックが広がっていた。

光の方に歩みを進めると観客からの割れんばかりの声援が耳に入ってくる。


「お前らよく聞いておけよ!!これがアイドルになる者に贈られる声援だ!!!」


出場するフレンズたちは皆緊張した面持ちだが、皆愛想を振りまきながらじょうについて行った。

トラックを一周し、その内側に入ってゆく。

じょうはそこにフレンズたちを並ばせると、宣言をした。


「これより!!フレンズあいどるおーでぃしょんを開催します!!!司会は私、じょうがお送りいたします!!まずは参加チームの紹介です!」


じょうは左端の先頭にいたコウテイにマイクを手渡して、自己紹介をさせた。会場に声が響く。


「私たちはチーム『ぺぱぷ』です。リーダーは私、コウテイペンギンのコウテイ、そして前からジェンツーペンギンのジェーン、イワトビペンギンのイワビー、フンボルトペンギンのふるるです」


歓声が一層大きくなる。


「よし、よく噛まずに言えたな。」


じょうはコウテイの頭をポンと叩くと、マイクを受け取り隣にいたフレンズに手渡した。


「私達は『はしりたい』よ!私チーター様と、プロングホーン、ダチョウ、トムソンガゼルの4人で、最速のアイドルを目指すわ!」


マイクは次々に隣のフレンズの手に渡り、自己紹介が済んでいく。そしてついに『あ』達の順番がやってきた。偶然前に立っていたコロネがマイクを受け取るが、プリンセスがこれをふんだくって喋り出した。


「私達は『Princess&Purism』です!プリプリって呼んでくださいね!メンバーは私ロイヤルペンギンのプリンセスと、イエイヌの『あ』、コロネ、そしてカラカルです!みんな同じアイドルを目指す『友達』です!よろしくお願いします!」


プリンセスが満足気に自己紹介を済ませると、カラカルの方を見た。カラカルは何かを言いたそうな顔をしていたがプリンセスは特に気に留めなかった。


会場から拍手が起こり、プリンセスはドヤ顔でマイクを隣に渡した。渡された秋田犬はマイクを持ってしゃべり出した。


「えーと私達は、『キタキツネサーバルイエイヌ』です。よろしくお願いします。」

彼女達が自己紹介を終えると会場の熱気が一気に上がり、声援がわき起こった。


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