チーム結成!



「ふっふっふー。潜入成功!なのだ!」


ドーム状の建物の廊下でこそこそと行動していたのは青とピンクの2匹組。アライさんとフェネックだ。


「アライさーん。こんなところで何をする気なのさー?」


フェネックが尋ねる。


「決まっているのだ!文字が読めるフレンズを探すのだ!そしてこの地図の謎を解くのだ!」


アライさんは黄ばんだ紙をピラピラと自慢げに翻した。フェネックは少し嫌そうな顔をする。


「やっぱりそのことかー。地図の場所に行ってみたけど、何もなかったじゃないかー。」


どうやらフェネックは乗り気ではないようだ。これに対しアライさんは地図に書かれた赤いバツ印を指さし力説する。


「でもアライさんは諦めないのだ!ほら!地図が示す場所の隣に文字が書いてあるのだ!これがなにかの手がかりに違いないなのだ!」


アライさんはわめき続ける。


「アイドルを目指すフレンズの中には、文字が読めるはくしきなやつもいるはずなのだ。そいつに会ってこれを読んでもらうのだ!」


アライさんはこう言うと、目の前の扉を勢い良く開け放った。

二匹で部屋の中を覗き込むが、目下に広がっていたのはただの暗闇であった。


「なんだあ……この部屋もハズレなのだ!」


アライさんが残念そうな顔をして扉をゆっくり閉めようとしたところ、フェネックがこれを静止した。


「アライさーん。なんか聞こえなーい?」


フェネックが耳をすますポーズをとる。これを見たアライさんも同じように耳をすます。

聞けば、確かにすすり泣きのような声がする。二匹は奥に進んでみることにした。

声の方に進むとアライさんは壁にもたれて泣いているはいいろを見つけた。アライさんは迷わず話しかける。


「おいお前!なんで泣いているのだ?」


そのフレンズはびくっと震え、恐る恐るアライさんを見上げ、そして言った。


「あ...あなたは?」

「アライさんはアライさんなのだ!こっちはフェネック。それで、なんで泣いているのだ?」


そのフレンズは腫れた目をぱちくりさせてアライさんの方を見た。


「アライさん…?あなたがアライさんなのですか?!」

「そうなのだ!パークの人気者、アライさんなのだ!で、なんで泣いているのだ?」

「あ、アライさん!あの。探していたんです!パークから出る方法!アライさんに聞けば分かるって!」


はいいろは前のめりになってアライさんに詰めよった。アライさんは照れながらも若干後ずさりする。


「落ち着くのだ。急に言われても困るのだ。あ!お前文字読めるか?この地図のここにあるやつ!」

「ちず?初めてみました!本当に物知りなんですね!でもどうしてここにいるんですか?こはんにいるって聞いたのに…」

「こはん?ここはさばんななのだ。あ、そういえば他のフレンズはどこなのだ?ドームのなかにはまだフレンズがいるはずなのだ。」


質問と質問の応酬で一向に話が進まない。さすがに嫌気がさしたのかフェネックは2匹の間に割って入った。


「まあまあ、2匹ともー。質問は一つづつにしようかー。君名前はー?」

「はいいろです!」


続けてはいいろはこれまでのいきさつを話しはじめた。



〜〜〜〜



一方次の部屋では。


「エトピリカ!ショウジョウトキ!トキ!スナネコ!チーム結成だ!」

「まずいわ...どんどんチームができてく」


フレンズたちは次々に四匹組を作り、じょうのもとへ向かっていった。

『あ』は不安そうにプリンセスに尋ねる。


「プリンセスさん。私達を含めて残り7匹しかいませんよ?」

「わかっているわ…って残り7匹?3匹余っちゃうじゃないの!この場合どうなるの?」


プリンセスはじょうに尋ねた。


「いい質問だ!プリンセス!4匹組になれなかったフレンズは!!その時点で失格だ!!」


じょうの言葉を聞いてプリンセスは今更焦り始めた。これまで悠長に仲間をより好みしてきたツケが回ってきたみたいだ。


状況を確認しようと『あ』達はあらためて周りを見渡す。じょうの近くには四匹組が5チームほど固まっていて、全員が体育座りで待機していた。

じょうからすこし離れたところには、先ほど別れたサーバルとカラカルが暖かそうな衣装のフレンズと一緒にいる。もう一匹余っているフレンズは、部屋の隅でつまらなそうにこちらを見ている秋田犬だった。


これらを踏まえて『あ』はプリンセスに進言した。


「プリンセスさん、部屋の隅にいる子を誘いましょう。私の友達ですから。」


プリンセスがすぐに了承したので、全員で秋田犬のところに駆け寄った。


「秋田犬ちゃん!久しぶりね。」

「はぁレトリバーか……まだ一日も経ってないでしょ。」

「ふふ。相変わらずね。」


久方ぶりの再会を喜ぶ暇もないので、『あ』はすぐさま本題に入った。


「ねえ、よかったら私達と組まない?秋田犬ちゃん一人でしょう?」

「わたしはいい。来たくて来ているわけじゃないから。不合格でも別に構わないし。」

「えと…どういう意味?」

「別に。あんたなんでまだ生きてるの?」


どう返していいのかわからなくなった『あ』は一瞬戸惑ってしてしまった。その隙に後ろから声がかかる。カラカルの声だ。


「ちょっとそこのあんた!あたし達とチーム組まない?」


秋田犬はカラカルの方をちらりと見ると、すぐに目を背け、軽くため息をついた。

カラカルは態度の悪さにまゆ毛を吊り上げた。

『あ』はカラカルが次に発言する前に秋田犬の目を見て言い放った。


「ねえ秋田犬ちゃん。なんでここに来たの?答えて。」


秋田犬はすこしばかり『あ』を見つめると、仕方なさそうに答え始めた。


「所長に出ろって言われたの。それだけ。」


秋田犬は再びため息をつくと、どうでもよさそうに天井を見上げた。

これに真っ先に反応したのはカラカルの隣にいた暖かそうな毛皮のフレンズだった。


「あ、それボクもいわれたよ。人気なんばーわんだから出ろって。」

「キタキツネすっごーい!!そういえばわたしも所長に目玉だから出ろって言われたよー。目玉なんてみんなついてるのにね!カラカルはなんて言われてきたの?」


無邪気なサーバルがカラカルに質問するが、カラカルの目は焦点が定まっていなかった。


「あ、あたしはただ……アイドルになりたくて……」

「え?」

「何でもない!サーバル!あなたはアイドルになる気はないの?」

「うーん。あまりなりたくないなあ。だって大変そうだもん!」


サーバルはヘラヘラ笑いながら言った。

カラカルはキタキツネにも同様の質問をする。


「ボクはアイドルよりげぇむを大切にしたいな」

「なによ……二人とも……」


カラカルは両隣にいるフレンズたちから目を背ける。伏し目がちになった目からは悔しさが滲み出ていたが、そのうち決意が固まった表情に変わる。


彼女は意外な行動に出た。


「えと...『あ』だっけ?あたしもあなたたちのチームに入れてくれない?」

「カラカルすっごーい!」


カラカルはきまりが悪そうに『あ』達をみる。『あ』が驚きつつも了承しようとする。

が、その前にプリンセスがカラカルの手を取り言った。


「ぜひぜひ!あなたなら大歓迎よ!これからよろしくね!」


カラカルは取られた手を振りほどき露骨に嫌そうな顔をした。しかしプリンセスはこれに気づいていなかった。

じょうの所に行くと、彼はすぐに叫び始める。


「プリンセス!『あ』!コロネ!カラカル!チーム結成だ!」


かくしてプリンセスたちは無事に四匹組を作ることができたのだった。

喜ぶ4匹をよそに、じょうは余った3匹を確認する。しばらくすると彼は信じられないことを口にした。


「秋田犬!サーバル!キタキツネ!特別にチーム結成だ!」

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