インフォメーションセンターにて

イエイヌたちはとっさに後ろに下がる。


「あの、レトリバーさん。あの白いの、何なのですか?」


はいいろは恐る恐る尋ねる。


「あ...あれは...アライさんから聞いたことがあるわ...」


レトリバーは途端に険しい顔になって、さらに後ろに後ずさる。はいいろと814番は何か異常な雰囲気を感じ取り、ごくりとつばを飲み込む。


「...ポップコーンよ。爆発する!」


冷や汗を流し、警戒しながら言うレトリバー。


「爆発!?」

「とても大きな音を出しながら、何倍もの大きさに膨れ上がるらしいわ!もっと離れて!」


3匹のイエイヌは恐怖に顔をゆがめる。

それをみた黒いフレンズはにやりと笑って、ポップコーンをつまみ上げた。

これによりさらに震え上がるイエイヌたち。


「ほれっ!くらえ!」


なんと黒いフレンズはポップコーンをレトリバー達に投げつけたのだ。


「うわああああああああ!!!!!やめてえええ!!!」


叫び狂うイエイヌたちにその黒いフレンズは追い打ちをかけるように耳元で大声を出す。


「ドーーーーン!!」

「ぎゃああああああああ!!!!ってあれ?」


生きてる。爆発もしていない。

一体どういうことだろう。


「カカカカカカカカ!!お前たち面白いな!」


爆弾を投げつけてきたフレンズは大声で笑い始めた。


「なんで...爆発しないの...?」


はいいろは震えながらも声を出した。


「カカカ。それはな、ポップコーンは時限式の爆弾だからサ!

触ってしばらくしてから爆発する仕組みなんだぞ!!」

「ひぃぃぃ!」


さらに怯えるレトリバー達に黒いフレンズは追い追い打ちの大声をかける。


「ドーーーーーーン!!!」

「ぎゃああああああああ!!!!」

「カカカカ!!やっぱり面白い!!」


黒いフレンズは、イエイヌの足元に落ちたポップコーンをつまみ上げ、814番の口元に持ってきた。


「ほれっ!喰らえ!」


黒いフレンズはポップコーンを814番の口に無理やりねじ込んだ。


「嫌あああぁぁぁ!!死ぬ!死ぬ!死にたくない!!...ん?あれ?おいしい。」


814番はポカンとした顔で、ポップコーンをポリポリと食べ始めた。


「814番ちゃん!!大丈夫!?」


レトリバーは心配しているが、814番に特に異常は見られなかった。


「大丈夫そうです...」

「カカカ、ネタバレするとな、ポップコーンは爆発させて作った料理なんだよ。だからもう爆発しないのサ!」


黒いフレンズは腹を抱えて笑いながら話した。

これに対してレトリバーは眉をひそめて言う。


「なんでこんなことするのですか?私達とっても怖かったです!」

「愚問だなー!面白いからに決まっているだろ?ウチは面白いことなら人の嫌がることでも進んでやるフレンズ。ハシボソガラスだぞ!」


ハシボソガラスとフレンズは名乗った。


「じゃあハシボソガラスさん。もうこういったことはしないでください。はいいろちゃん。814番ちゃん。行きましょう。」


レトリバーは自分のミスを棚に上げて冷たく言い放った。

イエイヌたちはカラスに背中を向けて去っていく。去り際、ハシボソガラスは後ろから声をかける。


「おいお前らー!何かフレンズを探しているんだってな!それならそこの道を左に行った先にインフォメーションセンターがあるからそこで聞くといいぞー!カカカ!」


イエイヌたちは信用ならないカラスの言葉に少し戸惑ったものの、他に行くあてもないので、インフォメーションセンターへ向かうことにした。


そのうち一行はインフォメーションセンターの前に到着した。イエイヌたちはガラス張りの建物を覗き込む。そこでは、制服を着た人間が客と見られる人間相手に対応していた。


「あの人に聞けばわかるんじゃないですかね?何か詳しそうな雰囲気がありますよ。」


814番は言った。


「そうね。『三人で』行きましょう。」


レトリバーの提案に、814番は顔をしかめたが、イエイヌは上下関係を大切にする生き物である。しぶしぶ言うことを聞いた。

センターの中に入っていく3匹。制服のお姉さんのもとに行くとお姉さんは対応を始める。


「ようこそジャパリパークへ!どうかなされまし…」「アライさんはどこにいるんですか!?」


お姉さんが言い切る前に814番が質問を始めた。少し驚き814番を凝視するお姉さん。すると彼女の笑顔はみるみるうちに消えていき、そのうち冷たい言葉を発した。


「あのねえ…ここはフレンズのための施設じゃないから。とっとと出て行ってちょうだい。」

「え…そんな…」

「ほら次のお客さん待ってるから早く出てって!あんたらに付き合ってる暇ないから!」

「アライさんの場所だけでいいんです。教えていただけませんか?」


反論するレトリバーにお姉さんはさらに語気を強めて、しかし後ろの客には聴こえないように言う。


「うるさい…!だいたいここのエリアのフレンズはみんな臭いしきったないのよ…!出てけ…!建物が穢れる…!入ってくるな…!」


イエイヌたちは、お姉さんのものすごい剣幕に圧されて、若干ゃ涙目になりながら建物をあとにした。


「大丈夫よ二人とも…きっとカラスは最初からこうなることわかっていただろうし、あの人だってアライさんの場所知らなかっただけよ…」


レトリバーはなぐさめるためにこう言った。

しばらくして、建物から先ほどまでイエイヌたちの後ろに並んでいた人間が出てきた。


「なるほどー!サーバルはさばんなちほーにいるんだなー!早速行こーう!」


彼はやたらでかい独り言を放つとすぐにどっかに行ってしまった。


「やっぱりあの人フレンズの場所がわかるんですよ…!!知っていて教えてくれないんです!」


814番は怒りをあらわにしながら言った。その時建物の屋根から声がする。聞き覚えのあるダミ声だ。


「カカカカカー!いいもん観させてもらったゼー!お前らホントに何も知らないのナ!」


ハシボソガラスだ。また笑っている。イエイヌたちはとても悔しかった。

レトリバーがカラスをキッと睨んだそのとき、またもや聞き覚えのある声がする。


「見つけました!逃げたイエイヌたちです!!」


女の研究員だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る