知らないフレンズ

「レトリバーさん。アライさんって一体誰なのですか?」


814番が興味深く尋ねる。


「詳しくはわたしも知らないわ。でも私にいろいろなことを教えてくれたの。研究所の中には絶対ない、いろいろなことを。」

「それってつまりレトリバーさんの先生ということ...?」


はいいろのつぶやきにレトリバーは反応する。


「うん、そうね。アライさんは私の先生。いろいろなことを知ってるとっても物知りなフレンズなの。」


はいいろと814番は興味津々である。


「え!例えば!?例えばどんなことを知ってるの!?」

「えと...じゃんぐる?っていうところにはキラキラがいっぱい沈んでいる池があるとか言ってたわ。」

「えー!行ってみたい!」

「ダメよ。まずは人間たちから、いやここから出る方法を考えないと。」


はいいろと814番は不服そうである。だがそのうちはいいろがひらめいた顔になる。


「レトリバーさん!アライさんに会えば出る方法がわかるんじゃないですか!?だってアライさんってなんでも知ってるんですよね?」

「816番もたまにはいいこと言うじゃない!私もアライさんに会ってみたい!」

「816番じゃなくて、はいいろです!」


レトリバーはちょっと考えてから、二匹の小さいフレンズに言う。


「そうね...悪くないかもしれない。アライさんなら絶対私たちの味方になってくれると思うわ。」

「やったー!」


こうして3匹のイエイヌたちはアライさんを探す旅に出ることになった。


一方、イエイヌたちを研究所から逃がしてしまった研究員たちは所長にこっぴどく怒られていた。


「君たちには失望したよ。研究用フレンズを逃がすなんて、絶対あってはならないことだよ。」


顔を青ざめさせる研究員たちに、所長は続けて言う。


「今日中に捕まえられなかったら懲戒免職だからね。覚悟しててね。じゃあ僕は今日ほかに仕事あるから。行くよ秋田犬。」

「はい!」


所長は秋田犬と一緒にどこかにいってしまった。


「石動さん...どうするんですか...」


女の研究員が尋ねる。


「俺は研究を続けたい。だからイエイヌたちは絶対に捕まえる。どんな手を使ってもだ。」


男の研究員は立ち上がると、女の研究員を見る。


「君はどうするんだ?」

「私も行きます。こんなジャパリパークでも、好きですから。」


男の研究員に差し伸べられた手をとり、女の研究員も立ち上がった。

研究員たちは、歩き出した。


そのときイエイヌたちはアライさんを見つける方法を考えていた。


「探すといってもどうやって探すんですか?臭いとかわかるんですか?」

「アライさんの臭いはわかるわ。でもこのあたりからは全然におわないの。だからしばらくここら辺には来ていないと思うわ。」


レトリバーは答えた。イエイヌのフレンズの嗅覚は人間よりもはるかに優れている。臭いが分かればそこから追跡できると踏んでいたがそんなに甘くはなかったようだ。


「じゃあどうすればいいのさ?816番?あんたが言い出しっぺなんだから考えなさいよ。」


代替案を出すことを求められるはいいろ。


「えぇ...?あ、あそこにいるフレンズさんに聞いてみるとかどうでしょう?」


はいいろが指さした先には小汚いフレンズが地面にうずくまっていた。


「え...何あいつ?まあいいや。816番!聞いてきな!」

「え?なんで私が...」

「いいから」

「はい...」


814番に命令されたはいいろはすごすごとフレンズに向かっていった。


「あの...ちょっといいですか」


そのフレンズはギロリとはいいろを一睨みした。


「ヒィっ...あの...あ...アライさんを知りませんか?」

「はぁ?なんだと?」

「し...知りませんよね?ね?あ...ありがとうございました!」


はいいろはダッシュで仲間二匹のもとに戻っていった。


「レトリバーさーんー!怖かったよぉ!」


はいいろは涙目でレトリバーに抱き着く。


「よしよーし」


レトリバーははいいろをなでた。


「で、なんて言ってたの?」


構わず814番が質問する。


「えと...知らないって」

「嘘!アンタ質問も何も全くしてなかったじゃない!」

「ひぃ...ごめんなさい...」


イエイヌのフレンズは嗅覚だけでなく聴覚も優れている。はいいろとそのフレンズの会話は814番には筒抜けだったのだ。


「あー!使えない使えない!もう一回行ってきてよ816番!」

「ねぇ。」


レトリバーは814番の腕を掴んだ。急なことに驚く814番。


「レトリバーさん...どうしましたか?」

「あなた...はいいろちゃんに何かされたの?」

「いえ...別に...」

「じゃあなんではいいろちゃんに辛くあたるの?」

「そんなこと...どうでもいいじゃないですか...」


814番は地面を見ながら言った。


「3人で聞きに行きましょう?ね?」

「は、はい」

「ッチ。わかりましたよ。」


うずくまるフレンズに近づくイエイヌたち。そのうちレトリバーが声を上げた。


「あのー。ちょっといいですか?」

「邪魔をするな!!これは私のだ!」


その黒いフレンズは手を広げ大声をあげて威嚇する。


「...ひぃ。」


814番とはいいろは怯えだす。

これとは何なのだろうか。はいいろが黒いフレンズの足元を見ると、白くてふわふわしたものがたくさん転がっていた。


「!!危ない!離れて!」


レトリバーは二匹の腕を掴み後ろに下がった。

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