第183話 久しぶりの出会い


 サンドラ女王の視察を兼ねた観光は無事に終了した。


 その後は、軍の上層部との話し合いが始まるらしい。人類はエルフと同盟を結んだ。そこからサキュバスとも同盟を結ぶことができれば、大きな前進だ。


 と言っても、サキュバスはその性質上、色々と問題は生じるだろうが……。


「シェリー」

「ユリアじゃない」


 基地の中でばったりと出会うのは、シェリーだった。


 別に久しぶりというわけではないのだが、なんだか長い間あっていなような感覚だった。


 そうして二人で並んで歩みを進める。


「サキュバスの件。うまくいったみたいね」

「とりあえずはね。まだ問題は色々とあると思うけど」

「そうなの?」

「まぁ……あくまでサキュバスだからね」

「あぁ……そういうこと」


 シェリーはうんうんと頷く。


「で、実際どうだったの?」


 急に立ち止まると、じっと半眼で見つめてくる。


「な、なんのこと……?」

「サキュバスの国に行ったんでしょ?」

「うん……」

「襲われたりしなかったの……?」


 よくみると、その頬はわずかに赤く染まっていた。


「いや別に……ただ」

「ただ……?」

「その視線が怖いというか。獲物を狙っている魔物みたいな感じかな」

「あぁ。それはちょっと怖いわね」


 納得した様子のシェリー。


 よくみると、彼女は体がしっかりとしてきたように思える。女性的というよりは、少しだけ男性的というか。がっしりとしてきたように思える。


「シェリー」

「何?」

「ちょっと大きくなった?」

「……セクハラ?」


 胸をバッと隠すその様子を見て、思わず失言をしてしまったのだと理解する。もちろん僕は、すぐに弁解をする。


「ち、違うよ! その、体つきが良くなったな……と思って」

「……セクハラ?」

「だから違うって!」

「はいはい。ちょっとからかっただけよ」


 口元に手を持っていき、クスクスと笑うシェリー。


 だが、その右目の眼帯は未だに残っている。いつものように思えるが、シェリーには確かな傷が残っている。


 それはあの時の戦いを想起させる。


「ねぇユリア」


 ふと、窓越しに空を見つめる。


 黄昏の光を見て、彼女は何を思うのか。


「私は絶対に復讐を果たすわ」

「うん……」


 僕とは視線を合わさずに、淡々と告げる。


「だからね。私はもっと成長しないといけないの」

「そうだね。ベルさんを超えないといけないね」

「えぇ。先生を超えることができなければ、私はあの魔人に勝てることはないと思うの」

「うん。でもきっと、シェリーならできるよ」

「そう思う?」


 視線が交差する。


 それはわずかに不安で揺れていた。


 だから僕は、思ったことを口にする。


「できるよ。シェリーならきっと、できる。僕はそう信じているよ」

「……相変わらず、ユリアの言葉は重いわね」


 そうは言うが、シェリーは微笑んだ。


 そうだ。彼女ならきっとできる。


 そうして僕らはきっと、青空にたどり着くことができるだろう。

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