第140話 May her soul rest in peace-どうか、安らかに
葬儀はすぐに行われた。ベルさんの遺体は一旦解剖に回されたものの、すぐにそれは終了し3日後にはその遺体は棺桶の中に入っていた。
全員が喪服に身を包み、教会に現れる。
ベルさんの葬儀は、かなり多くの人間が集まった。主にそれは対魔師だが、ベルさんにお世話になった人たちはかなり多かったようだ。
僕が知らないだけで、ベルさんは今まで数多くの対魔師と関わりを持っていたのだと、改めて知ることになった。
そして僕が教会の中に入ると、そこにはちょうど先輩が視界に入る。
「ユリア、疲れてない?」
「いえ僕は特に……先輩の方こそ、あの後の処理などありがとうございました」
「こっちはいいのよ。でもユリアとシェリーは……辛かったわね。眼の前で……見たんでしょう?」
「……はい。僕が見た時にはすでに、ベルさんは相手の刀に貫かれていましたから。でももう少し早く着いていれば……」
「そんな仮定、しても仕方ないって……分かってるでしょう?」
「……はい。もちろんです。みんなが最善を尽くしました。だからこうして、人間は黄昏の大地を取り戻せたんですから」
そう。僕らの作戦は成功したのだ。あれから残りの魔物を全て狩り尽くし、僕らは黄昏危険区域の一部を自分たちの領土にすることが可能となったのだ。
その朗報は結界都市中に周り、大きなセレモニーも開かれる予定だ。
もちろんその立役者となった特級対魔師の面々は出席するのは当然なのだが……それよりも前に、僕らはベルさんの葬儀に足を運んでいた。
空気が、重い。
至る所で、涙を流し、洟をすする音が聞こえる。
ベルさんはこんなにも多くの人に慕われていたのだ。口下手ではあったけれど、彼女は面倒見のいい人だった。それはシェリーとの関係やリアーヌ王女との関係を見れば容易にわかる。
思えば、僕が出会ったのもシェリーが自分の戦闘スタイルに悩んでいる頃だった。その時にベルさんと出会い、シェリーは特級対魔師に至ることになった。
シェリーには秘剣を伝え、そうして僕らにも多くのものを残してベルさんは旅立って逝ったのだ。
「ユリアさん……」
「リアーヌ王女……」
真っ黒な喪服に身を包んで現れたのはリアーヌ王女だった。きっとベルさんの死を誰よりも悲しんだのは彼女だろう。ベルさんとリアーヌ王女が家族以上の厚い絆で結ばれていることは周知の事実だ。
でもその目は未だに赤く腫れ上がっているも、どこか晴れやかで澄んでいる
「昨日は本当に、ありがとうございました。ユリアさん」
「いえ……無礼な振る舞い、大変失礼しました」
「構いません。あの時の私には、あれくらいしないと分かりませんでしたから」
「そう言っていただけると、助かります」
僕とリアーヌ王女はそう言葉を交わす。そして隣にいる先輩も少しだけ目を逸らす。昨日、何があったのか。それは少しだけ時間を遡ることになる。
◇
「……」
結界都市に戻り、今回の作戦に参加した対魔師は数日ばかり休暇をもらうことになった。各拠点の維持や、取り戻した大地のことは他の対魔師が色々としてくれるらしい。まぁ、特級対魔師は戦闘を行うのが役目だ。それが終わった今、身体をこうして十分に休めることも仕事の一つだ。
そんな中、僕は自室にいた。
夜。黄昏の光がない、漆黒の闇が支配する時間。
ベルさんが亡くなってから、2日。そう、もう2日も経ってしまった。
僕の涙は、あの時に……シェリーと共に流した際に枯れ果てた。もうベルさんの死を悼んで流すことはない。だがそれでも思い出すのだ。ベルさんと過ごした日々を。決して長い付き合いではなかったけれども、確かな思い出は心に残っているから。
僕はベルさんにはお世話になった。そのことだけは心にずっと刻まれている。今回の作戦でも、同じ隊でそれも同じ最前線でずっと一緒にいた。
想うことはある。ありすぎるほどだ。でも僕らは彼女の死を乗り越えなくちゃいけない。それこそが死を背負うということだから。
人の死に囚われてはいけない。前に進むことこそが、僕ら人類にできる最大限のことだ。
「……そういえば」
ボソリとベッドで仰向けになりながら、呟く。
リアーヌ王女はどうしているのだろうか。
あの時、ベルさんの遺体をはっきりと認識すると彼女は泣いていた。それこそ、普段では絶対に見せないような風に取り乱して。
それは知ってるも、僕はそっとしておいた。
それは気遣いなどではなくて、なんて声をかけていいか分からなかったからだ。
そんなことを考えていると、ちょうど扉がノックされる音が耳に入る。
コン、コンコンと少し遠慮しているような音。
もしかしてこれは……そう思って扉を開けるとそこにいたのは、リアーヌ王女だった。しかしそれは普段とは違う。そのありえない格好に、僕は声を上げて驚いてしまう。
「……!? ど、どうしたんですか!? その格好!」
「……」
僕が驚いていると、そのままズルズルとベッドに引きずられるようにして押し倒される。
僕の上には、ネグリジェ姿のリアーヌ王女がいた。
下着は完全に見えているし、その豊満な胸も、妖艶な脚も、腰も、全てが見えている。
その姿から察するに、これから先に彼女が行おうとしていることは容易に推測できた。
「ユリア……今は黙って……私と……私と身体を重ねて……ね? 分かっているでしょう……?」
その双眸には生気が宿っていない。その言葉にも、生気などない。
ただただ、亡霊のような彼女は完全に解きほどいている髪の毛を搔き上げると、その静謐な状態のまま僕の上に身体を乗せてくる。
その大きな胸が、そして柔らかい体が僕に押し付けられる。
こんなことをされて、抗える男がいるのだろうか。僕だって男の端くれだ。そういう欲はある。こんなにも魅力的な女性に、こんな風に誘われて悦ばない男はいないだろう。いないと思うが、僕は違った。
ただただ悲しかった。ベルさんがいなくなって、その悲しさを埋めるために身近な男にその純潔を捧げようとするリアーヌ王女に同情した。
こんなにも追い詰められている彼女にすべきことは、その要望を叶えて互いに慰め合うようにして快楽を貪ることだろうか。
いや、違う。それは決して違う。それはきっと刹那的な快楽しか生み出さない。互いの心に残る傷は別の意味で、残り続ける。それは人の死を想い続ける痛みではない。ただ情けない自分に対する自己嫌悪でしかない。
その先にあるのは、深く残る毒のような慢性的な痛みが、永遠に身体に刻まれる結果しか残らない。
そんなものは僕にも、彼女にもいらない。
ベルさんの死を、そんな風に扱ってはいけない。
「ユリア……」
「……」
迫る唇は、すでに接触しそうなほどであった。
だが僕はそれを毅然として拒絶する。
無理やり身体を起こすと、そのままリアーヌ王女をベッドに組み伏せる。一見すれば僕から襲おうとしているようにも思えるだろう。だが違う。これは彼女を思い留まらせるためにしていることだ。
少々手荒になったが、仕方がないだろう。
「……きゃっ!!」
「リアーヌ王女……いや、リアーヌ。先に謝っておくよ、ごめんね」
「……え?」
パシン、と彼女の頰を叩く音が室内に響く。かなり力を入れたから、彼女の頰は真っ赤に染まっていた。その双眸と同じように、真っ赤に。
彼女は呆然とした様子で、信じられないという
僕だってこんなことはしたくない。人に暴力を振るうなんて、最低の行為だ。この行為はどう足掻いても正当化はできない。僕は最低だ。でもそれでも、伝えたいことがあった。失意の底に沈んだ彼女に伝えることがあるんだ。
「君はこんなことをして、満たされると思っているのか?」
「……だって、だってッ!! 私にはもう……ベルはいないの!! もう……いないのよ!? だから縋ってもいいじゃない!? 一緒に流されてもいいじゃないッ!!? お互いに傷口を舐めあうように、快楽を貪って忘れたいじゃない!? 耐えられないのッ! ベルがいない世界が、私には耐えられないッ!!」
「……そうだとも。耐えられないさ。だから現実から逃げる。わかるよ、理解できるよ。でも僕は言うよ。敢えて厳しい現実を」
「……やだ、やだ、やめてよ、ユリア。ねぇ、あなたは優しい人でしょう?」
零れ落ちる涙に同情などせずに、僕は凍りついた瞳でリアーヌ王女に現実を突きつける。
「優しい? 僕は優しくなんかない。君に情けなんか……かけない。リアーヌ、立ち上がれ。君にはその立派な脚があるじゃないか。進めるんだ、僕らは。たとえどれほどの悲しみに支配されても、僕らは進まなくちゃいけない。僕も君も、もうただの人間じゃない。この双肩にはあまりにも大きな責任がのしかかっている。たかが一人、数人、数百人、対魔師が死んだ程度で立ち止まっていい立場じゃないんだ」
「たかが一人!? ベルの死を、そんな風に思っているのッ!!?」
「……そうだ。彼女は今まで死んでいった人類のたった一人に過ぎない」
「そんなことッ! そんなッ! だって……だって……ベルは、ベルは……」
反論しようにも、その声は徐々に小さくなって涙が際限なく零れ落ちる。
そんな様子を見て、僕は自分の心が締め付けられるのを感じる。
僕だって、言いたくはないさ。非情な現実を突きつけるような真似を、したくはない。
シェリーの時と同様だ。僕だって、綺麗事を言いたい。ベルさんの死を互いに嘆きたいさ。でもそれは許されない。
僕らは、毅然として進まないといけない。
こんな姿は、他の人間には見せてはいけない。
だって僕らは、そういう存在になってしまったのだから。
「リアーヌ。一緒に立ち上がろう。ベルさんはもういない。でも僕はいる。先輩だって、シェリーだって、みんな君の仲間だ。戦友だ。戦おう、この先もずっと。黄昏の果てに青空にたどり着くまで」
「……そんな、ベルのいない私なんて……そんな……」
「……ベルさんは信じているよ。絶対に君が立ち上がれることを」
「……そんな、私は……私は……」
僕は
もちろん中には目を通してはいない。でも僕宛の遺書には、リアーヌ王女をどうか頼むと、まだ弱い彼女が立ち上がるには周りの支えがいると、そう書いてあった。
僕はその言葉に従った。ベルさんはこの戦いで死ぬことを想定して遺書を残していたわけではないだろう。だが万が一に備えて残したそれは、確かに僕らの心に刻まれる。
「……これは?」
「……ベルさんからの遺書だよ。いつ渡そうかと思っていたけど、今見るといい。そして知るんだ。彼女の最期の想いを」
「……」
それを受け取ると、手紙を開いて読み始める。その途中、口に手を当てて嗚咽を漏らさなようにするも、無駄だった。
リアーヌ王女はさらに涙を流し、嗚咽を漏らす。
それでも最期まで、読み切った。そして大切そうにそれを折りたたむと、彼女は手紙を抱きしめるようにして胸に抱く。
「ベルは……信じていると」
「はい」
「……たとえベルがいなくなったとしても、私は立ち上がれると。そう……信じているのだと。そして待っていると。青空の先で……待っていると、そう言っていました」
「……はい」
「ははは……ベルってば、過大評価よね。私の弱いところ、全部……全部知っているのに……どうして、こんな……無茶なことを言うの?」
「分かっているでしょう。あなたは成長できると、再び立ち上がれるとずっとベルさんは信じているからですよ。死して尚、ベルさんは信じていると思いますよ。きっとリアーヌが、前に進めるようになると」
「……私、前に進める?」
「はい」
「ベルがいなくても、ちゃんとやれるの?」
「やれます」
「そう……そう……」
「はい。絶対に、大丈夫です。あなたは強い人だ。その弱さを自覚して、前に進めます。僕も側にいます。だから……一緒に進んでいきましょう」
「うん……うん……」
リアーヌ王女はゆっくりと僕に抱きついてくる。
でもそれは先ほどのような
ただその暖かさを確かめるように、再び涙を流した。僕もまた、抱き締め返すも……少しだけ涙を流してしまった。
あぁ。弱いとも。僕も、そしてリアーヌ王女も弱いさ。
でもその弱さを知って、前に進もう。弱さを認めて、強く
「……」
しばらく抱き締め合っていると、リアーヌ王女がそっとそれを解いて僕の真正面にやってくる。
にこりと微笑む姿に、もう翳りはなかった。
確かにその悲しみはきっと、永遠に続くだろう。でも今はその悲しみも飲み込んで、前に進めると……そう確信している眼だった。
「……え?」
「……」
その口づけには反応できなかった。惚けていたわけではない。ただ呆然と、僕の意識に入り込むようにして、互いの唇が重なる。
「ユリア。私は……ベルのような、強い人になる」
「……そうですか。きっと、きっとなれますよ」
そのキスは彼女の誓いだったのだろうか。だがこうして立ち上がる意志をみて、僕はわかる。ベルさんの意志は、確かに皆の心に引き継がれているのだと。
◇
リアーヌ王女が出て行き、僕は誰かがまた扉の前にいるのを感じ取った。
「……先輩、ですか?」
「ユリア……リアーヌは大丈夫だった?」
「見てたんですか?」
「正確には、つけてた……ね。ま、中の様子までは見てないわよ。会話は聞いてたけど」
「そうですか……」
見られていないのは幸いだが、なんというか……色々な感情が僕の中に渦巻いていた。そんな矢先、先輩はあることを提案してくる。
「ねぇユリア、ちょっと涼みに行かない?」
「……いいですよ」
僕らは二人で並んで、外に出て行く。そうしてたどり着いたのは、この都市の展望台だった。今は真夜中で誰もいないが、星々の光が悠然と輝いていてとても綺麗だった。
黄昏に支配されている世界に唯一残っている、昔と変わることのない景色。それこそが、この夜の煌きだ。悠然と輝く星々を見つめ、この世界の美しさを改めて実感するも……それは一面的なものでしかない。
世界は依然として、黄昏に支配されている。そうして僕らは、この黄昏で死んでいった人々のためにも、戦い続ける必要があるのだと……そう心に刻む。
きっとベルさんは見てくれているはずだ。この星のどこかできっと、この輝かしい空から僕らのこれからの軌跡を追いかけてくれているはずだと。そう僕は、信じたかった。
そんな風に物思いに耽りながら、二人で歩みを進めて……僕らは立ち止まる。この第一結界都市を一望できる、この展望台に。
――きっと、先輩が言うのはあのことだろう……。
そんな予感が僕にはあった。そうしてしばらく黙っていると、先輩はゆっくりと言葉を紡ぎ始める。
「……ユリア、私は言ったわよね。戻ってきたら話があるって」
「はい」
そのことを言うのは予想していた。
この作戦が終わったら、話があると。それはもしかしたら……と考えるも、次に続ける言葉までは、わかっていなかった。
「……その話ね、延長するわ」
「延長……ですか?」
「えぇ。私たちが戻ってきたらじゃない。この世界に、青空が戻ってきたらその時はちゃんと言うわ」
先輩が僕の目の前に立つ。彼女は涙を流しながら、僕の手を握ってそれを頰に持っていく。僕もまたそれを許したまま、その涙が流れ出る双眸を見つめる。先輩が泣いている姿は、今まで見たことがない。これが初めてみる、彼女の涙だ。
ベルさんの死を知った時も、「そう……死んだのね、ベル……」そう呟いただけだった。
だが今はこうして、僕の手を握りながらその涙を流し続ける。ベルさんとエイラ先輩は、仲が良かった。世話焼きのベルさんに文句を言いながらも、どこか楽しそうに笑う先輩。そんな光景を幾度となく見てきた。先輩にとってベルさんは、とても、とても大切な人だったのだろう。
そうして流れ出る涙を僕は指先で掬う。
この涙は、ベルさんを想ってのものだ。彼女は僕らに本当に、本当に多くのものを残して逝った。それが人々の心に残ると考えての行動ではない。ベルさんは、後輩たちのために世話を焼き、そして僕らにその立派な背中を見せ続けていたのだ。
その背中に憧れないものはいない。
多くの者がベルさんのように気高い対魔師になろうと、自分もあんな対魔師になるのだと、そう思い描きながら、僕らは戦ってきた。もちろん戦う動機はそれだけではないが、ベルさんが僕らの心の中に残っているのだけは……間違い無かった。
僕はグッと心にその意志を刻み込むと、先輩の両手をしっかりとつかんで、こう返事をした。
「……わかりました」
「ベルの分も、私は戦い続けるわ」
「えぇ……戦いましょう。この黄昏の果てにある、青空にたどり着くためにも」
「うん……」
ぎゅっと手を握りしめる。そうして僕らはこの満天の下で、ベルさんの死を悼むのだった。
けれど、互いにもう……これ以上の涙は流れなかった。
◇
葬儀。僕らは棺桶の中にいるベルさんの上に花を乗せていく。彼女のその顔はまるで安らかに眠っているようだった。それこそ、すぐに起き上がってきそうなほどに……。でもそれは決してない。ベルさんは死んでしまった。魔人との戦いに敗れて……その命を黄昏の大地で散らしてしまったのだ。
「ベルさん……どうか、安らかに」
そう言葉を告げる。それから多くの対魔師がやってきて、次々と花を添えていく。もちろん、特級対魔師たちも全員いた。涙を流している人もいれば、何かを我慢するようにしているような人もいた。その中でたった一人、灼けるような意志を灯した者がいた。
「先生……復讐は、私が必ず成し遂げます。だから見ていてください。青空の果てで……」
それはシェリーだった。もう涙など、とうに枯れているのだろう。シェリーの目には確かな意志が宿っているが……彼女の右目には眼帯があった。
その傷はあの魔人、名はアルフレッドというらしいが、そいつにつけられたものだ。感情的になり、突っ走った結果に受けた傷。それは完全に眼球を縦に切断しているものだったが、どうやら完全に元の状態にまで回復するらしい。それはシェリーが魔族の血をその身に宿しているからだ。
「今回ばかりは感謝しないとね、この身体に……」と、彼女は言っていた。
そうしてベルさんの遺体が埋葬される。教会から運び出され、数多くの人間の涙の中にありながら、それは厳格に行われた。僕がその様子を見つめている
「ユリア」
「シェリー、体調は?」
「もう……大丈夫よ。それよりもあの魔人、出会ったら私に譲って欲しい」
「復讐するんだね」
「えぇ。先生の後は、すべて私が引き継ぐわ」
「わかったよ」
「ありがと」
「ねぇシェリー」
「なに?」
「ベルさんはさ……今、どこにいるんだろうね」
「……きっと青空の先で、待っているわ。先生は最期にそう言ってたもの」
「……そうだね。きっとそうに違いない」
空を見上げる。そこには紫黒の空しか映っていない。たとえどれだけの人間が犠牲になろうとも、これだけは変わりはしない。だがそれでも僕らは……この黄昏の空を、どこまでも澄んだ青空に変えるまで戦い続けるのだろう。
死して尚、その意志を他人に引き継いでもらって。
いつか誰かが成し遂げてくれると、そう信じて死んで逝った仲間のためにも僕は、僕らは前に進み続ける。
そして、そのいつか誰かが……今の僕らであるように。
そう願った――。
◇
第三章 Sacrifice and obligation-犠牲のその先に 終
幕間 Drinking and then Interaction-戦友に、別れを 続
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