第65話 特級対魔師 VS 特級対魔師
「さて、と。ギル任せても?」
「了解した。先に行くのか?」
「あぁ。ユリアくんを追う必要がある。幸い、彼の痕跡は確認済みだ」
「承知した。では、ここは俺たちが食い止めよう」
サイラスはギルにそう告げて、この場から去ろうとする。もともと、空間転移してきた特級対魔師たちだがそれはクローディアの魔法に逆らわないからこそ皆ここにいる。全員は彼女が魔法を発動した意図を理解し、その上でここにやってきたのだ。というのもあの場で戦えば、被害が甚大なものになってしまうからだ。この結界都市のためにも基地内部で戦うわけにはいかない。しかし、外に出てきてしまえば、もう遠慮などない。
全員はすでに戦闘態勢に入り込んでいる。そしてサイラスは、ユリアを追うべく行動を開始するが……もちろん、それを逃がすベルではない。
「……行かせない」
サイラスの隣にはすでに抜刀したベルがいた。それは側から見れば空間転移に見えるかもしれない。しかしそれは物理的な移動速度を極限まで高めた、純粋な身体技能である。そんなベルの二つ名は、
そんな彼女が魔法を使い、身体強化を重ねればそこらへんの有象無象では
話にならない。だが、今彼女が立ち向かっているのは人類最強の男……と思っていたが、彼女の剣はギルのクレイモアによって受け止められていた。
「では、任せたよ」
最後にそういって、サイラスはその姿を消した。もちろんそれを追おうとする、特級対魔師の面々だがそれが許されることはなかった。
向かい合う特級対魔師たち。すでに賽は投げられたのだ。
「ベル、落ち着け。どうして、ユリアが犯人じゃないと言える? そもそも聴取にも応じないとはおかしいだろう。それを拒否して、逃げる。その逃亡に加担するお前もまた、裏切り者と見なされて当然だろう」
「……これは罠……ギル、すでに状況は手遅れ……だから、戦うしかない……私は、ユリアくんとリアーヌ王女を引き合わせる必要が……ある……」
「ベル。分かっているなら、理由を話してくれ。そうじゃないと、俺はお前を斬ることになる」
「私は……特級対魔師を……まだ疑っている。ここで……話すわけにはいかない……の……それに、ふふっ……」
不敵に嗤うベル。それを見て、ゾッとするギル。これは、まさにあの剣姫の顔だと思い出したのだ。
「……ギルに私が、斬れるの?」
圧。それはギルの真上から生じたものだった。話し合いをしているというのに、ベルの剣撃は容赦なくギルに襲いかかったのだ。問答無用と言わんばかりに。その行動を見て、すでに戦いは必至。
「ベル、時間稼ぎありがとう」
「エイラちゃん……いけるの?」
「この緊急事態にやらないわけにはいかないわ……」
そして世界は氷に支配される。
「――
顕現するのは見渡す限りの氷の世界。地面はすべて凍りついていき、全ての準備が完了する。
そう。今の攻防、さらには会話すらも囮。全てはエイラの
「イヴ、あんたも
「……エイラので十分」
「んなわけないでしょ。相手は特級対魔師よ。本気出しなさい」
「殺しちゃダメなんでしょ?」
「簡単に死ぬなら特級対魔師なんてやってないわよ」
「……分かった」
エイラはイヴにそう促すと、彼女もまた
「ぐっ……!!」
そう声を漏らした時には、すでにイヴの
イヴは正真正銘の魔法の天才であると。
「――
イヴが地面に手をつくと、すでに凍りついている地面から次々と人形が生成される。だが真価はそれではない。イヴはエイラの
だが、今回はエイラの
「あんた……まじでイかれてるわね……」
「……お褒めの言葉、ありがとう」
二人でそう言葉を交わしている間にも、すでににらみ合いの状態。互いにジリジリと距離感を測り、対立していた。
そして特級対魔師同士の戦闘が幕を開けた。
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