4.説明拝受。
「このゲームには、魔力とか、そういうたぐいのものはありません。僕は魔法使いでもないし、スピリチュアルな、力もありません。」
目の前の音歌が続ける。
「先ほども、申し上げた通り、僕は、水先案内人でしかないんです。彼氏さんを忘れたかったもしれないし、自分の人生を降りるべきかもしれない。もしくは、その両者を行わなかったほうがいいかもしれない。また逆も然り。でも、あなたは望んだんだ。彼氏さん。進一郎さんを忘れることを。」
「あのぉ。さっきから、進一郎とか、彼氏がどうのこうの言ってますけど、私、婚前処女なんです。」
「そんなこと、最初から知ってます」
うぐ、、、。
改めて言われると、ぐさっとくるものがある。
「ですから、あなたが、処女だろうが、ジョジョだろうが、関係ないんです。」
セックス・ピストルズ!!!!
こいつ、なんかヤバイ、、、。
「最初から、彼氏がどうとか、いたとか居なかったとか、本当、どうでもいい。マジで。もちろん、あれですよ。付き合ってください!とかも、無いです。僕、婚約者いるんで。ただ、あなたに言いたいのは、このゲームで、見なきゃいけないのは、現実です」
「現実、、、?」
「いつまで、こんな悪ふざけするんですか。占い師をナメないでください。最初から、あなたは、誰も信じようとしていない。自分以外の人間は、全て脇役だ。そこら辺の突っ立ってる木の役の方が。まだマシ。役割を与えられてるから。僕は、一目でわかりましたよ。あなたが僕の婚約者だって」
えっ。聞き間違えかな?
「誰?……が、婚約者って?」
「もう一発行きます?」
軽く右手を振り上げるモーションをした。
いや、だから、それが、わからないんだって。
「婚約されて、いるんですか?」
「はい。僕とあなたは、婚約しています」
「いやいや、そんな口車は、、、」
言い切る前に、音歌が、目の前の男性が、私にキスをしてきた。
「思い出しましたか?白雪姫」
「いや、その、絶対的に、人違いです」
「世の中に絶対なんてありません」
「なんなんすか、いきなりキスして、気持ち悪っ」
「本当に、本当に、僕のこと覚えてませんか?」
……。
「図書館で、ぐりとぐらのチーズについて、考えた時、マニュアル車に乗りながら、司馬遼太郎の峠を読んだり、数学について、語り明かした事。幸せって思いがあるから心はそれに酔いしれていたから、自分は、7年間耐えることができました」
……。
「あと、このゲームをしたことを、思い出せませんか。これ、あなたが考えたんですよ」
沈黙しかできない。今はただじっと、目の前の男の前にある、MARIAのカードを見ている。
不安な私を、察しているのか、カードに映ったMARIA様は、微笑んでいる。
目が笑っている。慈悲に満ちた表情だ。
数学以外にも、好きな分野があった。
美術と心理学だ。
多摩美に行くか、数学で東大を目指したかった。本当はどっちかに行きたかった。
ただ、親が許さなかった。
家が近いという理由で、一橋大学へ決めた。
私の本意ではない、
テキトーに、一般教養科目を早々に終え、
暇な時間は、数学の研究所を読んでいた。
ゲーム理論、清水薫、北野大、アンドリュー・ワイルズ、ポアンカレ予想、岡潔、等差数列、、、。
とにかく、数学への愛が止まらなかった。
彼氏なんて、できたことないし、目も合わせたこともない。
自分で、絵を描いて、ゲームを考え、イラストを描いた。
ルールも、いかにシンプルにするかを考えに考え、今、目の前にいる男とやったゲームを、やった。
あ。
だんだん、思い出してきた。
「ね。思い出してきたでしょ」
うん。
「と、いうか、これをみて、何も思わないと思って、相当凹みましたよ」
そういうと、目の前の男の人は、免許証を出してきた。
「ここに書いてあるでしょう?葵進一郎って」
あ、、、。
「現実を、受け入れたくなかったんですよね。8年前、婚前旅行で行った、無差別殺人事件を、受け入れられなくて」
そうだった。。。
「私と、あなたの家族、ほとんど、いなくなりました」
ごめんね。ごめんね、
「でも、どうしても、あなたに会いたくて、僕は生まれ変わったんだ。占い師の音歌として」
うん。そうだった。
大学時代思い出す、目の前の男性は、間違いなく、あの時あった彼だった。
「今日、多分、あなた来るだろうなぁと思って、用意してきました」
え?
「これ、受け取ってくれませんか?」
赤いローズが、目の前に現れた。
断る理由はない。
「はい」
婚前旅行でも、もらったよね。
再び言わせて、あなたのこと、あいしてます。
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