120話 神刀

 片付けてから五分後、複数人の足音がこちらに向かって来るのを察知した。


「来たか……」


 姿が見えると、そこにはギルバートと執事たちがいた。


「いつでも来いよ。相手になってやる」


 俺は手を使い挑発のポーズをとる。

 すると、何人かの執事がこちらへ向かってきた。


「遅え!」


 俺は詰められる前に逆な詰め、とりあえずは目の前の執事を気絶だけさせるためにアッパーで脳を揺さぶる。

 そして一人目の執事は為すすべもなく昏倒した。


「まずは一人だ」


「敵は強い!包囲網を囲もう!」


 あの女性が全員の指揮をとる。

 包囲網はいい案だが、相手が良くないな。これぐらいの力量で問題なくここにいる全員に勝てる事が分からなかったのかなぁ?

 まあそっちがやる気なら俺も普通に行くとしよう。やりすぎないようにな。


「〈転移〉」


 そして俺はその包囲網を楽々と脱出する。

 飛んだ場所はある執事の後ろだ。


「はぁっ!」


 俺はそこから回し蹴りを放ち、一時退却する。

 その執事は前方に吹っ飛び三人を巻き添えにして奥の壁にぶつかった。


「これで五人!」


 そこから俺の快進撃はさらに続いた。

 転移で様々な場所に移動し、不意を突きまくる。正面からやったら加減を間違えるかもしれないから、奇襲が俺のスタイルには合っている。

 まあ正面からでも負ける気はしないけどな!


「〈魔法剣〉!」


 魔法剣とは自身の魔力を剣の形に実体化するスキルである。魔力を実体化する為、殺傷能力は少ないが。

 そこで俺は水の魔法剣を作る事にした。これが一番マシだ。火は熱いし、風は手が切れるし、土に至ってはもはや鈍器と変わりはない。

 水は他の三つよりも優しいからな。まあ当てれば意識が飛ぶレベルの衝撃は襲うが。


「いくぞ!」


 そう言って俺は一気に距離を詰め、魔法剣を下段から振り上げる。


「ぐは……っ!?」


 攻撃を受けた執事を切られた場所からものすごい衝撃が襲い、意識を刈り取った。

 そして次のターゲットを潰しに俺は駆け出した。


 それから10分後。


「ぐっ……!」


「これで俺の勝ちだな」


 最後の一人を無情に切って捨てた俺は魔法剣を解除する。

 ……これの良いところは魔力消費がそこまで大きくない事なんだよなぁ。転移とか言うバカみたいに魔力を食うやつとは違って効率がとても良い。


「おっと」


 油断していた瞬間、俺は後ろにいた人物に斬りかかられた。

 そして俺は難なくその剣を片手で止める。


「それ、一般人にやってたら絶対に死んでたぞ?」


「ちょっと私も久々に本気を出したくなってね。相手になってくださいよ」


「……ハンデは左手一本だ」


 そして俺は自らの右腕を後ろに回し、胴体ごと鎖で締め、動かないようにした。


「これまた舐められたものだね。まああのステなら仕方ないかもしれないけど」


「来いよ」


「そうさせてもらう!」


 ギルバートが刃が付いている剣で俺に斬りかかって来る。

 そして俺は刃を潰した剣を一瞬で創造し、これまた難なく受け止める。


「やはり戦いはこうでなくては……〈絶解〉!」


 その瞬間、ギルバートの全てが跳ね上がった。

 魔力も筋力も体力も全て。


「神刀:風桜」


 先程までギルバートが持っていた剣は緑がかった金色の刀身だった。

 ……なるほど。

 まさかヒヒイロカネを使った武器がトルリオン以外にも存在していたなんてな……。


「すまん。ちょっとだけ場所を移さないか?」


「……構わないよ」


 そう言われたので俺は創造でオジルと戦った時のような空間を作る。


「じゃあちょっと手に掴まれ」


 そして手を掴み、俺は転移を使って作った空間に移動した。



「ハンデつけようとしたことは謝るわ。と言うわけで俺も本気でいかせてもらう。ここなら全力でやっても問題ないからな」


「ああ!」


 そして俺はトルリオンを取り出す。

 流石にここでダーインスレイブは使わない。血を見る羽目にはなりたくなからな。


「「行くぞ!!」」


 そして俺たちの本気vs本気の戦いが幕を開けた。

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