112話 魔導カメラ録画機能付き

 クソッタレぇぇぇぇぇぇええええ!!

 と、俺は絶叫したい気持ちを抑え、カメラを収納していった。

 ……結局無駄になったのかよ!いざという時のための物がいらなくなってしまった……。


「……帰るか」


 落ち込んでたって仕方ない。ここは現実的な証拠を持っていってギルバートに認めさせればいいんだから。


「〈転移〉」


 そして俺はタルサ城へと戻った。



「おっす!待たせたな!」


 俺は転移で数分前にいた場所へと戻る。


「あ!やっとお兄ちゃん帰ってきた!」


「おお……ていうかやっとと呼べるほど、俺は出かけてないんだが……?」


「ミリアちゃん、トオルがいないからってずっとソワソワしてたんだよ」


「し、してないもん!」


 可愛い顔で否定するミリア。

 ……何だが年の離れた妹みたいな感じだな。

 だって奏音とは2歳しか離れてないし、あんまり妹って感じがしないんだよなぁ……どうしてだろう?


「それでクラーケンは討伐出来たのかい?」


「それは普通なできたんだが……録画が取れなかった」


「録画機能のある魔導具が作れるのかい!?」


「あ、ああ」


 身を乗り出して聞いてきたため、俺は若干引いてしまった。もちろん物理的と精神的に。


「ぜひその魔導具を売ってくれ!」


「……何に使うんだ?」


「もちろん決闘での正当さを図るためにもなるし、何より家族の姿を残しておきたい」


「そうだな……なら5千センで売る」


「そんな安値でいいのかい?」


「実質材料費はタダだしな。それで渡しても文句言われるはずだからこのぐらいの値段が妥当だろう」


「ありがとう!持つべきものはやっぱり心の友だね!」


「……やっぱり無しという方向でよろしいでしょうか?」


「……すいません。調子に乗りました」


「よろしい」


 20代後半のおじさんが高校生っぽい発言に引いた俺は提案を取り下げようとしたが、謝罪が聞けたことにより、結局売ることにした。

 家族の動画を残しておきたいと思うのはいいことだからな。実に家族思いだ。


「それじゃあこれはお代だよ」


「確かに受け取った」


 俺は銀貨5枚を受け取り、魔導カメラを渡す。


「ありがとう!」


「どういたしまして」


「お兄ちゃん!お父様とのお話はもう終わったの?」


「ああ。終わっだぞ」


「なら今度は私と遊んで!」


「ああ。いいぞ」


 俺は煩わしい縁談が終わったので、ミリアと遊ぶことにした。暇だしな。

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