113話 お絵かき

「じゃあ何して遊ぶか?」


「うーん……じゃあお絵かきしよう!」


「お、おう。そうするか」


 まさかのこの短期間で二回も絵を描くことになるとは思わなかったなぁ……。まあ遊びの範疇だから程々にしておこう。

 何事もやり過ぎるのは良くないからな。

 ……俺が言えるセリフでもねぇか。


「じゃあ私はお兄ちゃん描くからお兄ちゃんは私を描いて!」


 ……これはますます手を抜けない状況になってきた。女の子の描写に手を抜いたことなど俺は一度もない!

 フハハハッ!アニオタになった時からやっている俺の描写の実力、舐めるんじゃないぞ!


「じゃあまずはわたしから先に描くね~!」


 そう言って用意していたであろう色鉛筆を取り出し、これまた用意してあった画用紙に絵を描き始めた。


「……よいしょ……」


 そしてしばらく描き進めていき、30分が経過した。


「出来た!」


 そして俺にその完成品を見せてきた。

 ……これは上手い方の部類に入るのか……?

 そう思える絵だったとだけ言っておこう。率直な事を言ったら傷つくと思うからな。


「上手いんじゃない?」


「やった!」


 お世辞……でもとても喜んでくれことに対して俺は罪悪感を感じていた。

 ……この次に俺の奴を見せるのか……。なんか気まづい……。


「じゃあ次はお兄ちゃんの番!」


 期待の眼差しで俺を見つめる。

 ……もういいか。じっと見つめられているのに手を抜くなんて真似はしたくないからな。


「じゃあ頑張るとするか」


 そして俺は描き始めた。



「うわ~~!凄い!!」


 ミリアは俺の描いた絵を見てものすごく喜んでいた。

 俺が描いたのは少しアニメ寄りのミリアの人物画だった。出来はもちろん最高である!……のだか……、ここで差を見せつけられて挫けないかだけが俺の懸念なんだよなぁ……。


「どうやったらお兄ちゃんみたいに絵を上手に描けるようになるの?」


「俺の場合は才能に恵まれてい事もあるが……絵は一朝一夕のものではない。毎日練習すれば俺ぐらいには簡単になれるさ」


「本当に……?」


「ああ、本当だとも。俺よりも絵が上手い人なんて世の中幾らでもいるものさ」


 中々クサイ事を言っている自覚はあるけど、これでいいんだ。


「本当に絵が上手いんだね」


「それほどでもない。さっきも言ったけど、俺のは才能に恵まれていただけだ。真面目に努力したのは二年ぐらい。それ以降はやってないんだよ」


「そのブランクがあってもここまで見事な絵を描くことができるなんてね」


「そこまでじゃねぇだろ」


 何度も言うようだが、俺より上は何人もいた……と思う。基本どうでも良かったからよく覚えていないんだけど……。


「まあ喜んでくれるのは冥利に尽きると言うものだな」


「そうですね〜」


 男二人。

 頷きあうのだった。

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