83話 大血闘予選大会
「多いな……」
これは全クラス全学年が参加する競技なんだから半ば諦めていたけどな。
「では!予選をAブロックから行いたいと思います!!」
俺はEブロックだ。
……何でだろうな?俺ってEに愛されているのか?
「ではAブロックの試合を始めたいと思いますので、出場者はリングの上へと上がってください!」
……前から思っていたんだが、準備係の人すごいな……。
あっという間にこの大理石の床を敷いていくんだからな……。
そしてぞろぞろとリングに上がっていく。
……流石に狭くないか?
横の長さが100メートルぐらいあるからと言って、それで10人戦いうのは結構厳しいだろう。
「それでは全員位置についてください!」
そう言われてなるべく均等になるように並んだ。
これはあらかじめどこの場所から戦い始めるのかを決めていて、それを生徒に伝えたのだろう。
ていうかそうしないと寄り過ぎてしまうことがあるからな。
「それでは予選Aブロックを開始します!レディー……ゴー!」
開始とともに何人かが、自身が決めている標的の方へと駆け出していった。
そこから熾烈な戦いが始まる。
かと思ったが、何故かみんなはその場から動かない。
よく見てみると詠唱を唱えていた。
「ここで一斉に詠唱に入ります!トオル選手や2年Sクラスの場合は詠唱しなかったんですが、それはあそこが極端に強いだけなので詠唱が普通なのです!」
……何を解説しているんだろう?
ていうかこれ見ている人なら基本そういう魔法事情は知っているんじゃないのか?
「こういうのは素人の人も見るからそういう意味でこういう解説は大事なんだって」
「お、楓か」
「透って何ブロック?」
「俺はEだな」
「私はB。決勝まで行かないと当たりそうにないね……」
「何言ってるんだ?この生徒で楓に勝てそうなやつって言ったら……俺含めたら3人かな……」
「残り二人ってやっぱり透が育てたっていう?」
「そうだな。二人とも才能に溢れているが、片方は呪いがかけられていて、もう片方は莫大すぎる故に使いこなせていなかったからな」
「そうなんだ……」
「まあアイツらは一を突き詰めた感じのタイプだから弱点をつければ楓でも問題なく勝てると思うぞ」
「その二人は何の魔法を使うの?」
「天魔法と滅神魔法だな」
「なんか……正反対のような二人だね……」
「まあ性格的にも正反対とも言えるな……」
だってミサタはチャラいし、ライオスは真面目だもん。
「それで透のブロックには誰がいるの?」
「そうだな……。完全に理事長の策略だろうが、一年が1人、3年が6人いるから……。しかもその一つはSクラスだし」
「大丈夫なの?」
「いや、これはむしろ好都合だ。なんたってあの自己中クソイケメンを殴れる絶好の機会なんだからな。フハハッ!」
「あんまり虐めてあげないでね……」
「それ、ライオスにも言われたわ……」
「そっか、二人は同じ控室なんだよね?」
「クラスで一つだからな。それで楓のところで木になる相手はいるのか?」
「き、き、気になるなんて……。そんな人いないよ……」
「?」
何故そこで赤くなる?
俺が言っているのは強そうな相手がいるのかどうかなんだが……。
……もしや!楓も戦闘狂になってしまったのか!?
そうかと思えば自身の誤発言に気がついた楓は顔を赤く染めた。
「そ、それを先に言ってよ!!」
どうやら俺の考えは違っていたらしい。
「うーん……やっぱり透が育てたっていうEクラス1チームが気になるかな……」
「あ、ミサタとなのか。頑張れ!」
俺は皮肉を込めた?応援をする。
「彼ってやっぱり強いのかな……」
「まあ別に俺は理事長に他クラスに舐められないようにしたらいいって言われたから、弱点とか教えてもいいんだけど……」
「いらない」
「うん、言うと思った」
「だって正々堂々戦いたいんだもん」
だろうな。
性格的に楓は曲がったことが嫌いだし。
こういうのは自分の実力で試したいんだろうな。
俺もだけど。
「決着!本選出場は三年Aクラス2です!」
どうやら俺たちが話している間に決着がついたようだ。
正直言ってこの試合は至極どうでもよかったけどな。
「それでは次にBブロックの生徒はリングへと上がってください!」
「私だね」
「頑張ってこいよ」
「うん!」
本当ならミサタに対して少しは情報を知っておいてもらいたかったけど、ステータスを軽く縛った俺と互角に戦えてる時点で、楓が負ける確率は少ないだろうな……。
まあ昔はそうだったとしても、楓も1ヶ月特訓を積んできた。
余程の失態をしない限りは大丈夫だと信じている。
だって俺は楓の彼氏だからな!
「それでは予選Bブロックを開始します!レディー……ゴー!」
開始とともに、ミサタと楓は一斉にお互いの方向へ走り出した。
……あ、これ二人以外は最初で終わるな……。
可哀想に。人外との戦いに組まされるなんて……。
「はぁぁぁぁぁぁあああっ!!」
「唸れッ!熾天使セラフィム!!」
手始めに俺の時と同じ技を使った。
そして前よりも増えた矢が縦横無尽に飛び回る。
そしてミサタも無詠唱の天魔法で他の生徒を蹴散らしていく。
そしてあっという間に二人だけになった。
「せりゃあっ!」
「燃やせ!」
楓も詠唱を短縮化することが可能になっていた。
そして見えない空の塊と、神炎を纏った矢が衝突し、霧散する。
……やっぱりお互い強いな……。
単語量の違いは若干あるものの、楓の方が威力的には押していた。
それに楓には様々なスキルがある。
「はぁっ!!」
ミサタはもう一度空を薙ぎ、楓に襲いかかる。
魔法が楓に当たった……と思われた瞬間、楓の姿がかき消えた。
「これは……分身!」
「………せよ!熾天使ラファエル!!」
バレないように詠唱をしながら、透明化と分身の二つのスキルを使いこなし、ミサタの背後に移動していた。
そして詠唱が完了し、特大の光が三本。ミサタの方へと向かっていた。
この技ははっきり言ってヤバイ。
縛った俺のステータスじゃ一瞬で溶かされるほどの火力を持っている。
「天よ!我が身を守れ!」
すると、ミサタの前に何重にも貼られた一方向への結界が出来る。
そして光と壁がぶつかった。
光はどんどん結界を貫通していく。
「行けぇぇぇぇぇぇぇええっ!!」
「ぐっ……!!」
そして最後の結界を貫通した光はミサタに直撃した。
「グハッ……!」
もろに腹にくらった。
そしてミサタは戦闘不能になった。
「そこまで!勝者二年Sクラス!!」
これで楓は本選へと足を進めた。
それからC、Dと戦いは進み、とうとうお待ちかねのEブロックの戦いがやってきた。
「Eブロック予選に出場する人はリングへと上がってください!」
促されたので俺は上に上がる。
そして指定の位置に着く。
「それでは……レディー……ゴー!」
そしてその瞬間俺はトルリオンを装備、なおかつ身体強化バフをかけにかけまくり、あの自己中クソイケメン以外を全てリングへと出させた。
「な、な、な、な、なんと!!?始まったと思えば一気に8人がアウトっ!?何がどうなった〜〜!?」
さあ!本番はこれからだ!
「これでようやく憤りをぶつけられる……!」
せいぜい死なないように頑張るんだな。
「はっ!」
俺は視認させずに奴の懐に潜り、掌底を叩き込んだ。
「グハッ!?」
何をされたか理解できずに吹っ飛んでいく。
俺はそこから奴よりも早いスピードでリングの縁へと周り、飛んできた奴の背中に膝蹴りを叩き込んだ。
「うっ!!?」
圧倒的な力で膝蹴りを叩き込んだことにより、奴の体はボールのように浮き上がる。
大体30メートルあたりまで飛んだ。
「はぁっ!」
そして俺もそれ以上飛び、奴に向かって踵落としを叩き込む。
これはただの踵落としじゃない。
上がった瞬間に足の先からものすごい風が噴射し、何回も回転した。
1…2…3…4…5回回り、腹に思いっきり叩き込んだ。
「グブェェェェッ!!」
気持ち悪い奇声を上げながら落下し、リング全体が割れる衝撃を生んだ。
「ふぅ」
俺はスタッと着地し、奴が生きているか確かめる。
これは流石に殺しちゃマズイからな。
……うん。これは放っておいたら間違いなく死ぬね。
というわけで俺は生きることができるぐらいに回復をしてやる。
「〈ヒール〉」
外傷ではなく、内臓などの器官に向けて俺は回復を施した。
……ある程度マシになったからこれで死んだら俺の問題じゃない。
「あ、あ、圧倒的すぎる!?これが勇者か!これが最強か!Eブロック!開始わずか5秒で決着!本選出場へと進んだのは二年Eクラス3だ〜〜!!」
こうして俺も本選へと出場することができたのであった。
あ〜〜!スッキリした!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます