82話 予選発表

「それで師匠?これからどうするんですか?」


「お前は仕事しろ」


「了解しました!」


 ……仕事って言ったってただの見張り役なんだけどな。


 それから10分が経った。


「まず初めのヒント!学校の校舎の中にはありません!」


 ……なるほどね……。

 確かに校舎にはないな。

 周りは囲まれているけど。


「ていうかこれって俺がいたらまずいんじゃないか?」


「うーん……そうっぽいですね!」


「そこ笑顔で言うところか……?」


「えへへ……!」


「……褒めてもいないからな」


 それなら俺も戻るか……。

 見られたら位置がバレるし。


「じゃあな」


「はい!師匠、また後で!」


「おう」


 そして俺は控室へと転移したのだった。


 戻ると、そこにはミサタが寝ていた。

 …….ライオスにやられてからまだ起きてないのか……?

 どれだけ強くやったんだよ……。


「あ、師匠」


 噂をすればライオスがやってきた。


「まだ起きてないのか?」


「そうです……強くやりすぎたのかも……」


「まあそれぐらいでいいんじゃない?あの時ライオスが行ってなかったら俺が行っていたところだったし」


 流石にあれは引く……。

 久しぶりにヤバイ人を見た感じだったもん。


「それは……良かったですね……」


 俺が動きかけたと言って少し慌てたライオス。


「………んっ?」


「ようやく起きたか……」


「あれ……俺なんで……ああっ!!」


 そう言ってライオスめがけてビシッ!と人差し指を向けた。


「人に向かって指はさすなよ~」


 俺は軽~く注意を入れるがすでに二人は臨戦状態だった。


「貴様……師匠の言うことが聞けないとはいい度胸だな……!!」


「甘いっ!!」


 ライオスがキレたのか、ミサタへ向かって殴りかかる。

 しかしそれを無詠唱の天魔法で受け止めた。


「クソッ!相変わらず厄介な魔法だな!」


「俺はただで殴られたくないからね。少しは抵抗しない、と!」


 テンポに乗り、タイミングよくライオスへ向けて魔法を使う。


「はいはい……そこまでな……」


 これ以上やると、怪我しちまいそうだから俺は止めに入る。

 え?ミサタの魔法はどこに行ったって?

 そんなの素手で消したに決まってるだろ?


「師匠ッ!!」


「トオルッ!!」


「お前ら……そろそろいい加減にしとけよ?」


 俺は基本温厚だけど、自身に降りかかる火の粉はしっかりはたき落とす男だ。

 確実に!このままやっていたら被害がいろんなところで出ていただろうからな。

 責任取らされるの俺なんだぞ!?

 お前ら少しは加減しろ!!


「「すいません……」」


「分かればいい」


 分かってくれないと力ずくだったからな!



「結果!三位Eクラス1!二位Sクラス!一位Eクラス3です!!この結果をどうご覧になりますか?女王陛下?」


「そうですね。圧倒的にEクラス3が強いですね。もともと勇者ということもあって他者よりも頭一つ二つも抜けていた彼がさらに強くなって帰ってきたんです。この結果は妥当なんじゃないんでしょうか?」


「そうですね!私もそう思います!」


 理事長は完全に女王様に合わしている。


「それでは次に三年生です。ーー」


 三年生のは特に何とも思わなかったかなぁ。

 だけど、宝石がエメラルドで、それが学園最上階の屋根裏のマトリョーシカ方式になっている箱の中に入っているなんて俺も想像できないわ……。


「結果!三位Bクラス2!二位Cクラス4!一位Sクラスです!」


 あんまり変わり映えしない結果だな……。


「それでは……待ちに待った大血闘を行いたいと思います!!!」


 その瞬間マイクを通して、または観客席の方からか、ものすごい歓声が聞こえてきた。


「うるせ……」


 いや、マジでうるさいな……。

 これ公害ということで訴えていいですか?

 なんて冗談は置いておいて、やっぱり異常なほどの盛り上がりだよな……。

 はっきり言って野球の試合のようなものとは比べ物にならないほどうるさい!


「……いつもこんなんなのか?」


「そういえば師匠は初めてでしたね?いつもこんな感じですよ。こういうのは気にしたら負けですよ」


「確かに……そうだな」


 意識のうちでシャットアウトしていたらいくらかはマシだ。


「それでは各予選の張り出しを闘技場前で行いますので、ご覧ください!」


 ……これ絶対人がごった返して、自分が何番目が分からないやつだ……。


「なお、各クラスの控室にも貼っておきますので生徒の皆さんはこちらをご覧ください!」


 それは良かった!

 人混みで吐くかもしれないからな!


「失礼します」


 扉がノックされ、女性が入ってきた。

 この人が対戦表を貼り回る係の人なんだろうな……。

 お疲れ様です!


「こちらが大血闘の対戦表となります」


 えーっとどれどれ?

 そこには俺のチーム名と戦うチームが書かれていた。

 どうやらこの予選ごとに1組が選出されるということで、一つの予選ごとに10チームが選ばれている。

 俺の場合は一年生一チーム、二年生三チーム、三年生六チームといった何とも不平等な組み合わせだった。

 不平等なんて言葉、俺には関係ないけどな!


「師匠の組み合わせは不平等ですね……」


「いいんだよ。初回で楓たちとぶつからないだけまだマシだ」


 他のチームは全員B以上だ。

 そして三年生にはSクラスまで混じってるし……。

 まああの生徒会長がいない以上、俺が負けるはずはないけどな。


「今対戦表を配り終えたという連絡がありました!それでは生徒の皆さんは一度闘技場へと集まってください!」


 一回行かないとダメなのか……。


「じゃあ行ってくるわ」


「頑張ってください!応援してます!」


「あれ?俺の応援は?」


「ないに決まってるだろう?お前は他のやつにしてもらってこい!」


 ……ライオスもミサタに対する評価がさっきので一気に下がったのか、冷たいな……。

 まあいいや。ようやくあのバカを潰せる。

 この時をどれだけ待ちわびたか……!

 あのよくいる自己中クソイケメンをこの手で叩き潰すことをなぁ!!


「師匠……やりすぎないでくださいね」


「気分にもよるな」


 ウザかったらボコボコにするかもね!


 そして俺は闘技場へと向かった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る