14話 共同依頼

  戦闘訓練が終わると、今日は解散になった。


  「トオル君、この後って何か用事ある?もしよかったら、一緒に冒険者ギルドに行かない?」


  「ああ、いいぞ。それでいいよな?」


  カーマから冒険者ギルドへ誘われた。一応確認しておかないと、後で用事が入ったとか言われたら面倒なことになるからな(連れ戻されるという意味で)。


  「はい。いいですよ。今日は特に用事は入っていませんし」


  「というわけだ。今から行くか?」


  「その前に腹が減ると思うからどこかでご飯食べない?」


  「ああ、いいぞ」


  「なら商店エリアに出ている出店とかで軽く食べることにしよう」


  「そうするか」


  「アルベルト君はどうする?」


  「すまない。今日は用事が入っててな。また今度誘ってくれるか?」


  「ああ、そうなんだ。じゃあまた今度誘うよ」


  「ありがとう」


  そう言ってアルベルトは教室から出て行った。


  「じゃあ二人だけだけど、楓とか誘った方がいいか?」


  「いやー、あの人は本当に俺とは別世界のような人間だから緊張しちゃうんですよね」


  「じゃあルーナは?」


  「王女殿下の方がもっと緊張するよ」


  「それは確かに」

 

  誰だって緊張するだろうな。身分関係なく接してほしいって言ってたけど、しばらくは無理だろうな。


  「じゃあ二人で、ということでいいんだな」


  「はい。じゃあ、行きましょうか」


  「そうだな」


  俺とカーマはギルドに行くため、教室から出たのだった。


  結論から言うと、屋台で売っていたものは基本うまかった。先生が好きと言っていたホロ肉の串焼きにカーマの好物のトッモロコシなどなど。今はお金を持っていないからカーマにゴチになった。


  「悪いな、お金払ってもらって。また今度返すから」


  「いや、大丈夫。付いてきてくれって頼んだのは俺の方なんだから気にしなくていいよ」


  「そうか。でもやっぱりお金は返すことにするよ。返さないと俺の罪悪感が半端ないことになるからな」


  「なら、ありがたく貰わせてもらうことにするな。急いで返さなくていいから」


  「ありがとう。それよりなんでギルドに来たんだ?」


  「実は俺、まだギルドに登録してないんだ。親から学園に入学するまでは登録するな!って言われてたからな」


  「そうなんだ」


  やっぱり貴族って大変なんだな。こういうのにも制限かけられるんだからな。

  そうこうしているうちにギルドに着いた。

  ギルドの扉を開けると、アイリーンさんが俺を見るなり飛び込んできた。


  「トオル様!ギルドマスターがお待ちです!」


  なんの話だろう?と俺は思ったが俺は思い出してしまった。ガルドさんにゴブリンの買取をするから次の日に来て欲しいと。あれから3日経っていた。

  ああ、そりゃ言われるだろうな。まあ、ドラゴン討伐とかで忙しかったしこれくらいは許してほしいものだ。

 

  「ギルドマスターに呼ばれるなんて……。やっぱりトオル君はすごいや」


  「そうでもないぞ。勇者だから面識があるだけだしな」


  実際レオンに連れてこられてなかったらガルドさんとは合わなかっただろうからな。


  「今更ながら俺が付いてきても良かったのか?」


  「いいだろ。呼ばれたのは報酬のことだし、その時にカーマの登録もすればいいんじゃないか?」


  「そうだね。そうさせてもらうよ」


  ギルドマスターの部屋に着いたので扉を開ける。


  「遅いよ!勇者君!もうあれから3日は経ってるよ!」


  「すいません。ドラゴン討伐とかでいろいろ大変だったんで」


  「聞いているよ。大活躍だったんだね」


  「え!?ドラゴンの群れを倒したのってトオル君なんですか?」


  「そうだよ。確か報告によると魔法で1発だったと書かれてるけどそうなの?」


  「ああ、合ってる」


  「……やっぱりトオル君は規格外だね」


  失礼な!俺だってちゃんと非常時以外あんな魔法は使わないよ!

  先生のときだって最初からメテオ撃ってたらもうちょっと早く決着ついていたと思うけど……。


  「あ、じゃあゴブリン56体とゴブリンメイジ4体、ゴブリンジェネラル2体、ゴブリンキング1体の討伐報酬は金貨20枚だね」


  金貨20枚は日本円で換算すると……、約20万円か。やっぱり冒険者って稼ぎがいいんだな。


  「ゴブリン討伐やドラゴン討伐などで次のランクとかに上がれるけど上がる?」


  「どれだけ上がるんですか?」


  「Aまではいけるね。本当ならSランクを出しても問題ない実力なんだけど、Sランクになる為には、国に特別な審査を受けなければならないという決まりになっているんだ」


  どうしよう……。はっきり言ってランクは楓と一緒に上げるつもりだったし、ランクが高いと便利なこともあるからなー。

  もういいや。上げちゃおう。


  「じゃあ、Aランクまでお願いします」


  「了解ー。じゃあギルドカード出して」


  そう言われたので俺はアイテムボックスに入っているギルドカードを出した。

  それを渡すとガルドさんは何らかの作業をし、帰ってきたのは金色のカードだった。


  「これでAランクになれたよ。時々指名依頼が入るかもしれないけどその時はよろしくね」


  「基本は。それより、カーマのギルドカードを作ってもらえますか?」


  「その隣にいる子?ぜんぜん構わないよ。じゃあーー」

 

  そうしてカーマの登録もした。

  え?何で登録のところ飛ばしたのかだって?見ててもつまんないでしょ。俺と楓と基本変わらなかったし。


  「じゃあ登録も終わったことだし、何か依頼でも受ける?」


  「それはいいな」


  キリア草以外の依頼は受けたことないから勉強になるな。ガチの勉強はする気ないけど。


  「じゃあ、どれにしようか?」


  「んー、基本なんでもいいんだけどなー。……じゃあこれにするか?グリズリーベアの討伐」


  俺が言ったのはBランクの依頼だった。こんなもんでいいだろ。カーマの場合、戦い方を見れずに負けてたからな。どんなもんなのか見てみたい。


  「……俺にできるかな?」


  「大丈夫!いざとなったらカバーしたるから」


  「じゃあ、これにしよう。依頼場所はここから北に真っ直ぐ向かったところにある森だって」


  「わかった」


  俺たちはアイリーンさんに依頼の紙を渡して、ギルドから出た。


 

  「……っていうか北ってどっちなんだ?」


  「北はこっちだよ」


  そい言ってカーマが指差した方向は森へ行った時やドラゴン討伐をしたところとは真反対のところだった。

  じゃあ、あっちは南ってことになるのか。

  俺たちはギルドから歩き始めて数分後北門に到着した。

  ギルドカードを見せて街の外に出る。

  通ったとき門番さんが俺がAランクだったことにすごい驚いていた。やっぱり、この歳でAランクは珍しいのか?


  「で、どうやって行くの?もしかして歩き?」


  「それでもいいんだが、ちょっと短縮技を使うぞ」


  俺はそう言い、カーマの手を取る。


  「〈飛翔〉!」


  空を飛ぶスキルでカーマを連れて、猛スピードで疾走した。


  「うわあああぁぁぁっ!!」


  ……耳元で叫ぶな、うるさい。俺はスピードを緩めることなくこのまま直進した。

  五分ほどで例の森が見えてきた。

  森の入り口付近で、急停止して止まる。


  「よし!到着ーっと」


  「はわわわわわ」


  ラリってるのか?そんなに早くした覚えはないんだが。


  「おーい、大丈夫か?」


  「は!ここはどこ!」


  「森だ」


  「僕はどうやってここへ?」


  「おいおい、記憶がとんでるのか?思い出せよ」


  「は!そういえばトオル君に手を掴まれたような気がしたらその直後から意識が……」


  「そりゃラリってるほど呂律回ってなかったし、っていうかあんだけ叫んでたのに意識なかったのかよ!」


  「……そうですね。じゃあ行きましょうか」


  「そうだな」


  だけど俺はここに来て一つ思った。

  どうやって探せばいいんだこれ?ここに住んでいるっていうことしか手がかりないぞ。

  じゃあこういう時は便利なスキルがあるか聞いてみるか。


  (グリズリーベアを見つけることができるスキル)


  〈スキル検索開始……合致スキル2件。表示します〉


  出てきたのは〈探知〉と〈索敵〉というスキルだった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 <探知>


  探したい生き物(魔物を含む)を半径30キロ圏内にいる時見つけることが出来る。

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 <索敵>


  魔物に襲われることを感知することが出来る。

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


  と書かれていた。

  探知はグリズリーベアの場所を知るためで、索敵はもし、グリズリーベアが襲ってきたときにそれを感知するためだろうな。

  じゃあ早速探知を使ってみるか。


  「〈探知〉グリズリーベア」


  すると頭の中で地図のようなものが構成されその中に赤い点が表示された。

  ……ん?これは?

  点が俺たちの位置と極端に近いんだが?

  ふと俺はカーマの方を見るとカーマの頭上に腕を振り上げ今にも襲いそうな熊がいた。


  「危ない!」


  「え?」


  俺はすぐさまトルリオンを取り出し、その超人的なステータスで熊とカーマの間に入り、振り下ろされた熊の右手を切断した。

  腕を切られた熊は悶絶している。


  「ふぅ。危なかったな。じゃあ、あとは頑張れ!俺そこで見とくから」


  「は、はい。……行きます!」


  カーマが槍を取り出し、悶絶している熊へ向かった。

  熊は悶絶しながらもしっかりカーマの姿を捉えている。

  だけど流石はSクラス。華麗な槍捌きで熊の攻撃をいなし、カウンターを入れる。

  熊はカーマにダメージを与えられず、カーマはカウンターで攻めていった。

  結果は意外とすぐにつき、無傷でカーマの勝利に終わった。


  「やるな。流石はSクラス」


  「いやー……、あれはトオル君が腕を切ってくれたから勝てたからであって、万全の状態だったら分からないよ」


「そうか。でも俺は上手いと思ったぞ。……じゃあ依頼も終わったことだし帰るとするか」


  グリズリーベアをアイテムボックスにぶち込んでそう言う。


  「……また、あの地獄を味合わなければならいのか……」


  「大丈夫。今度はゆっくり行くから」


  「そうして!お願い!」


  そんなに怖いもんか?俺は全然大丈夫なんだけどな……。

  こうして俺とカーマの共同依頼が終わった。

  ……あ、まだ正確には報告してないから終わってないや。

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