12話 自己紹介&戦闘訓練

 入学式が終わった後、先生の指示に従って俺たちは教室に移動していた。


「どんな人たちがクラスメイトになるんだろうね」


「そうだね。楽しみだなー!」


 楓とルーナは出会ってまだ1日も経っていないのに、もうすっかり意気投合してるな。

 俺は未だ震えが止まらないぜ!……やべえ。自分があんな人の前で挨拶したなんて思い出しただけで震え上がりそうだな……。ある意味ドラゴンより怖いぜ……。

 おっ、教室に着いたようだ。プレートにSクラスって書かれている。


「お邪魔しますー!」


 そう言って楓が扉を開けるとそこには机が7つしかなかった。すでに4つには人が座っていた。

 俺たちが教室に入った後に後ろから理事長先生が入ってきた。


「はい、席について!」


 そう言われたので俺たちは空いている席に適当に座る。


「じゃあ、自己紹介から始めようか。私はレイナ=チャールド。皆さんご存知の通り、この学園の理事長をしています。好きな食べ物はホロ肉の串焼きで、趣味は読書です。よろしくお願いします。じゃあ次に首席のトオル君から自己紹介よろしくね」


「はい。金山透です。代表挨拶の時にも言いましたがこの世界の正式な勇者となっています。この世界に来てからまだ日が浅いので分からないところをいろいろ教えてもらえるとありがたいです。好きな食べ物はシチューで趣味は偶に絵を描くことです」


「じゃあ次、カエデさん」


「私は涼川楓です。透と同じく異世界から召喚された勇者です。好きな食べ物は、この世界のことをよく分からないので、ちょっと食べ物のことも分かりません。趣味は弓道です。よろしくお願いします」


「ありがとー、じゃあどんどんいってみよう!」


「私はメルトリリス王国第1王女、ルーナ=メルトリリスです。第1王女ということですが、身分など関係なく楽しく過ごしていきたいと思っています。好きな食べ物はドラゴンのステーキで趣味はお世話をすることです。よろしくお願いしますね」


 ……ルーナがドラゴンのステーキを好きということに俺は今驚きを感じている。

 ルーナの自己紹介が終わり、次は赤髪のイケメンだった。


「私はダリス侯爵家の次男のアルベルト=ダリスだ。好きな食べ物は野菜盛り合わせのサラダで趣味は体を動かすことだ。みんなと楽しい時間を過ごしたいと思っている。よろしく頼む」


 なかなか発言が騎士みたいな感じだったね。次は青い髪をしている女の子だ。


「私はクルルト伯爵家の長女、ベネッタ=クルルトだよ。好きな食べ物は唐揚げで趣味は運動かな?王女様たちがいる中で話すのは緊張するけど、仲良くやれたらいいと思っています。よろしくお願いします!」


 なかなか、活発な女の子だな。こういう子がムードメーカーになりそう。

 で次が俺たちと同じ黒髪の眼鏡をかけた大人しそうな女の子だった。


「……私はユスト子爵家三女のオリビア=ユストです。……好きな食べ物は肉類全般で、趣味は読書です……この通り、私は人見知りですが、仲良くしてくれると嬉しいです……。……よろしくお願いします」


 人見知りかー。俺もそうだけどな。なんとか仲良くなりたいものだ。

 そして最後は緑色の髪をしたこれまたイケメンだった。


「えー、僕はエラム伯爵家の三男のカーマ=エラムって言います!……正直勇者様と王女様がいるってことで心配していたんですけど、フレンドリーな性格だったので一安心です。好きな食べ物はトッモロコシで、趣味は魔物討伐です!よろしくお願いします!」


 トッモロコシはトウモロコシのことなんだろうな。

 ……っていうかこの世界の人って男子がヘルシーな物好きで女子が肉などのガッチリしたものが好きなんだな……。意外すぎる。しかも全員貴族の子だし。


「じゃあ自己紹介も終わったことだし、ちょっと戦闘訓練でもしょうか」


 突然理事長がそんなことを言いだしてきた。

 入学初日でいきなり戦闘訓練はやり過ぎじゃない?


「いいねそれ!」


「……そうだね。みんなの実力を知るのにはこれが一番いいかも……」


 うぇっ!なんでみんなそんなに乗り気なの!?

 確かにみんなの実力を知るには戦闘訓練が一番良いのだろうけど……。


「じゃあ訓練場にレッツゴー!」


 こうして俺たちは初日から戦闘訓練が始まった。

 ……入学初日ぐらい入学式と自己紹介が終わったら帰らせてよ……。

 そう俺は嘆きながら訓練場へ向かった。


 訓練場は俺たちが昨日使ったのとは違うところらしい。何故らしいなのかというと、訓練場の姿形が昨日のと全く変わってないからだ。


「理事長。昨日俺たちが使った訓練場は使わないのか?」


「あなたのおかげで絶賛工事中よ。それと今は先生って呼びなさい」


「……分かりました。先生」


 ……やっぱりやり過ぎていたんだな。自重する気は基本ないけど、迷惑がかかるのなら抑えるようにしないとな。


「じゃあこれから戦闘訓練を始めるよ。まず始めにトオル君は……、相手にできる人がいなさそうだから先生とやろうか」


 その発言に他の面々はムッとしている。そりゃそうだろう。自分たちじゃ勝負にもならないと言われているようなもんだからな。


「……先生。本気でやってもいいんだよな?」


「いいよ。これでも私はSランク冒険者なんで」


 なるほど、レオン並みの化け物レベルか。なら問題ないな。

 俺はアイテムボックスからトルリオンを取り出す。


「審判頼まれてくれるか?ルーナ」


「了解よ」


 両者構える。


「では、始め!」


 そして決戦の火蓋が切って落とされた。

 俺はトルリオンの能力で強化されたステで、先生まで距離を詰める。

 そうはさせまいと、地面を凍らせ、俺が少し滑ると同時に氷の槍をいくつもぶつけてくる。


「はあッ!」


 掛け声とともに俺にぶつかる槍だけを全て切り捨てていく。

 先生は無言で詠唱もしていない。それだけで無詠唱で魔法が使えることが分かる。

 全て切り終わると、そこには火の玉、氷の槍、風の刃、土の杭など、色々なものが飛んでくる。

 俺はそれを前方にダッシュしながら必要な分だけ切り捨てていく。

 前へ詰めると、そこにはもう先生の姿はなく横に回り込まれていた。

 間一髪。まさにそれは奇跡のような回避だった。今までの速度がそこまで早くない魔法だったのに急に早くやった。それはまさに太陽光のレーザーだろう。


「これも避けるのか……。やるね」


「先生の方が強いよ。さっきからまともに攻めさせてもらってないし」


「私の攻撃に学生でこれだけ耐えたのはあなたが初めてよ。このままじゃ埒が明かなさそうだし、お互い全力の一発を放つ。ていうのはどうだろう?」


「いいんじゃないですか?まあ、僕は魔法そんなに使えませんが」


「あれでそんなにだったら十分だよ……」


 まあ、確かに。


「じゃあ、行くよ!」


「来い!」


 お互い準備は出来た。……まあ、俺は準備も何もしていないんだけど。純粋な力だけで叩き斬る!

 そう俺は宣言し、先生へ突っ込んでいった。


「マギア・ザ・フレイム!」


 初めて先生が詠唱しているところを見た。

 そんなことをしている場合じゃない!

 あれは言ったら炎の極大ビーム。そんなものが俺の目の前から放たれる。

 だが、俺は歩みを止めることはない。まっすぐ突き進み剣を振るう。


「うおおおおおッ!!」


 重い!ビームを弾くことがこんなに重いとは。だけど!


「おりゃッ!」


 一旦振るっていた剣を戻し、切り上げるようにして斬ると、ビームはまるで実態があるかのように上へ登り、天井を破壊してなお、空へ突き進んだ。

 ガラン!と天井が一部崩れ落ちながらも俺は前へ進み、ようやく捉えたこの機会を逃さず、袈裟切りのように先生の首の近くで寸止めた。


「これで、俺の勝ちですね」


「……まさか私に勝っちゃうとは。さすが勇者様だね」


「どうも。それよりここは危なそうだから、逃げようぜ、先生」


「……うん。そうだね」


 俺は先生の手を取り、出口の方まで駆け出した。

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