8話 ドラゴン討伐
頼まれてから俺たちは移動して王都の城壁の上にいた。
「どこから来るのか分かってるのか?」
「それはここからまっすぐのところからやってくると、報告ではそうなっています」
「それはどうやって分かるんだ?ここからじゃ何も見えないぞ」
「それは千里眼という遠くのものを見渡すことが出来るスキルを持つやつがいるのでそいつがドラゴンを見つけ、進行方向を逐次報告しているというわけです」
なるほど。情報がリアルタイムで送られてくるということなのね。
というか千里眼っていうスキルがあるのか。俺も使ってみたい。
〈スキル検索開始……合致スキル1件。表示します〉
俺の願い通りそこには千里眼のスキルが出た。使用方法は普段と変わらず、唱えるだけだ。
「〈千里眼〉」
すると、いきなりここからじゃ遠くてちらっとしか見えてなかった森が急にズームアップしたように近く見えた。
なるほど、これが千里眼か。自分の近くが見えなくなるのが欠点だが、拡大縮小を自由に変えられることを踏まえて、これは便利だと俺は思う。一国に一人は欲しいぐらいの便利さだな。実体のない敵や超高速で近づいているものには対処できないけど、ある程度は出来るだろう。
俺はピントを合わせる感じでここからまっすぐを千里眼で覗くと、ドラゴンの群れがこちらにやって来るのが見れた。
「ああ、こりゃ多いわ」
千里眼で見れたのは、三列縦隊ぐらいに並んでこちらに向かって来ていた。
確かにレオンみたいに1対1に特化した人間ではこんな集団で襲ってこられたら対処が無理だろうな。
「何か打つ手はあるのですか?」
「一応あるよ」
俺は王城からここに来る時までにどうしたらドラゴンの大群を撃退出来るのか検索ツールを使ってスキルを探していた。
そこで見つけたスキルが〈重量魔法〉の〈メテオ〉という魔法だった。
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〈重量魔法〉
対象の重力を操ることができる。操るものの大きさ、強さによって消費魔力量は異なる。
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〈メテオ〉
この世界の外を回っている隕石の重力を操作して対象の地点に落下させる。
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これでドラゴンを倒そうって思っている。まあ、できなかったら、レオンも加勢してもらってやるしかないだろうな。
「成功するか分からないけど、やってみる価値はあると思う」
「分かりました。その勇者様のお言葉信じさせてもらいます」
うわー、プレッシャー大きいなー。
「では、私は住民の避難をしてまいりますので、ゆっくり体を本番まで休めておいてください」
「分かった。そっちは頼んだ」
「了解です!」
そう言ってレオン仕事に戻り、俺は決戦のため英気を養うのだった。
そして約40分後、住民の避難を終えたレオンが戻ってきた。
「おお、お帰り。ついでに言うとドラゴンはもう肉眼でもはっきり視認できるほど近づいているぞ」
「そうですか……。決戦は近い、ということですね」
「そうだな」
今、ドラゴン達は俺たちから約2キロぐらい離れている。
1キロぐらいのところでやろうかな。そこぐらいでミスったとしてもまだなんとか対処のしようがあるしな。
え?何で約でも大体の位置が分かるって?勘だよ勘。実際にここから2キロ離れてるとは限らないし。
……そろそろかな。ドラゴン達がものすごい勢いでこちらに飛んできている。目標を見つけたから興奮度がMAXになっているのか?
「じゃあいきます!」
俺はそう言ってあの魔法を唱える。
「〈メテオ〉!」
俺はちょっと中二病っぽい感じで手を振り払いメテオを唱えた。
すると俺の体の魔力のほとんどを持っていかれた。……これは期待できるな。こんなに吸われたのはヒヒイロカネの時以来だ。
唱えてしばらくすると空がゴゴゴゴッ!!と、鳴り大小様々な隕石がドラゴンに落ちていった。
辺りに轟音が鳴り響く。と同時に全てのドラゴンは翼を折られ、鱗は貫通し、1匹残らず命を奪われた。
やべえ、大火力は期待できると思ってたけどまさかこれ程とは……。全員1発KOだぞ。ドラゴンってあれだろ?生き物の中で強いランキングトップぐらいに入るほど強いんだろ?それを瞬殺って……。もう一度言おう。やべえ。
これ大丈夫かな?主に自然破壊的な意味で。だって、一面草木で覆われていた草原が隕石の影響で焼け野原になってるし、いたるところにクレーターが出来ているんだぞ!確かに自衛はしなければいけないけど流石にこれはやりすぎた……かも。
「終わりましたね」
「……は、はい。そうですね」
レオンとそのほかの兵士の人は驚愕の顔をしたまま動けていなかった。流石に一度で殲滅するなんて誰もが予想していなかったことだろう。俺自身もしてなかったもん!
「このドラゴンの死骸はどうするんだ?」
「それは解体部隊の人がなんとかしてくれます」
「そうか。それは良かった」
死体放置とか環境最悪すぎるからな。
「あ、終わった?」
今回は特に何もしなかった(俺が一撃で終わらせたので何も出来なかった)楓が話しかけてきた。
「楓、何もしなかったな」
「一応策は考えていたんだけど、透のおかげで全部パーになったよ」
「それは悪かったな」
「いいよ、別に」
「じゃあ、終わったことだしもう帰ろうぜ。後片付けは解体部隊っていうところの人がやってくれるらしいから」
「そうだね。じゃあレオンさん。あとはお願いできますか?」
「分かりました。勇者様には後ほど女王陛下に謁見してもらいますが、その時間まではゆっくりしていただいて構いません」
「ありがとうございます」
「分かった。よし、帰って寝るか」
「また寝るの?まだ昼前だよ?」
「俺は魔法使って疲れたの!」
「はいはい。お疲れ様」
「お、おう。ありがとう」
素直に労われると少し違和感を感じるな。
まあいいや。早く帰ろう。もうクタクタだ。
こうして俺は50体ものドラゴンを倒した「ドラゴンスレイヤー」になるのだった。
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