7話 自由行動
王城に帰ってきた俺たちは特に何かがあったわけではなく、普通にご飯を楓と一緒に食べて(女王陛下も誘ったけど忙しいからと断られた)、部屋に付いている風呂に入って、昨日と同じようにベッドにダイブして寝るのだった。
昨日は特に何もすることながなかったから、日本時間で言うところの約9時ぐらいには寝たから今日は早く起きることが出来た。
「なんか、ちょっと散歩でもしたいなー」
昨日帰ってくるときに、綺麗な庭を見つけたのでそこあたりをぶらぶら歩きたいなって思った。
思い立ったら吉日。俺はすぐに寝巻きから着替えて、外に出ることにした。
だが!
「迷ったな、これ……」
そう。俺はこの城の大きさを舐めていた。基本案内されてしかここを歩いたことがなかったから、自分が今どこにいるのかさえ分からない。
ずっと同じような景色が続いていく。すると、ようやく人が発見できた。執事服を着ている見た目年齢二十歳ぐらいの執事さんだ。
「あのー、外に行きたいんですけど、どうすればいいですか?」
「何奴ッ!」
こちらが声を掛けると執事はいきなりナイフを3本こちらに投げつけた。
「危なっ!」
とっさに対応してなんとか全て避ける。
「貴様、ここがどこだか分かっているのか!」
「え、王城だよね」
「分かっているなら釈明の余地なし!死ね!」
そう言って執事はナイフで斬りかかってくる。俺がそれを避けるとこっちに向かってナイフを投げつけてくる。
「こら!物は大事にしなさいって人から教わらなかったのか!」
「悪人を退治するのに容赦はない!それに終わったらちゃんと洗う!」
あ、洗うのね。なら安心だわ。
「じゃあそろそろ俺も本気出そうかな」
「ふっ、やれるものならやってみるんだな。お前の本気ここで叩き潰す!」
俺は全速力で執事の前まで詰め、アッパーを放とうとする。だがそれを読んでいたのか、執事は俺の攻撃を躱し、腕を掴んで背負い投げの要領で投げ飛ばした。
「だが!」
ここで負ける訳にはいかない!俺は執事の首を足で挟み、さながらプロレス技みたいに一回転して執事の体を地面に叩きつけた。
勝敗は決した!winner 金山 透!
「……なかなかやるな」
倒れた執事がこちらに話しかける。
「そっちこそ。お前、名前は?」
「シュデルト=アーケストだ。貴様は?」
「透。金山透だ。お前とはいいライバルになれそうだぜ」
「ふっ、そうだな」
などと、俺たちがライバル宣言をしていると、
ゴツンッ!!
とシュデルトの頭に拳骨が降ってきた。
「痛っ!何するんですか師匠!」
シュデルトが師匠と呼んだのはまさかのレオンだった。
「シュデルト、勇者様になんて態度だ!」
「えっ!?こいつが勇者様なんですか!?」
「勇者に見えなくて悪かったな」
「いえ!そういうことではなく!」
見事なまでの手のひら返しだな。
「すみません勇者様。こいつは私の弟子のシュデルトで、この度は勇者様に数々のご無礼誠に申し訳ございませんでした」
「いや、レオンがやった訳じゃないから、別にレオンが謝らなくていいんだけど」
「これは私の監督不行き届きです。しっかり言い聞かせますので。ほら、お前も謝る!」
「この度は誠に申し訳ございませんでした!」
「いいよ、別に。俺たちはライバルなんだろ。また今度ゆっくり話でもしようぜ」
「ではそのときを楽しみにしておきます!」
「よかったな。勇者様に許してもらえて。本当なら極刑ものだぞ、全く……。それより勇者様はなんでこんなところにいるのですか?」
「ああ、それが恥ずかしながら道に迷ってしまってな。外に出たいんだが……」
「分かりました。それなら私が案内しましょう。シュデルトは執事の仕事に戻りなさい」
「分かりました師匠!」
「では参りましょうか」
トラブルはあったものの、ようやく外に出れそうだ。
俺はレオンについていって王宮の庭に向かうのだった。
そこは本当に広い庭だった。とても秀でていて、いたるところに職人の工夫が施されているのがよく分かる。
俺は広い庭がある家に住みたいなー、って思ってたけどこんなに広いところは逆に落ち着かないかも。
「ん?あれは……」
楓が噴水の前を歩いていた。それはさながら女神が散歩をしているような神秘的な光景だった。
「あ、おはよう、透!この時間に起きてるなんて珍しいね。……ん?なに顔赤くしてるの?」
いかんいかん!あまりにも美しかったから見惚れてしまった。
どれだけ楓が可愛いかったり、綺麗だったとしても、俺は楓にはもう惚れないんだ!あのトラウマはもう2度と思い出したくない。
「いや、別に。それよりなんで楓はここにいるんだ?」
「ただの散歩だよ。昨日もしたんだけど透は起きてなかったでしょ」
「一昨日は何かと疲れたからな。昨日に関してはやることがなかったから、今日は早く起きれたんだと思う」
「そうなんだ。じゃあ折角だから一緒に散歩しない?」
「俺も散歩のつもりで来たからいいよ」
「じゃあ行こう!昨日通ってるから道は知ってるんだ」
「じゃあ案内は任せる」
「任せて!」
俺は楓と一緒に歩き始める?
「さっきって何かあったの?」
「なんで?」
「いや、ちょっと汗かいてるなって思って」
「……え?俺ってそんなに汗臭い?」
「いや!そんなことはないんだけど、首筋に汗が見えたから……」
「ああ、なるほど。さっき執事兼俺のライバルに絡まれて、ちょっとファイトしていたんだ」
「どういう状況!?」
「普通に不審者扱いされただけだよ」
「で、結局どうなったの?」
「ふっ、俺が背負い投げされたのをに綺麗に道連れにしたったわ」
「うわー、そのドヤ顔腹立つー」
楽しい。やっぱり友達と喋るって楽しいわ。
こんな時が長く続けばいいのに……。
……あ、やべえ。これこそフラグというやつだ。
「勇者様!ここにいらっしゃったのですか!」
はい!フラグ回収早い!
俺たちを呼びに来たのかレオンが大慌てでこちらに駆けつけてきた。
「緊急事態です!女王陛下がお呼びなので付いてきてもらいます!」
有無を言わせぬ口調で伝言を伝えて来た。
仕方がないので俺たちは散歩を中断して、レオンについていくのだった。
「勇者様!どうか私たちを助けてください!」
「女王陛下、落ち着いてください。何があったんですか?」
「ドラゴンの群れがこちらにやって来ています。数は約50体です」
わおっ、異世界に来てから3日目でドラゴンとかなんの無理ゲー?
「レオンでもどうにもならないのか?」
「私のは1対1を得意とするので、50体など相手をしているうちに半数は中に入れてしまいます」
じゃあ無理じゃん、まあ、勇者なんだからここでちょっとは活躍しろってことか。
「分かりました。やれるだけはやりましょう」
「ありがとうございます!」
「で、ドラゴンは後何時間ぐらいで王都に着くんですか?」
「約1時間ぐらいです」
じゃあもう時間ねぇじゃん!急いで行かないと!
「もう、案内してくれ!ドラゴンが見えるところまで!」
「私が案内しましょう」
「国の運命を頼みます。勇者様、レオン」
「「了解!」」
「承りました!」
そしてドラゴンとの戦いのために準備を始めるのだった。
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