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それから、また加奈との連絡が取れなくなった。
文の予感は、的中してしまった。
いつまでたっても、加奈から手紙は届かなかったし、文の書いた手紙にも、加奈は返事をしてはくれなかった。
加奈から聞いた実家の電話番号に電話をしても、だれも文の電話には出てくれなかった。
……加奈。
……なにがあったの?
文はすごく不安になった。
だから文はもう一度、今度は手紙のやり取りなしに、加奈の住んでいる北関東の街に向かった。
季節は夏から秋に変わっていた。
そこには夏休みに加奈と一緒に歩いた街並みや風景が確かに存在していた。
でも、加奈の姿だけがどこにもなかった。
加奈の実家には鍵が掛かっていて、家に誰もいなくて、結局、文は加奈と会うことはできなかった。
文は秋の寒空の下で、夏の雨降りの日に二人で一緒に歩いた道のりを今度は一人でもう一度歩いて、小さな公園と夏には廃墟のように見えた共立高校を見て(今は普通のどこにでもあるような高校に見えた。加奈の姿を探したけど、加奈はどこにもいなかった)あの小さな動物の隠れ家のようなレストラン『森の隠れ家』で一人でパスタを食べ、(お店の人は一度来ただけの文のことを覚えていてくれた)そして加奈と歩いた加奈の通学路を一人で歩いて、小さな駅に戻り、一時間に数本しかこない電車に乗って東京に帰った。
その帰りの電車の中で、文は一人、電車の席の上で号泣した。
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