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ある日、突然、加奈から送られてきた手紙を見て、文はとても驚いた。
高校生になった文は、加奈のことを忘れていた。いや、必死に忘れようとしていた。
そして新しい友人たちとの生活の中で、文は加奈のことを忘れることに成功していた。
加奈はすでに文の中では、過去の人となっていた。
文は自分宛に送られてきた手紙をじっと見つめる。
その手紙には確かに奥山加奈の名前があった。
文は机の上で加奈の手紙を読み始める。
その手紙にはこういった文字が書かれていた。
拝啓 牧野文様
文ちゃん。お久しぶりです。私、加奈です。奥山加奈。小学校のときに転校した加奈です。文ちゃんは、まだ私のことを覚えていてくれていますか?
それとも、もう私のことなんて忘れてしまったのでしょうか? もしそうだとしたら、この手紙も、文ちゃんのところにまでは届かないのでしょうか? そうだとしたら、とても悲しいです。
文ちゃん。覚えていますか? 手紙を交換する約束。
いろんな事情があって、途中で出すことができなくなってしまった手紙。そんな手紙が、私の机の引き出しの中にはたくさんあります。
この手紙をポストに投函することにも、かなりの勇気が必要になりました。
だいたい三年ぶりの手紙。
もし、この手紙を文ちゃんが読んでくれたのだとしたら、……まだ文ちゃんが私のことを友達だと思っていてくれるのなら、一度、私の地元に遊びにきてください。
お返事、心よりお待ちしています。
あなたの親友 奥山加奈より
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