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加奈が引越しをした先は、北関東にあるとある街だった。
文の住んでいる東京からは、電車でだいたい二時間くらいでいける距離にある街だった。そこから、加奈の家まで歩いて三十分くらいだろうか?
地図で見た限りだと、そんな感じだった。
十分、文一人で移動できる距離だった。
でも、両親にそのことを話しても、外出の許可が降りなかった。中学一年生の女の子が一人で、東京から北関東にある遠くの街まで出かけることを文の両親は許してくれなかった。
加奈の実家に連絡をしていないというのも、理由の一つにあった。
向こうについてから、なにかの理由で(たとえば、加奈の家族が旅行に出かけているとか)不在であったり、加奈ちゃんと出会えなかったらどうするんだ、と文は両親から言われた。
それで、文は加奈の住んでいる街まで、いくことができなくなった。
中学一年生の文はそれで、加奈に会うことを諦めてしまった。
加奈との手紙のやり取りがなくなってしまったことはとても悲しかったけど、その直前まで交換していた手紙には、楽しそうに向こうの学校で生活をしている加奈のことが、たくさん書かれていた。
加奈はもう私のことを忘れてしまったのだと思った。
向こうでできた新しい友達と仲良くやっているのだと思った。
私との手紙のやり取りも、飽きてしまったから、手紙がこなくなったのだと思った。
最初は怪我とか、病気とか、そういうことを心配していたのだけど、そういうことではなくて、ただ単に、自分が加奈から、友達の縁を切られてしまったのだと、次第に文は思うようになった。
そして文は加奈がそうしたように、自分も加奈のことを忘れることにした。
そして、三年の月日が経過した。
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