招待
さて、休むためには色々とやらなくてはいけないことがある。速攻で終わらせてゆっくり本でも読もう。
まずはダンジョンを畑に作ることを村長に伝えておくか。作るのを任されたが、報連相は必要だ。
「たのもー」
「フェルさん、どうされました?」
村長が椅子に腰かけてお茶を飲んでいた。いつ見ても熱そうなんだが、問題ないのだろうか。もしかしてアンリと同じように熱耐性スキル持ちなのか?
「ダンジョンを畑に作ることになったので報告しに来た」
「それはわざわざありがとうございます。畑というと、今、魔物の皆さんが住んでいる小屋の辺りですかな?」
「そうなるな。畑仕事の邪魔にならないような場所に作るから問題はないと思う」
畑仕事の邪魔をしたら制裁するようにしよう。そうだ、案山子ゴーレムに監視させるか。
「わかりました。よろしくお願いします。ああ、そうだ。結婚式の準備を魔物の皆さんに手伝ってもらうことは可能でしょうか?」
「そうだな。村の警戒をさせていたから準備が遅れているだろうし、アイツ等も村の一員だ。手伝うのを嫌とは言わせん。これからダンジョンを作るからついでに言っておこう」
「おねがいします。一時間後ぐらいに広場に来てもらうように、お伝えください」
「わかった」
よし、畑に……そうだ、リエルと約束していたことがあった。
「村長、結婚式にエルフ達を呼んでもいいか?」
「エルフの皆さんですか?」
「ああ、ちょっとエルフを紹介したい奴がいるんでな」
リエルに紹介することは言わない。色々とバレているだろうけど余計な情報を与える必要はないだろう。
「それは問題ありませんが、どれくらいの人数でしょうか? あまり多くなると広場の広さが足りなくなりますし、日帰りという訳にもいかないので、宿の問題もあるかもしれませんからな」
エルフを三人は紹介しろ、とリエルに言われているからな。少なくとも三人以上だがそれほど多くはならないだろう。
「多分、五、六人ぐらいだと思う。急な話だし、エルフ達もそんなに暇ではないだろう」
ミトルは暇そうだけど。
「それでしたら問題ありませんぞ。ぜひ、呼んでください」
「わかった。ここにエルフと念話出来る魔道具があったよな? 貸してもらえるか?」
「それでしたらこちらです」
別の部屋に通された。その部屋には台座に固定された水晶玉があった。これが念話用の魔道具かな。
「一度、念話を試しておりますので問題ないと思いますぞ」
頷いてから、水晶に手を乗せて魔力を通す。数秒待つと、チャンネルが開いたような感覚があった。
『へーい、こちらエルフの村でーす。まず、お名前をおねがいしまーす』
なんだか脱力するな。
「フェルだ。ミトルか?」
『よー! フェルじゃねーか! どうしたよ? 俺の声が聞きたかったか?』
うざい。
「相変わらずだな。面倒だから用件だけ言うぞ。明日、村で結婚式がある。男エルフ三人以上で来てくれ。料理は食べ放題だ」
『結婚式? 村の誰かが結婚するのか? ヴァイアちゃんじゃないよな?』
そういえば、ミトルはヴァイアを狙っていたか? そうなると三角関係か。小説のネタにしよう。
「ヴァイアではない。村の奴だがお前の知らん奴らだ」
『そーなのか。ところで男三人以上ってなんだ?』
「ちょっと紹介したい奴がいる。出来れば美形でガツガツしてるタイプを連れて来てくれ」
確かリエルの好みはそんな奴だった気がする。なんでこんな情報を持っているのだろうか。私の記憶から消したい。
『マジで? 女の子? 美人?』
「マジで、女の子で、美人だ。あとハンター」
嘘じゃない。必要な情報を言わないだけで嘘じゃない。
『必ず行く。男三人以上だな? 美形でガツガツしているタイプを連れていけばいーんだな?』
「あまり多くは連れて来るなよ。広場が狭くなるし、私の食べる料理も減る」
『わかった。これが人族の言う合コンという奴だろ? 俺の軽快なトークで盛り上げてやる。四、五人は惚れさせちゃうぜ!』
ゴウコンてなんだ? ケッコンだぞ? それにどうして多人数を紹介すると思っているのだろうか? まあいいや。
「出来ればリンゴも持ってきてくれ。別の町で木彫りの装飾品を買ってきた。交換してくれると助かる」
『おお、そーか。この間、村で交換した物が女性エルフの間で結構な評判だったらしくてなー。せっつかれてたんだよ。今からだと用意が難しいが出来るだけ持ってくぜ』
しまった。そういう事ならもっと早く連絡しておくべきだったな。まあ、致し方あるまい。今回は突発的だったからな。
「じゃあ、よろしく頼む」
『わかった。明日の朝には着くよーにすっから。じゃーな』
念話のチャンネルが切れたようだ。
「人数は分からないが来てくれるそうだ。それと量は少なそうだが、また食べ物を交換してくれる。今回は私の交換がメインだと思うがな」
「そうでしたか。村でもエルフの食べ物は人気だったようで、早めに取引したいと相談を受けていたのですよ。少量でもありがたいですな」
「なら、その件を村の奴らに伝えてくれるか」
「ええ、伝えておきましょう」
よし、ここでやることは終わった。次はダンジョン生成だ。畑に向かおう。
畑に着いた。なんというか、ほとんどの魔物が揃っている。結構壮観だ。
「フェル姉ちゃん、遅い」
いきなりアンリからの叱咤。時間を決めてないんだから大目に見てもらいたい。
「そう言うな。私は結構忙しい。それに昨日、一昨日と色々と騒がしかったから疲れているんだ」
カブトムシを除く四天王がそっぽを向いた。自覚はあるようだ。
「それとダンジョンを作る前にお前らに言っておくことがある。明日、人族の結婚式がある。この村に住むんだから準備を手伝え。一時間後に広場に行けよ。問題を起こしていた奴のせいで準備が遅れているんだからな」
なぜか不思議そうな顔をされた。どうした?
ジョゼフィーヌが「結婚式とは何ですか?」と質問してきた。そっからか。だが、魔族の私も結婚という仕組みを良く知らない。聞きかじりの知識で説明しよう。
「どうやら人族はつがいになるとき、精霊だかなにかに報告するらしい。それを結婚と言ってお祭りみたいなことをするそうだ」
なんだか「へー」という感じの雰囲気が伝わってくる。まあ、魔物にはない文化だよな。魔族にもない。
「結婚式の最後に花嫁が花束を投げる。それを取ると次の花嫁になると言われていて、未婚女性たちの血で血を洗うサバイバルになる。巻き込まれると危険」
なにそれ怖い。そのサバイバルって強制参加じゃないよな?
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