公平な助力

 魔法使いと言うと、大抵の人間を指してしまう。私たちはみな魔法使いだ。

 けれど、その中でも呪術は特殊技能と言っても良いだろう。

 呪術。緩やかに魂を腐らせる魔術。広義の魔術ではあるが、一部の魔術研究者は、「あの二つは分けて考えるべきだ」と主張している。

 私にとってはどちらでも良い。理屈をどうつけようと、魔術と呪術の機序は同じ。

 少なくとも、北の水晶窟で採れる水晶たちはその区別をつけない。恋を叶えるために相手を惑わす魔法にも、相手の心を縛る呪いにも、等しく力を貸してくれる。これを平等と言わず何とする?


 あそこには真面目な奴が住み着いているんだ、とは私の友人の言葉だが、なるほど、公平の権化がいるとなれば納得だ。

 奴に呪いの手紙を送ったとしても、きちんと果たしてくれるだろう。どこで違えたのだろうか。私は、彼にいつしかずっと嫉妬していたのだ。どうか、私のために不幸になってください。北の水晶の、薄い切片に刻んだ術式を送る。開封した途端に呪われる。


 数日後、私は同じ北の水晶でできたペーパーナイフで開封された手紙の呪いが不発に終わったことを知った。


 まったくもって、公平というのは悪意よりも厄介な時があるものだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る